
【離婚と財産分与】財産分与で分けられない財産ってあるの?
- 更新日:2020/03/24
- 公開日:2020/03/24
前回は、離婚の際に話し合われることが多い「財産分与」について、その対象となる財産(共有財産)について具体的にお話しました。ただ、婚姻中に夫婦が持っていた財産は、何でもかんでも財産分与で分けることになるわけではありません。何が財産分与の対象となる財産なのかだけではなく、何が財産分与の対象とならない財産なのかについても、きちんと把握しておかないと損をする結果となりかねません。
そこで、今回は、「財産分与」の対象とならない財産について詳しくお話します。
財産分与の対象とならない財産って?

財産分与とは、離婚の際に、婚姻生活中に夫婦が協力して築き上げた財産を、それぞれの貢献した割合に応じて、夫婦それぞれの個人財産に分けることをいいます。そのため、財産分与の対象となるのは、婚姻中に夫婦が協力して築き上げた財産(=共有財産)です。
この共有財産か否かは、誰の名義かで判断されるものではなく、夫婦の一方の名義になっている預貯金や不動産などであっても、婚姻中に夫婦が協力して維持・形成してきた財産であるといえれば、夫婦の共有財産と判断されます。民法でも、「夫婦のいずれかに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。」と定められています(民法762条2項)。
反対に、婚姻前に持っていた財産や、婚姻中であっても夫婦の協力と無関係に取得した財産は、財産分与の対象となりません。これを「特有財産」といいます。民法でも、「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。」と定められています(民法762条1項)。
財産分与の対象とならない財産は、具体的には次のようなものが挙げられます。
① 独身時代に貯めていた現金・預貯金など
独身時代、つまり結婚する前に貯めていた現金や預貯金などは、婚姻前に持っていた財産ですから、特有財産として財産分与の対象となりません。
ただ、婚姻中も同じ銀行口座などをそのまま使っていると、婚姻中に築き上げた財産(共有財産)と婚姻前から貯めていた財産(特有財産)が混在してしまい、どの部分が特有財産なのかはっきりしなくなるケースも多いですので、注意が必要です。
② 婚姻する際に一方が実家から持ってきた財産(家具・家電・自動車など)
これも婚姻前に自分が持っていた財産ですから、特有財産として財産分与の対象となりません。
③ 親から相続した財産(現預金・不動産など)
婚姻中に親が亡くなって相続が発生すると、相続を理由に親の財産を取得することになりますが、これは、婚姻中であっても夫婦の協力と無関係に取得した財産ですから、特有財産として財産分与の対象となりません。
④ 家族・親族などから贈与を受けた財産
家族や親族からお金をもらったり不動産の贈与を受けたりすることがありますし、配偶者から誕生日のプレゼントなどでもらったりすることもありますが、これも、夫婦が協力して築き上げた財産とはいえませんので、特有財産として財産分与の対象となりません。
⑤ 別居後にそれぞれが取得した財産
婚姻中であっても、別居後にそれぞれが取得した財産は、夫婦の協力と無関係に取得したものですから、特有財産として財産分与の対象となりません。
⑥ 日常的に夫婦各自が使う物
夫婦それぞれの衣類、化粧品、バッグ、アクセサリーなども、夫婦各自が所有しているものと考えられますので、特有財産として財産分与の対象となりません。
⑦ 浪費・ギャンブルなどのために作った借金
住宅ローンや自動車ローン、子どもの教育ローン、生活費のために借り入れたカードローンなどの借金は、婚姻中に夫婦の共同生活のために負ったものですので、財産分与の対象となりますが、浪費やギャンブルなどのために夫婦の一方が個人的に作った借金は、夫婦の共同生活のために負ったものではありませんから、婚姻中であっても財産分与の対象となりません。

今回は、財産分与の対象とならない財産について詳しくお話しました。
離婚で財産分与すると言っても、婚姻前から持っていた財産や親からもらった財産も全て財産分与の対象となるわけではなく、単純に夫婦の財産を2分の1にするものではありませんので、注意が必要です。
「財産分与でこれしかもらえないの?」とか「財産分与でこんなに持っていかれるの?」と不満を感じることもあるかと思いますが、財産分与という制度についてしっかり理解することが重要です。
財産分与で揉めているご夫婦の一方からよく相談を受けますが、財産分与でもらえるものともらえないものをしっかり把握したうえで、お互いがよく話し合って納得のいく解決を目指したいですね。納得のいく離婚と財産分与を求めたいようでしたら、専門家である弁護士に相談することをオススメします!
■弁護士に聞いてみた|バックナンバー
・「一線」を越えなければ大丈夫?不倫・浮気の境界線を弁護士に聞いてみた・《ダブル不倫状態に陥ったら》誰から誰に慰謝料を請求されるの?
・《ダブル不倫状態に陥ったら》慰謝料請求のポイント
・浮気をした側は離婚請求できないってホント?
・【離婚と財産分与】財産分与ってどういう仕組みなの?
・【離婚と財産分与】財産分与ってどんな財産を分けるの?
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田中雅大
(弁護士/第二東京弁護士会所属)
1975年生まれ。埼玉県出身。証券会社に勤務した後、2010年に弁護士登録。中小企業の法務や不動産案件を中心に扱いつつ離婚や不倫などに関する数々の男女トラブルを解決。趣味はサーフィン、草野球。
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