疲れた母親

「母親なんだから」「女は加齢で価値が下がる」呪いの言葉から自由に!

  • 更新日:2019/09/13

世の中には、耳に入ってきただけで、暗い気持ちになり、縛られ、そこから逃げられないと感じるような、「呪いの言葉」が溢れています。


「母親なんだから」という言葉にとらわれ、自分のことはすべて後回しにして無理をしたり、「若さは価値」と信じるあまり、年齢を重ねることをネガティブに感じ、アンチエイジングにお金を使いすぎてしまったり、といったことは、「呪いの言葉」に無意識に縛られているために起こる弊害です。


「呪いの言葉」の呪いを解くために、まずは「その言葉に縛られていることに気がつき、意識的にその呪縛の外に出ようとすること」が必要になってきます。


今回は、法政大学キャリアデザイン学部教授・上西充子先生著『呪いの言葉の解き方』(晶文社)を参考に、ジェンダーを巡る「呪いの言葉」にどのようなものがあるか、を紹介していきます。

「若さは価値」という呪い

若い女性

女性がかかりがちな呪いのひとつに、「若さは価値(年老いたら価値がなくなる)」というものがあります。


ドラマ化され話題となった海野つなみ先生著『逃げるは恥だが役に立つ』のなかでも、若さにまつわる呪いについて、言及されています。

若くてかわいい女性、五十嵐杏奈が、自分の好きな男性が、親子ほども年の離れたアラフィフの土屋百合に惚れていると気がつき、百合を牽制するために「若さというのは価値の一つだと思うんです」と言い放ちます。それに対し、百合が返した言葉が、以下です。


自分で自分に呪いをかけているようなものよ。あなたが価値がないと思っているのは、この先自分が向かっていく未来よ。それって、絶望しかないんじゃない? 自分がバカにしていたものに、自分がなるのはつらいわよ。「かつての自分みたいに今周りは自分を馬鹿にしてる」と思いながら生きていくわけでしょ。そんな恐ろしい呪いからは、さっさと逃げてしまうことね。(『逃げるは恥だが役に立つ』コミック第9巻参照)


また、百合は杏奈に、こうもアドバイスしています。「あなたがこの先楽しく年を取っていきたいと思うなら、楽しく生きている年上の人と友達になるといいんじゃないかな」。


「女性は若くてなんぼ」という価値観を作ってきたのは誰か、そういった価値観に沿って生きることで得をしているのは誰かを考え、「楽しく生きている年上の人」と接することで、「若さは価値という呪い」から、自由になることができるでしょう。

 

「母親なんだからしっかりしなさい」という呪い

母親

次に挙げられる呪いは、「母親たるもの、こうあるべき」という呪いです。


家父長制は過去のもの…と言いたいところですが、実際には、結婚した途端、「〇〇家の嫁」扱いされ、親族の集まりにおいて、男性がくつろいでいるなか、女性陣だけがお茶やご飯の用意をさせられる、といったことは珍しくありません。


旧態依然とした「お嫁さんの役割」「母親の役割」を期待されるシーンは少なくないのです。やっかいなのは、他人から期待されるだけではなく、「母親(嫁)なんだから、役割を果たさなければ!」と自分で自分に呪いをかけてしまっている場合も多い、という点です。


呪いにかかっているがために、逆に子どもに対して害のある親になってしまうケースもある、という点を指摘しているのが、ルポライターの杉山春さんです。


杉山さんは、虐待する親に共通しているのが、「生真面目に母親役割・父親役割を全うしようという意識が高い」ことだと述べています。(『児童虐待から考える 社会は家族に何を強いてきたか』朝日新聞出版)


杉山さんは、『ルポ 虐待』(筑摩書房)のなかで、2人の子どもを置き去り死させた23歳の母親が、離婚時に夫側の実家の意向で、下記の内容を盛り込んだ誓約書を書いていたことを明らかにしています。


・子どもは責任をもって育てます

・借金はしっかり返していきます

・自分のことは我慢してでも子どもに不自由な思いはさせません

・家族には甘えません

・しっかり働きます

・逃げません

・うそはつきません

・夜の仕事はしません

・連絡はいつでも取れるようにします

(P.100-101)


ここに列挙されているものは、「母親たるもの、こうあるべき」という内容だ。「こうあるべき」と彼女を縛る、「呪いの言葉」だ。その言葉に「NO」と言えないまま、彼女は子どもふたりを抱えて、孤立無援で生きていくことを余儀なくされた。(P.101)


子育てで追い詰められていても、「自分ひとりでは育てられない」「誰かに助けてほしい」とは言えない、という人は多いのではないでしょうか? 

そういった方は、「母親だから、子どもを育てるのは当たり前」「母親になったのだから、しっかりしなければ」という呪いにかかっている可能性があります。


自分ひとりでできることには限界があります。追い詰められているときほど、自分と子どものために、「良き母親像」に縛られすぎていないか、と自問する必要があるでしょう。


「子育てで悩んでいるけれど相談できる人がいない」という場合は、地域の児童相談所などに問い合わせしてみましょう。


★東京都の児童相談所への問い合わせはこちら


「苦しいのは、呪いの言葉にかけられているから」かもしれない

パワフルで自由な女性

今回は、ジェンダーにまつわるふたつの「呪いの言葉」をご紹介しました。


「呪いの言葉」の呪いは、それらが変えられない事実ではなく、「自分が思い込んでいた価値観で、気持ちひとつで変えることができる」と気がついたとき、解けはじめます。

思考の枠組みを縛る「呪いの言葉」に気づいたら、意識的にその呪縛の外に出ることで、「押し付けられた呪いをはねのけることができる、パワフルで自由な自分」を感じることができるでしょう。



▼バックナンバーはこちら

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  • 今来 今 (フリーライター)

    神戸出身。編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。

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