発達療育

何度も何度も同じ本ばかり読むけれど、これって意味あるの?

  • 更新日:2020/12/17

ゆかたんは、4歳の頃からのじゃ塾に通ってきていた生徒。言葉がなかなか出ない子で、「ことばの相談室」という言語トレーニングの教室に通っていました。ママは「言葉が遅い理由は知的に発達が遅れているからなのか」ということと「小学校では特別支援学級に入れた方がいいのか」ということについてのセカンドオピニオンを取りたいという思いで、のじゃ塾へやってきました。

そんなゆかたんの、絵本にまつわるお話です。


CASE13何度も何度も同じ本ばかり読むけれど、これって意味あるの?

同じ本ばかり読む子供

のじゃ塾の本棚は、子どもたちの目線の高さに絵本を並べてあります。授業の始まりに読む本は子どもたちが自分で選び、思い思いに自分のその日読みたい本を持ってきて、自分で音読をするか、私が読み聞かせをするかを決めています。


ひとつの本へのこだわり

ゆかたんの場合、春は「はるかぜとぷう」、冬は「はじめてのゆき」と決まっていて、それ以外の季節はいつも「はらぺこあおむし」でした。授業は週に1回。毎回毎回、同じ本を選ぶ。ゆかたんの本の変化を見て、「あ、今はもう秋というより冬なのね」なんてことを思ったり。


そんなゆかたんも、のじゃ塾に通い始めの頃は自分で本を選ぶというより、本選びはこちらにお任せ、という感じでした。私は毎回違う絵本を選んで、ゆかたんに読み聞かせをしていました。少しずつのじゃ塾に慣れてきたゆかたん。自分で本を選ぶようになってからは、毎回「はらぺこあおむし」を本棚から持ってくるようになりました。しかも、次来た時に自分が取り出しやすいよう、本棚の一番端っこの、自分の目の高さのところに片づけるのです。


これが、実に8年間。


一日に2冊読む日も、同じものを2回読む、といった調子でした。


1冊、1ページ、1コマへのこだわり

たくさんの本を読むことと、ひとつの本をとことん読むこと。どちらも意味があり、価値のあることです。

それにしても8年間かー……と、今、私も驚きました(笑)


絵本を読み聞かせる時、大人の側はつい「違う絵本もどうかしら? 」と思ったりするわけです。様々な知識に触れさせたいとか、もっといろんなことに興味を持って欲しいとか、いろいろと考えるわけです。

しかしながら、子どもたちはそんなことおかまいなし。


私の息子の場合は、絵本のある一場面だけを繰り返して読むことを強要してきました。1冊の本へのこだわりというよりも、1ページへのこだわり。物語を読み進めてページをめくっていっても、そのお気に入りのページにたどり着くとそこから一歩も進まなくなるのです。次のページをめくろうとしても、戻されてしまう。なんとか進んだと思っても、しばらくするとまた、そのお気に入りのページに戻れと言う。


最初は理解不能でした。発達症という言葉を、私がまったく知らない頃のことです。「 物語の内容がわからなくなっちゃうのに 」とか、「 これじゃ、一生読み終わらないじゃん 」とか、イラ立つこともありました。


この、息子の不思議な行動が、実は私に発想の転換を促すきっかけをくれたのです。


実はこだわりを持っていたのは自分だった、という発見

「物語は順を追って読むもの」という確固たる決まりごとが私の中にあるから、その息子の行動にイラつくのだ、と気づいたのです。「最後まで読まないとお話が終わらない」とか「続く、で、次はそこから読む」とか、そうしたことも別にその通りでないといけないわけではない。

その1ページを切り取って楽しむ、ということも【あり】ってことです。


この発想の転換をしてからは、読み聞かせに限らず、生活のひとつひとつについて、自分自身の決まりごとがお互いを苦しめる原因となっているのかもしれないという視点を持つことができるようになりました。


のじゃ塾の、「子どもたちにとことん付き合う」という姿勢が生まれたのはこの体験から。後に、発達症について学び、「なるほどこれか」と、体験と理論が結びついたというわけです。


当然こうくるよね、がイラ立ちの元

私たちの認識からすると「こだわりの強さ」と見えてしまう、ゆかたんの絵本選びや息子のお気に入りの1ページのエピソードですが、また違った側面を持っていることも推察されます。


それは、すぐ直前のことを忘れる、または、判断認知に連続性がない、という発達症のもうひとつの特性の表れであるとも考えられるのです。

「判断認知に連続性がない」というのはどういうことかというと、何かを判断する時に、「直前までこうしていたんだから当然次にはこうくるよね」的なこちら側の憶測は通用しない、ということです。


例えば、みんなの会話の中で、今夜食べたいものは何か、という話が出たとする。そのトピックに対し、「私はハンバーグ」「ぼくは唐揚げ」と、順番に意見を言う。発達症の子に順番がまわってきた時に「あなたは?」と質問すると「ぼくは、今お菓子を食べています」とか「わたしはのざきみほです」といった、みんなの話している話題にまったく関係ない返答が返ってきてしまうというような、そういうことです。


この子たちの特性についてではなく、自分たちに視点を合わせてこのことを考えてみましょう。この「当然こうくるよね」はなかなかの曲者です。子どもたちに対してだけでなく、私たちは日常的にこの「当然こうくるよね」のために、他者に対していらぬイラ立ちを抱きがち。「当然こうくる」にならなかった時に、イラ立つわけです。だとしたら、「当然こうくる」という思考方法をやめてしまえば、手放してしまえば楽になる。


子どもたちは、瞬間を切り取って生きている

子どもたちは、瞬間を切り取って生きています。

毎回毎回、同じお話でも本人には新鮮に聞こえている、ということ。

決めごとが少ないほど、子どもたちの情報はより多く、より詳細に私たちのもとへ届けられる。そんな風に思います。


ゆかたんとの「はらぺこあおむし」の時間は私にとって、「絵本を開く」という魔法で、あっという間に心が通い合い、あたたかい光に包まれるような、そんな時間でした。ぜひ、子どもたちと共にその瞬間を心ゆくまで味わってみてください。



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「まなまりんManaMarine」とは?

発達療育イベントを各地で開催。感覚統合と愛着形成を目的としたメソッドを、運動と遊びを通してお伝えしていきます!

Mana Marineの運動療育で育てていくのは、この、脳の交通整理に必要な5つの感覚(視覚・聴覚・触覚・固有覚・前庭覚)。同時に、ボウルビィの愛着理論を元に、愛着の形成に必要な要素も取り入れ、独自のメソッドで親子の関わりを支え、脳の発達のみならず心の成長もサポートします。

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  • いしづかみほ (学習・療育のじゃ塾塾長/日本子ども虐待防止学会会員/イラストレーター)

    「子どもたちが本来持っている才能を存分に発揮できるよう双方向で作る授業」と「彼らのありのままを理解する教育カウンセリング」を軸とした療育を実践しています。

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