マタハラ

マタハラのタイプと被害の実態について弁護士に聞いてみた

  • 更新日:2019/04/23

みなさん、「マタハラ」 という言葉を聞いたことがありませんか?

最近は「~ハラスメント」 という言葉を耳にすることも多いかと思いますが、「マタハラ」 は「マタニティー・ハラスメント(Maternity Harassment)」 の略語で、特に妊娠や子育て中の働く女性にとっては、非常に深刻な問題となっています。また、「マタハラ」 は、「パワハラ(パワー・ハラスメント)」と「セクハラ(セクシュアル・ハラスメント)」とともに、働く女性を悩ませる3大ハラスメントの一つと言われています。

でも、そもそも「マタハラ」って具体的にどのような言動を指すのか、よく分かっていないのが方も多いのではないかと思います。


そこで、今回のコラムから、マタハラの意味や、マタハラに当たる言動、マタハラに遭ったらどうすればよいのかなどについて、解説していこうと思います。


そもそも「マタハラ」って何?どのようなタイプがあるの?

マタハラ

「マタハラ」は、一般的には、働く女性が、妊娠・出産・育児をきっかけに、職場から不利益な取扱い(解雇、退職勧奨、減給、降格など)を受けたり、上司や同僚などの従業員から嫌がらせを受けることをいいます。

マタニティー・ハラスメントの略語である「マタハラ」は、2014年の流行語大賞トップ10に選ばれていることもあり、その頃から一般的に馴染みのある言葉になったと考えられます。この「マタハラ」は、セクハラと同じように法律上の用語というわけではありませんが、「マタハラ」が流行語になる前から、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)」や「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)」では、妊娠・出産・育児休業の取得などを理由とする、解雇、雇止め、降格などの不利益取扱いが禁止されていました。


では、「マタハラ」にはどのようなタイプがあるのでしょうか?マタハラ被害の当事者団体であるマタニティー・ハラスメント対策ネット(マタハラNet)は、マタハラのタイプを以下の4つに分類しています。


①昭和の価値観押しつけ型

「男は仕事、女は家庭」 というように、性別で役割を分業しようとする意識が根底にあり、女性は妊娠・出産を機に家庭に入るべき、家庭を優先すべき、それが幸せの形だと思い込んでいることから起きてしまうタイプのマタハラです。

例えば、「シングルマザーじゃないし、経済的に困っていないのだから、無理して働く必要はない」とか、「子どものことや君の体のことを考えたら、みんなに迷惑がかかる前に辞めたらどうか」 とか、「仕事を辞めて家で子育てするのが女の幸せだろう」といった言動により、退職を勧めたり、必要以上に休業を勧めたり、職種変更を強要したりするのが、このタイプのマタハラに当たります。

このタイプは、「妊娠した女性に精神的・肉体的に厳しい仕事をさせるのは可哀想だろう」などとの思い込みから、女性側の意思を無視して仕事から外してしまうもので、悪気がないからこそ余計に厄介なタイプといえます。


②いじめ型

妊娠・出産で休んだ分の業務をカバーさせられて不公平を感じる同僚の怒りの矛先が、妊娠や育児中の女性に向かってしまい、攻撃を繰り返すタイプのマタハラです。

例えば、「育児だからってこの忙しい時に休めていいよね」とか「つわりがひどいからって仕事を休むなんてズル休みでしょ」とか「勝手に妊娠しておいて仕事を休むなんて迷惑なんだけど」といった心無い言動が、このタイプのマタハラに当たります。

このような不公平感・しわ寄せの解消は、本来であれば会社のマネジメントの問題のはずですが、中小企業を中心に、そのようなマネジメントがうまくいっていない会社が多いのでしょう。当事者の女性を攻撃するのは筋違いも甚だしいですが、実際には、この「いじめ型」のマタハラもよくある事例の一つです。


③パワハラ型

日本の労働環境の中には、いまだに長時間働いて一人前という文化が根付いてしまっている面があります。このような労働文化を背景に、妊娠などで長時間働けない女性に、会社が組織として長時間労働を強制するタイプのマタハラです。

例えば、「育児で残業できないなら戦力にならない」とか「育児のための時短勤務はNG」 、「妊婦でも特別扱いはしない」などといった言動が、このタイプのマタハラに当たります。

法律上も当然に認められるべき産休・育休や時短勤務等の制度があったとしても、その意義や目的が社内に十分に行き届いておらず、制度の利用を良しとしない職場がいまだに少なくないのです。


