女性の性欲

「女性の性欲」を「無いもの」にするのはやめよう

  • 更新日:2019/09/27

結婚生活の長い夫婦や、長年付き合っているカップルのなかには、セックスレスで悩んでいる方も少なくないでしょう。


男性の場合は、「セックスしたい」と伝えることに抵抗がない方が多いですが、女性の場合、「セックスレスは問題だと思っているけど、自分から迫るのも恥ずかしいし、拒絶されたら立ち直れない」と、悩んでいることすらパートナーに打ち明けらない方もいます。


なぜ男女でこのような非対称が生じるかというと、「男女の性欲には大きな差がある」とか「女性には性欲があまりない(またはあってもあまり言ってはいけない)」と思い込んでいる人が多いからでしょう。


男性の交際理由は9割性欲、女性は見栄と寂しさから付き合う、ってほんと?

恋人

劇作家の鴻上尚史さんが、AERA.dotにて連載されている人生相談でも「男女の性欲には大きな差がある」ことを前提にした回答が掲載されていました。


鴻上さんいわく、「男性が交際を始める理由の9割は性欲で、女性の場合は、9割、寂しさ」だそうです。


この意見の同意する女性はどのくらいいるでしょうか? 私はこの回答を読んだとき、「鴻上さんは女性には性欲はほとんどないと思っているのだろうか?」と疑問に感じました。


「男性には女性とは比べものにならないほどの性欲がある」という科学的根拠はありません。それにも関わらず、「男女の性欲に大きな差がある。女性の性欲は男性よりかなり少ないのが当たり前」という考えを常識だとしてしまうのは、男女ともに、とくに女性にデメリットがある、と私は考えます。


「男性の性欲は女性とは比べものにならないほど旺盛なのが普通」という言説の弊害

男性浮気

「据え膳食わぬは男の恥」という言葉がありますが、「男性ならセックスできるチャンスを逃してはいけない」というプレッシャーは、男性にもデメリットがあります。「本当はしたくないけど、男らしさの証明のためにしなくては」という無用のプレッシャーを感じてしまう可能性があるからです。


また、「男性の性欲をおおきく見積もり、女性の性欲を過小評価すること」は、女性にとっても様々なデメリットがあります。


「男性の性欲を過剰におおきく見積もり、女性の性欲を過小評価すること」のデメリット1:女にだけ『貞淑であること』が期待され、男の浮気は容認される

「男の性欲は抑えられないほど大きいのだ。女にはわからないだろうけど」ということにしてしまえば、男性の浮気や風俗通いは正当化されます。「彼女や妻を愛してはいるけれど、性欲が凄いので、仕方ないのです!」という理屈です。


この理屈は、「男は浮気する生き物」「男の浮気は仕方がない」とする一方、女性が浮気した場合「女性は男性のように性欲旺盛であってはならない」「男はセックスのために浮気するけど、女がする? 女らしくない!」と糾弾する、というダブルスタンダードを生み出します。


「男性の性欲を過剰におおきく見積もり、女性の性欲を過小評価すること」のデメリット2:セカンドレイプ発言を誘発する

性被害にあった女性に対して、「そんな夜中に男性の自宅に行くなんて」「あんな露出度の高い服を着ていたのが悪い」と、「被害にあったのはお前にも落ち度があったのだ」と責める発言をする人がいます。


悪いのは、加害者側であって被害者が責められるべきではないのは自明のことです。それにも関わらず被害者を責めるような発言が出てしまう背景には、「男性は性欲を抑えられない生き物である。それは仕方がないことだから、男性に欲求を抑えることを期待せず、女性側が自衛すべきだ」という「男性の身勝手な性欲を容認する価値観」が隠れています。


「男性の性欲を過剰におおきく見積もり、女性の性欲を過小評価すること」のデメリット3:『性行為の主体は男性であり、女性ではない』という価値観を強化する

セックスは通常、したいと思った人同士がするものです。ですが、女性の性欲を軽視している現代では、「性行為の主導権を握るのは男性」だと考えている人も少なくありません。


「性行為の主導権を握るのは男性」だと考えてしまったら、「自分はしたくないけど、男性って、女性よりもしたい気持ちが大きいというから、したほうがいいのかな」とか、「セックスしたいけど、自分から言うのは恥ずかしい。女がこんなセックスしたがるのって変?」と考えてしまい、「セックスするのは、男性から求められたときで、自分からはできない」ことになってしまいかねません。


こういった状態は、「女性の欲望よりも、男性の欲望の方が優先されるのが当たり前」という状態を作り上げることに加担している、と見ることもできます。


さいごに。性行為の主体になろう!

しいたけの中華麺

女性の性欲を「無いもの」とすることは、女性に「性行為全般の主体性」を認めないことに通じます。


男女共に、性行為は自分がしたいときにするものであり、「求められたから仕方ない」と、相手に合わせてするものではない、と自覚的になるべきでしょう。一人ひとりが性行為を主体的に行うことで、現在の「男女間の性欲格差の幻想」を正し、幻想に伴う不利益を減らしていくことができるのではないでしょうか。


※1 AERA.dot 「鴻上尚史のほがらか人生相談〜息苦しい『世間』を楽に生きる処方箋〜」



▼バックナンバーはこちら

・セクハラなどの性暴力被害をなくすために、女性ができることは?
・「母親なんだから」「女は加齢で価値が下がる」呪いの言葉から自由に!
・「主人」「女社長」…は、性差別を助長する言葉?
・「軽い男じゃないのよ」。男女の力関係が逆転したらどうなる?

▼著者:今来さんの他連載はこちら

・妊活・お金・介護・美容…40歳までに知っておきたいことリスト
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  • 今来 今 (フリーライター)

    神戸出身。編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。

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