
「一線」を越えなければ大丈夫?不倫・浮気の境界線を弁護士に聞いてみた
- 更新日:2019/04/24
- 公開日:2018/01/16
最近では、有名な芸能人や政治家の不倫・浮気がメディアを賑わせていますよね。某政治家が「一線を越えていない」と発言したことも記憶に新しいと思います。
既婚者の中でも、肉体関係を持つ、キスをする、手をつなぐ、二人だけで食事に行くなど、人によって「一線を越えたかどうか」、つまり、不倫・浮気の境界線はマチマチですよね?
では、「一線を越えていなければ」、法律上責任を問われないのでしょうか?
今回は、弁護士の目線から見た、既婚者の不倫・浮気の境界線についてお話します。
「不倫・浮気」と「不貞行為」

「不倫」、「浮気」という言葉は一般的に使われていますが、実は、法律用語にこのような言葉はありません。
法律用語にあるのは「不貞行為」(民法770条1項1号)という言葉だけです。民法には、何が「不貞行為」に当たるのかはっきりとした基準が定められていませんが、判例上、「不貞行為」とは、「配偶者のある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」とされています(最高裁昭和48年11月15日判決)。
「不倫・浮気」が「SEXすること」だと考えれば、「不倫・浮気」=「不貞行為」ということになるかもしれません。
この「不貞行為」は、民法上は離婚の原因とされているほか、配偶者が持っている結婚生活の平穏を維持する権利を侵害するものとして、慰謝料の原因にもなります。
もっとも、「不貞行為」は離婚や慰謝料の原因にはなりますが、犯罪ではないので刑罰を受けることもありません。
法的に「一線を越えた」場合って?
判例の不貞行為の考え方からすれば、自分の意思で配偶者以外の異性とSEXすれば、間違いなく不貞行為となりますが、「一線を越えた」かどうかは、本人にしか分かりませんので、「一線を越えていない!」と言い張られると、なかなか証明することが難しそうです。
しかし、写真やビデオ、SNSなどの証拠が残っていれば、「一線を越えた」不貞行為があったとみなされやすいケースがあるのです。代表的な例は、次のとおりです。
① 異性とラブホテルに行った

実際の裁判で、「ラブホテルに行ったことは事実だけれど、酒に酔って気持ち悪いと言われて介抱していただけだ!」などと主張する人もいます。
しかし、一般的に「ラブホテル=SEXする場所」と考えられているため、このような主張が裁判で認められることはほぼないでしょう。
つまり、異性とラブホテルに行ったことは、法的に「一線を越えた」不貞行為があったとみなされる可能性が極めて高いです。
② 異性と二人でホテル・旅館・家などに泊まった

二人でホテル、旅館、相手の家に泊まっても、不貞行為があったとみなされやすいでしょう。どこに泊まったかという場所が重要なのではなく、そこで性的行為があったかどうかが重要ですので、それまでの二人の関係性や、泊まる回数、時期などの事情も併せて、そこで不貞行為があったとみなされてしまう可能性が高くなるのです。
③ 風俗店に行った

男性の中には、「相手はプロなんだから風俗はOKでしょ!」と考えている人も少なくありません。
しかし、相手がプロかどうかは、実は全く関係がありません。ソープランドやファッションヘルスなどの本番またはそれに近いサービスをしている風俗店に行っていれば、不貞行為とみなされる可能性が極めて高いでしょう。
男性ではなく女性のケースですが、判例も、「妻の身分のある者が、収入を得るための手段として、夫の意思に反して他の異性と情交関係を持つことは許されない」として、妻の不貞行為を理由とする夫からの離婚請求を認めたものがあります(最高裁昭和38年6月4日判決)。
法的に「一線を越えない」場合って?

以上からすると、法的には「一線を越えたかどうか」は「不貞行為をしたかどうか」で判断されるので、次のようなケースでは、「一線を越えた」とみなされずに法的には問題ないことになりそうです。
「一線を越えた」とみなされないケース
・二人だけで食事に行った
・手をつないだ
・キスをした
・誕生日にプレゼントを贈った
・合コンや婚活パーティーに参加した
・出会い系サイトに登録して親密なメッセージのやり取りをした
・SNSなどでエッチなメッセージや写真のやり取りをした
「一線を越えた」とみなされる場合がある!
しかし、これらの行為も単発なら法的に問題ないように見えますが、例えば、ディープキスを何度も繰り返したり、エッチなメッセージを何か月にもわたって繰り返し送り合っていたりしていたことが、写真やSNSなどで証拠として残っているような場合には、裁判上、「この二人の親密さからすれば、これだけにとどまっているはずはない。一線を越えている可能性が高い。」と判断されて、不貞行為が認定されてしまうことも十分考えられるのです。

以上のように、法的に「一線を越えた」不倫・浮気とは、「不貞行為」ということになりますが、たとえ実際は一線を越えていなくても、性的関係があったと疑われて不貞行為とみなされてしまうケースは多々あります。
「不倫は文化」と言う芸能人もいますし、ドラマでも不倫や浮気がテーマになっているものも多いので、皆さんのまわりでも、不倫や浮気というものは、割と身近なものかもしれません。
実際、不倫や浮気をしたことがあるという女性が結構多いというアンケート結果を目にしたこともあります。
ただ、異性との怪しい関係を疑われると、夫婦関係にヒビが入ってしまいますし、離婚や慰謝料の元になりますから、男性だけでなくもちろん女性も、「これくらいなら大丈夫でしょ!」とタカを括らずに、大事なパートナーのことをよく考えて行動したいですね。
■弁護士に聞いてみた|バックナンバー
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田中雅大
(弁護士/第二東京弁護士会所属)
1975年生まれ。埼玉県出身。証券会社に勤務した後、2010年に弁護士登録。中小企業の法務や不動産案件を中心に扱いつつ離婚や不倫などに関する数々の男女トラブルを解決。趣味はサーフィン、草野球。
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