④追い出し型

長時間働けなくなった社員を、組織として労働環境から排除してしまうタイプのマタハラです。

例えば、つわりがひどい女性社員に対し「本当に仕事をする気があるのか!」 などと恫喝したり、「妊婦は自己責任だ!」などと罵ったりするほか、「子どもが出来たら辞めてもらうよ」とか「育休明けに戻る場所はないから辞めてくれ」などといった言動が、このタイプのマタハラに当たります。

残念ながら日本には、誰一人として産休・育休を取得したことがなく、妊娠したら必ず辞めさせられるという会社が少なくありません。

このようなマタハラは明らかに違法なのですが、マタハラ被害の多くは「追い出し型」であり、それがまかり通ってしまうのが日本の現状です。


「マタハラ」被害の実態は?

マタハラ被害

では、「マタハラ」 は、どのような原因で、誰が、どのような言動をする場合が多いのでしょうか?

2015年11月12日、「マタハラ」 について厚生労働省が行った初の実態調査の概要が公表されました。これは、民間企業6,500社、そこに雇用されている25~44歳の女性労働者約26,000人にアンケートが配布され、ウェブモニターに登録している25~44歳の女性雇用労働者など計5,000人から回答を受けた結果となります。

この調査によれば、以下のようなことが分かります。


マタハラの原因

妊娠等を理由とする不利益取扱いの原因については、「妊娠、出産」 自体を原因と捉えている女性が約半数にのぼり、次いで「つわり、切迫流産などで仕事ができない、労働能率の低下」 、「育児休業」 、「産前・産後休業」 という順に続きます。

やはり、妊娠や出産をきっかけにマタハラ被害を受ける女性が多いようです。


マタハラ経験時の健康状態

妊娠等を理由とする不利益取扱い経験時の健康状態については、半数以上の女性が、健康だったにもかかわらず妊娠等を理由とする不利益取扱いを受けており、約4分の1の女性が、不調があり労働能率が低下していたが、仕事を休むほどではなかったと回答しています。


マタハラ加害者

妊娠等を理由とする不利益取扱い行為をした者については、多い順から、「職場の直属上司(男性)」 、「直属上司よりも上位の上司(男性)」 、「職場の直属上司(女性)」 、「職場の同僚・部下(女性)」 が挙げられています。

やはり、男性の上司からのマタハラが多いですが、同じ女性の上司や同僚からも、マタハラ被害を受けているという実態が分かります。


マタハラの内容

妊娠等を理由とする不利益取扱い行為の内容としては、「解雇」と「雇止め」がそれぞれ約2割、約半数が「『迷惑』・『辞めたら?』等、権利を取得しづらくする発言」 を受けた経験があるとの回答でした。

他にも、約15%の女性が、「賞与の不利益算定」 、「退職強要や非正規社員への転換強要」 、「不利益な配転」といったマタハラを経験しています。


雇用形態ごとのマタハラ経験

雇用形態ごとの妊娠等を理由とする不利益取扱い経験については、派遣労働者のうち約半数、正社員のうち約20%の女性が、マタハラを経験したことがあると回答しています。

やはり、不安定な派遣労働者が際立って多いですね。

しいたけの中華麺

このように、マタハラには、様々なタイプが存在し、実態調査の結果を見ても、かなりの割合の女性がマタハラ被害を受けていることが分かりますね。現実には、会社の中で出産や育児に関する法制度が守られているとは限りませんし、あなたの勤めている会社でも、もしかしたら、マタハラ被害が起きているかもしれません。


マタハラ被害を受けている女性の中には、「迷惑をかけている自分が悪いのでは…」 と思って我慢してしまう人や、実際に会社を辞めてしまう人もいます。しかし、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法で禁止されている不利益取扱いを行ったり、妊娠・出産・育児をする労働者に認められている権利を妨げたりすることは、違法なマタハラです。子どもは、本来は社会で育んでいくものですから、マタハラは個人の問題ではなく、社会全体の問題です。マタハラ被害に悩んでいる場合には、一人で抱え込むのではなく、早い段階で周囲の人や弁護士に相談してみたほうが良いでしょう。


マタハラをしないようにされないように、いつまでも働きやすい職場で働きたいものですね。



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弁護士に聞いてみた
  • 田中雅大 (弁護士/第二東京弁護士会所属)

    1975年生まれ。埼玉県出身。証券会社に勤務した後、2010年に弁護士登録。中小企業の法務や不動産案件を中心に扱いつつ離婚や不倫などに関する数々の男女トラブルを解決。趣味はサーフィン、草野球。

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