
夫婦間暴力(DV)~これってDV?DVを受けたときの対処法【弁護士に聞いてみた】
- 更新日:2020/05/25
- 公開日:2020/05/02
「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」ということわざがあります。これは、夫婦の間で起こる喧嘩は、問題にならないようなつまらないことが原因で起こり、すぐに仲直りするから、他人が心配してもばからしいので、放っておくほうがいいという意味です。
ただの夫婦喧嘩であればそうかもしれませんが、DVとなれば話は違います。
でも、DV被害を誰にも相談できず、一人で悩んでいる方は多くいらっしゃいます。多くの例では、暴力を受けるのは自分に原因があると思いこまされたり、逃げられないとあきらめたり、仕返しが怖いと考えて外に助けも求められなかったりします。また、男尊女卑の発想から、「殴られる側にも問題があるのではないか」といった考えをいまだに持っている人もいて、DV被害はそう簡単になくなりません。
今回は、夫婦間のDVに当たる場合とその対処法について解説します。
そもそも「DV」って何?

皆さんも「DV」という言葉を聞いたことがありますよね?この言葉が世に知られるようになって随分経ちますが、そもそも「DV」って何を指すのでしょうか?
「DV」は、「Domestic Violence(ドメスティック・バイオレンス)」の頭文字をとった略称で、同居している夫婦間(内縁関係の男女も含みます)や恋人間などの親しい間柄の相手から振るわれる暴力のことを指します。
どのような場合が「DV」に当たるの?

「DV」というと殴ったり蹴ったり物を投げつけたりといった物理的な暴力を想像する方が多いと思いますが、それだけにとどまらず、侮蔑、恫喝、無視、不保護といった精神的暴力なども当然含まれます。
具体的には、次のような例が挙げられます(あくまで代表例で、これだけではありませんので、ご注意ください)。
① 物理的暴力
・殴る、蹴る
・物を投げる(当たらない方向も含む)
・壁や物を叩く、壊す
・近くで怒鳴る
・詰め寄って恫喝する
・性関係を強要する
② 精神的暴力
・無視する
・日常的にバカにするなど侮辱する
・上から目線で対応する
・人格を否定する
・従わないと酷い目に遭わせるなどと言われる
・親類や友人との交際を許さない
③ 経済的暴力
・生活費を渡さない
・正当な理由もないのに仕事を許さない
・相手の財産を全部管理しようとする
DV被害を受けているときは、どこに相談すればいいの?

そもそも結婚は、別々に成長してきて考え方も異なる男女が、夫婦となって、他人であっても歩み寄り譲り合ってお互いに尊重し合いながら、協力して生活を営んでいくべきものです。
DVは暴力ですから、どんな理由があっても許されるものではありません。
でも、ちょっとしたきっかけから、暴力によって相手を支配しようとする発想が生まれてしまい、DV被害がなくならないのが現状です。
では、DVを受けた側は、どのように対処すればよいのでしょうか?
DV被害の場合、何よりも先に大事なことは、DV被害を受けた方や子どもの安全を確保することです。そこで、まずは、次に挙げる相談先に一刻も早く相談するべきでしょう。
① 警察署の生活安全課
平成11年に発生した埼玉の桶川ストーカー殺人事件の苦い経験から、警察のDVへの対応が大きく変わりました。現在は、DV事件で暴力を検知すると、容疑者を逮捕する方向で警察官が出動する事例も多くなっています。
そのため、特に物理的な暴力を振るわれているような場合には、まずは警察に相談するのが良いでしょう。
② 配偶者暴力相談支援センター
各自治体で組織されている婦人相談所や福祉事務所などです。
このような公的機関では、DV被害に関する各種の情報を提供したり、DV被害者の相談を受けたり、緊急避難に助言・助力したり、緊急時に安全を確保するために一時保護したり、心身に傷を負ったDV被害者にカウンセリングを行ったり、就業促進などDV被害者の自立を支援したりするなどの支援を行ってくれます。
DV被害にあっていると思ったら、まずはこのような公的機関に相談してみましょう。
③ シェルター
シェルターとは、DV被害者などを一時的に保護する施設のことで、婦人相談所に併設されている一時保護所といった公的シェルターと、民間が運営している民間シェルターがあります。
保護施設というシェルターの性質上、住所を含めあまり情報が明らかにされていないことも多いのですが、DV被害を受けて帰る所がない場合には、公的機関に相談のうえ、シェルターに入居して難を逃れるという方法もあります。
もっとも、シェルターによっては入居するための条件が異なったり、入居した後のルールが異なったりしますので、入居を考える際には、事前にいろいろと聞いておいたほうがいいでしょう。
④ 弁護士事務所
DV被害を法的に対処するためには、弁護士に相談する必要があるでしょう。
DV被害に精通している弁護士であれば、どのような公的機関や施設に相談に行けばよいのか、今後どのような法的な対処方法があるのか、しっかり答えてくれるはずです。
今では、インターネットで調べることにより、近所の弁護士事務所を見つけたり、DV被害に強いとうたっている弁護士事務所を見つけたりすることもできますから、「弁護士は敷居が高い」と思わずに、気軽に相談されることをお勧めします。
DV被害に法的に対処する方法は?

「配偶者の暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(いわゆる「DV法」)が、平成13年に制定されました。この法律は、その後も改正を繰り返して、現在は、物理的な暴力だけでなく、精神的な暴力などを規制対象に含まれるようになったり、保護の対象を夫婦関係以外にも広げたりされ、様々なDV被害に対応できるようになってきています。
DV法では、配偶者の暴力を防止するために、裁判所に対してDV法に基づく保護命令を申し立てることができます。この保護命令には、接近禁止命令(例えば、6か月間住居や職場に接近したり付近を徘徊したりすることを禁止する命令)や、退去命令(例えば、2か月間住居から退去させ、接近を禁止する命令)、電話等禁止命令(面会の要求や電話、FAX、メール等を禁止する命令)などがあります。
自分でも保護命令を申し立てることは可能ですが、法的な対処ですから、法律の専門家である弁護士に依頼したほうがスムーズに運ぶことが多いでしょう。
もっとも、保護命令の申立てには、配偶者暴力相談支援センターや警察への相談が条件となりますので、その点は注意が必要です。
以上のように、DVと一言で言っても、いろいろな被害があります。DV被害にあっているのではないかと思っている方は、「これくらいじゃDVに当たらないかも」と思わずに、勇気をもって各種機関に相談に行かれた方が良いと思います。
また、弁護士は、暴力からの保護、警察への対応要請、保護命令の申立て、離婚手続など、DV被害に対してあらゆる形で救済を支援していますので、「もしかしたらDV?」と思っていたら、どこかのタイミングで早めに弁護士に相談することも良いと思います。

■弁護士に聞いてみた|バックナンバー
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・愛があればお金なんて…は甘い!【婚姻費用・日常家事債務の連帯責任編】
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田中雅大
(弁護士/第二東京弁護士会所属)
1975年生まれ。埼玉県出身。証券会社に勤務した後、2010年に弁護士登録。中小企業の法務や不動産案件を中心に扱いつつ離婚や不倫などに関する数々の男女トラブルを解決。趣味はサーフィン、草野球。
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