
財産分与ってどういう仕組みなの?【弁護士に聞いてみた】
- 更新日:2019/11/09
- 公開日:2019/11/09
離婚をする際、貯めてきた現金や預貯金、夫婦で購入した家や自動車、家具・家電など、払い込んできた保険などについては、いったいどうすればよいのでしょうか?
これが「財産分与」の問題です。
皆さんも「財産分与」という言葉を聞いたことがあると思いますが、具体的にどのような制度なのかよく分からない方も多いと思います。また、皆さんの中には、「夫と離婚したら財産分与でどれくらいもらえるんだろう…?」と考えたことのある方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、離婚の際の話し合われることが多い「財産分与」の種類、対象となる財産、割合など、財産分与の仕組みについてお話します。
そもそも財産分与って何?

そもそも財産分与とは、離婚の際に、婚姻生活中に夫婦が協力して築き上げた財産を、それぞれの貢献した割合に応じて、夫婦それぞれの個人財産に分けることをいいます。民法でも、「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」(民法768条1項)と定められています。
「早く離婚したい!」と離婚を急いでしまうと、夫婦の財産をどう分けるのかについて十分に取り決めずに、もらえるはずの財産をもらわずに離婚してしまうケースも多いですので、離婚の際にしっかり取り決めることが重要です。
なお、離婚の時から2年を経過してしまうと、財産分与を請求することができなくなってしまいますので(民法768条2項)、注意が必要です。
財産分与にはどんな種類があるの?

財産分与には、「清算的財産分与」、「扶養的財産分与」、「慰謝料的財産分与」と大きく分けて3つの種類があります。
①清算的財産分与
清算的財産分与とは、夫婦が婚姻中に築き上げた財産の清算を目的として行われる財産分与のことをいいます。つまり、夫婦が婚姻中に築き上げた財産については、夫名義であろうと妻名義であろうと夫婦の共有財産であると考えて、離婚の際にそれぞれの貢献度に応じて公平に分配しようというものです。一般に財産分与というと、この清算的財産分与を指すことが多いです。
この清算的財産分与は、離婚原因があるか否かにかかわらず行われるものですので、浮気やDVなどの離婚原因を作ってしまった配偶者(有責配偶者)からであっても請求することができます。
②扶養的財産分与
扶養的財産分与とは、離婚した際に夫婦の一方が生活に困ってしまうなど経済的に困窮するという事情がある場合に、離婚後の生活の安定を手助けするという扶養的な目的で行われる財産分与のことをいいます。
この扶養的財産分与は、離婚の際に夫婦の一方が病気で働けない状態だったり、経済力が乏しい専業主婦であったり、高齢で収入が乏しい状態だったりする場合に認められることがあります。
夫婦のうち経済的に立場の強い配偶者が、他方の経済的に立場の弱い配偶者に対して、離婚後も一定額を一定期間支払うという方法で行われることが一般的です。
③慰謝料的財産分与
離婚の際に、相手の浮気などが原因で慰謝料が問題となるケースも多くありますが、傷付いた相手を慰謝するためのお金である慰謝料は、夫婦で気づき上げた財産を分ける財産分与とは性質が違うものですから、本来、慰謝料と財産分与は別々に請求するのが通常です。
もっとも、慰謝料も財産分与もお金の問題である点に変わりはありませんので、慰謝料と財産分与を明確に区別せずに財産分与として処理することが行われることがあります。この場合の財産分与を、慰謝料を含むという意味を込めて慰謝料的財産分与といいます。
財産分与の対象となる財産は?

財産分与の対象となる財産が決まらなければ、そもそも財産分与を行うことはできません。また、財産分与の対象となる財産を見落としてしまうと、損した結果となってしまうこともありますので、何が財産分与の対象となる財産なのかをきちんと把握しておくことは非常に重要です。
詳しくは次回お話しますが、財産分与の対象となる共有財産と、財産分与の対象とならない特有財産について、ざっくりご説明します。
①財産分与の対象となる共有財産
財産分与の対象となるのは、婚姻中に夫婦が協力して築き上げた財産(=共有財産)です。この共有財産か否かは、誰の名義かで判断されるものではなく、婚姻中に夫婦が協力して維持・形成してきた財産であれば、夫婦の共有財産と判断されます。
例えば、夫婦の共同名義で購入した不動産、夫婦の共同生活に必要な家具・家電などは財産分与の対象となりますし、夫婦の一方の名義の預貯金や自動車であっても、婚姻中に夫婦が協力して築き上げた財産といえるのであれば、共有財産として財産分与の対象となるのです。
②財産分与の対象とならない特有財産
一方で、「特有財産」は、財産分与の対象とはなりません。この「特有財産」とは、「夫婦の一方が婚姻前から有していた財産」と「婚姻中に自己の名で得た財産」を指します(民法762条1項)。
例えば、「夫婦の一方が婚姻前から有していた財産」としては、独身時代に貯めていた定期預金などが挙げられますし、「婚姻中に自己の名で得た財産」としては、婚姻中に親が死亡して相続した不動産や預貯金などの財産が挙げられます。
財産分与として請求できる割合はどれくらい?

財産分与の対象となる財産が決まったら、次に問題となるのが財産分与の割合です。
この財産分与の割合については、裁判所では「2分の1ルール」というものがあり、財産分与の対象となる夫婦の共有財産を2等分するというのが原則です。
これは、夫婦が共働きであっても、他方が専業主婦であっても、基本的には変わりません。専業主婦であっても、「妻が専業主婦として頑張って家庭を支えているからこそ、夫は仕事に専念して稼げている」という発想から、財産分与の割合でも、原則として2分の1とされているのです。
もっとも、原則があるからには当然例外もあり、個別具体的な事情によっては、この2分の1の割合が修正されることもあります。
例えば、夫婦の一方の特殊な能力・才能や努力によって資産を築き上げることができたような場合には、その特殊な能力等を考慮して、財産分与の割合が修正される場合があるのです。
今回は、財産分与の仕組みついて、その概要をお話しました。
「金の切れ目が縁の切れ目」と言われるように、離婚の際もお金の問題として「財産分与」が問題となり、お互いがバチバチに譲らずに揉めてしまうケースは非常に多いです。スムーズに離婚して新しい生活をリスタートするためには、お互いの財産関係をはっきりさせたうえで、十分に話し合うことが重要なのかもしれませんね。
自分一人では、相手の財産をちゃんと把握できないこともありますので、離婚の際に財産分与も求めたいようでしたら、財産もしっかり調査してくれる信頼できる弁護士を探すのが一番でしょう。まずは専門家である弁護士に相談することをオススメします!
■弁護士に聞いてみた|バックナンバー
・「一線」を越えなければ大丈夫?不倫・浮気の境界線を弁護士に聞いてみた・《ダブル不倫状態に陥ったら》誰から誰に慰謝料を請求されるの?
・《ダブル不倫状態に陥ったら》慰謝料請求のポイント
・【離婚調停】手続きと気を付けるべきポイントは?
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田中雅大
(弁護士/第二東京弁護士会所属)
1975年生まれ。埼玉県出身。証券会社に勤務した後、2010年に弁護士登録。中小企業の法務や不動産案件を中心に扱いつつ離婚や不倫などに関する数々の男女トラブルを解決。趣味はサーフィン、草野球。
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