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出産には4つのハードルがある。「社会的不妊」と「身体的不妊」とは?

  • 更新日:2020/09/02

2020年5月、厚生労働省が発表した2019年の人口動態統計によると、合計特殊出生率(ひとりの女性が一生涯に産む子どもの数)は1.36となりました。合計特殊出生率は、4年連続低下しており、少子化は加速しています。


日本は、世界各国と比べても比較的不妊治療がたくさん行われている国です。子どもを望んでいる人はいるにも関わらず、なぜ実際に産まれる子どもの数は年々減少しているのでしょうか?


ジャーナリストの白河桃子さんと人材コンサルタントの常見陽平さんの共著『女子と就活 20代からの「就・妊・婚」講座』によると、日本女性が出産するには、4つのハードルが待ち受けていると言います。


今回は、日本女性が直面している出産へのハードルとはなにか、本書を参考に解説していきます。


日本の女性が直面する出産前の4つのハードルとは?

本書では、出産したいという意志があるにも関わらず妊娠できない状態を「身体的不妊」と「社会的不妊」というふたつの言葉を使って解説しています。「身体的不妊」とは、年齢や生活習慣などが原因で妊娠しにくくなっている状態のことであり、「社会的不妊」とは、結婚や出産・子育てがしにくい社会が原因で妊娠できなくなっている状態のことです。


日本の女性が直面する出産前のハードル1 産める体のメンテナンスと正しい知識を持つ

日本の教育では、避妊については教えていますが、不妊についてはほとんど教えていません。そのため、いつまで産めるのか、将来子どもを産みたいと思うならどういった点に気をつけるべきなのか、認識していない人も珍しくありません。望まない不妊を避けるためには、産める体についての正しい知識をつけておく必要があります。


本書では「妊娠の適齢期は20代から34歳と思ってください。できれば20代のほうがいいでしょう」と述べられています。医学的にも35歳以上は高齢出産となり、様々なリスクがあることが報告されています。35歳以上で出産する人も増えてきてはいますが、「高齢出産する人も増えているし、いつでもできるだろう」と考えるのは早計だと言えるでしょう。


日本の女性が直面する出産前のハードル2 結婚

もちろん、妊娠するために必ず結婚しなければならない、というわけではありません。未婚で出産している方もいます。ですが、「出産は結婚してから」と考える人が現代は多数派です。そのため、結婚相手として適切な人と出会えないために出産が遅れる、というケースもあります。


専門家の意見は必ず「20代、遅くても34歳までに第一子」というものですが、実際はといえば、なんと20代後半女性の6割は未婚です。(P.304)


では、子どもが欲しいと考えるなら、未婚で出産したらいいのか、というと、それはそれで別の問題があります。現状、シングルマザーの2人に1人は相対的貧困ラインを下回る収入しか得られていません。男女の賃金格差などを考えると、やはり、子育てするには誰かと結婚した方が無難です。しかし、20代のうちに相手と出会い、早めに出産して……というルートを選べる人は限られています。


日本の女性が直面する出産前のハードル3 仕事、経済力、夫の協力、周囲の協力等自分の周りのこと

みっつ目のハードルは、自分の意志ではどうしようもない「社会・周囲の状況」です。具体的には、職場の環境・夫の育児意欲・夫以外の子育て要員の協力・保育園などの入園状況・子どもを持つための経済力、などです。


産休・育休をとっても復職できる仕事についており、夫が育児を他人事と考えておらず、家族も手伝ってくれて、保育園にも入園できて、子育てに必要な経済力がしっかりある……こういった理想的な環境を完璧に揃えることはできなくても、目指すことは可能です。


たとえば、夫選びや仕事選びにおいて、「妊娠・出産・子育てがしやすいか」を念頭におくとよい、と本書ではすすめています。また、「産める企業」のバロメータとして、「若い女性だけでなくさまざまな年齢の女性が活躍しているか」「女性の採用人数や離職率、女性の役職者の数」「時間ではなく成果で評価してくれるか」を挙げています。就職や転職を控えていて、子どもがいつかほしいと考えている方は、「産める企業か」ということも企業選びの重要なポイントのひとつだと言えるでしょう。


日本の女性が直面する出産前のハードル4 不妊治療

日本は不妊治療がさかんに行われている国です。NHK『クローズアップ現代』の「産みたいのに産めない 卵子老化の衝撃」によると、「日本は世界一不妊クリニックが多く、世界一体外受精が多い国」だということです。


本書では、「不妊治療の先生方は、『患者さんの平均年齢が高い。もっと早く来てほしい』と嘆いている。男女ともに加齢は不妊の原因になりえる」と述べ、不妊治療を始める時期が遅いことが少子化の一因であると指摘しています。


さいごに。出産のハードルを低くするために、個人ができることはある?

出産のハードル

つまり、若いうちに妊娠したくてもできない社会的不妊という状況があり、社会的不妊で子どもを持つことを先延ばしにせざるを得ない……と考えているうちに、身体的不妊になってしまい、不妊クリニックに駆け込む人が増えている、というのが、現在の人口減少社会の本質だ、というわけです。


この、出産に至るまでに様々なハードルが高くそびえている状況を変えるためには何ができるでしょうか? 


一人ひとりが、ハードルを華麗にかわす術を考え、学び、工夫することは不可欠です。しかし、個人の努力だけでは超えられないハードルもあります。自分の意志ではどうしようもない「産みにくく、育てにくい社会全体」も変えていく必要があります。「社会を変える」というと大げさですが、できることはあるはずです。選挙に行く、政治家にメールや電話で意志を伝える、なども、より産みやすく育てやすい社会の実現のために必要な行動だと言えるでしょう。


今回ご紹介した本

『女子と就活 20代からの「就・妊・婚」講座』

著者:白河桃子 常見陽平 

出版社:中公新書ラクレ


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  • 今来 今 (フリーライター)

    神戸出身。編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。

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