
【小説#83】私は彼が大好き。だから結婚して幸せになりたい!の裏にあった本音
- 更新日:2019/05/28
- 公開日:2019/05/25
前回のあらすじ:数時間ファミレスで悩んでみるも、夏美の心が晴れることはなかった。
「私って最低」そう口に出すと、最初は自分が本当に最低最悪の女に感じられたが、だんだんと今度は自分がどうして最低なのかが分からなくなってくる。
そうして答えのでない悩みは、だんだんと怒りに変わってくる。「自分のしてきたことは、全部弘のためなのに…」そう思ったら、弘の態度や言葉に苛立ちが止まらない。
もうどうしよう…そんな気持ちになっている時、ふと放置していたチュベローズからの返信が目に入る。
『あなたは彼のこと、本当に愛していましたか?実は自分の理想どおりの行動を取る彼が好きだったのではないですか』
耳が痛くて返せなかった言葉に、夏美は思わず返信を打ち始めるのだった。
“結婚して幸せになる” “彼と結婚して幸せになる” 似ているようで違う言葉。あなたはどっちの結婚を望む? 『私は彼を愛していた……と胸を張っては言えませんが、大好きでした。だから家の事とか将来についてとか、たくさん努力しました。浮気はしてしまったけれど、でも今やっぱり彼がいいと思うし、彼との生活のために頑張りたいって思います。それでも私は、自分の理想を追いかけているのでしょうか?私が変なのでしょうか?』 チュベローズへの返信を一気に打ち込むと、少しだけ気持ちが落ち着く。 弘からのLINEは来ていない。もう1時をすぎているから、寝てしまっているかもしれない。 これからどうしよう。とりあえず、家には帰らなくちゃいけない。あまり感情的になることのない弘との喧嘩は、だいたい夏美から謝るか、時間がたってなあなあにならないと終わらない。 本当は弘に心配して欲しい。自分の気持ちを聞いてもらいたい。だけど今それは望めないことも分かっている。 「ああ、もう八方塞がりってやつだ……」 冗談めかして、ガラガラの店内に向かって小さくつぶやくと、自然と「へへっ」という失笑が漏れる。 「とりあえず家に帰らなきゃ」 体の中のエネルギーを出し切ると、不思議と冷静な判断が戻ってくるから不思議だ。 帰り道、夏美はこれからのことを静かに、そして強引に思案する。 もしかしたら、弘も感情的になってしまっただけかもしれない。 結婚へ向けて、お互い考えたり悩んだりしていたからこそ、こういう行き違いに敏感になっているのかもしれない。 今日は喧嘩してしまったけど、ある意味真剣な向き合い方の第一歩なのかもしれない。 「かもしれない」を重ねることで、夏美は家に帰る理由を見出していく。 『結婚して、幸せになるんだ』 その一点に、夏美のモチベーションは集約されていた。 自分は浮気をやめ、家事を頑張り、借金に目をつむり、弘を支えることを決めた。でもそれが彼にとって望んでいないことなら、もう一度考え直そう。 『結婚だって家事だって、俺だって考えてるよ』 弘の言葉がフラッシュバックする。 一体弘は私との何を考えていたんだろうか。でも彼なりに考えているんなら、それで良いのかもしれない。 あと少しで自宅に着くという頃、スマホが通知を知らせる。開くとチュベローズからだ。 『彼を大好きなのは素晴らしいことです。でもあなたの根本には、自分の幸せを考えて、必要なピースを選んでいるように思えてならないのです。「結婚して幸せになりたい」のでしょうか。それとも「彼と幸せになりたい」のでしょうか。前者の場合、それは相手を愛しているとはいえません。自分中心で考えた結果、彼を利用しているだけなのです』 長い返信の最初だけ目で追いながら、夏美は家へ向かう足を思わず止める。 「私が望んでいるのは……」 言葉がうまく出てこない。足元がガクガクと震えるような、地面がグラグラと揺れるような気がしてくる。 夏美は自分の本当に望んでいるものが何か、気づいてしまったのだ。 NEXT ≫ 第84話:「結婚して幸せになりたい」気づいてしまった事実に、どう答えをだしたらいいのか 第1話:とにかく結婚したい!家族の輪から取り残されるのは、私が独身だから? 第78話:気づいたらすれ違う2人。埋まらない溝に気づいたときどうする? 第79話:デート中の些細な喧嘩!私は悪くないのに、どうしたらいいの? 第80話:何もしてない彼氏に怒り!ぶつけた後に返ってきた思わぬ反応 第82話:その愛は押し付け?本当に彼のこと愛してる?と聞かれて迷う心恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第83話:私は彼が大好き。だから結婚して幸せになりたい!の裏にあった本音
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おおしまりえ
(恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)
水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。
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