恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~

【小説#43】平然と装うたびに、溢れ出る感情のほころびたち

  • 更新日:2019/03/19

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前回のあらすじ:帰宅途中、夏美は先程の甘い時間を思い出しながらも、自分のしたことをだんだんと実感していた。弘にバレないだろうか。自分はしっかりしているだろうか。そればかりを考え、何度も身なりや匂いを確認しながら家路につく。 そんな動揺の中でも、心の中に後悔という感覚はほとんど浮かんでいなかった。それは弘が叶えてくれなかったことに対する怒りなのか、それとも達成感なのか、夏美自身もわからない。だから今は、不安を抱え込みながらも、やってしまった行為を隠すことにただ専念するのだった。

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第43話:平然と装うたびに、溢れ出る感情のほころびたち

人間には細胞から微弱の電波が絶えず流れており、その電流をキャッチすることで、実は言葉や態度から読み取る以上の情報を受け取っている。らしい。


「ただいまー」


部屋に入り、弘と目が合う。

一瞬「ん?」という怪訝な表情を見せたような気がして、夏美は心臓が縮む気がした。


「あー酔っ払っちゃったー。なんかさ、友達が結婚することになったんだけど、いきなり二次会の幹事やることになっちゃって、参ったよ。それでそのまま打ち合わせして来たんだけど、幹事って本当に面倒なのね。でもなんか幸せなカップル見てると、気分がいいよね。とりあえず式までは半年あるから、親睦も深めつつやるかーって感じ」

第43話

ドスンと荷物をおき、ドカドカとお風呂場へと移動し、お湯をため始める。

ダバダバとお湯が溜まっていくのを眺めながら、妙に喋り過ぎている自分に反省する。


(これじゃあまるで焦っているみたいじゃない)


自分に言い聞かせるけど、動揺なのかアルコールのせいなのか、心臓は手を当てなくてもわかるくらいバクバクしていた。


リビングに戻りお水を手に取ると、弘がテレビから目を離し、夏美に声をかける。


「友達って、前に紹介してくれた子?」


「あ、うん、そうそう!前に家飲みしたときに呼んだ子。弘も一度会ってたね。そうなの。サークルの先輩と結婚するんだけど、私も近況を詳しく知らなかったから、びっくりした」


「そっか、めでたいねえ」


弘はニコリと笑い、テレビに視線を戻す。

その無邪気な態度に安堵すると同時に、自分がしたことに初めて“後悔”という感情が乗っかるのを感じる。


でも後悔はしても、そこに「ごめん」という謝罪の気持ちは起こらない。


じゃあこの“後悔”とは何なのか。

さらに複雑にしてしまった関係への苛立ちなのか。

弘に本当の気持ちをぶつけきれない寂しさなのか。

これから二人がどうなっていくのかわからない不安感なのか。

二人の男にいい顔をする自分への罪悪感なのか。


どれもピンとこないまま、夏美は洋服を脱ぎ始める。

二の腕の内側に、キスマークといえないくらいの、うっすらとした桜色の跡があるのに気づき、思わず「あーーっ」と息を混じらせた小さい声でつぶやく。


嬉しいのか困ったのか、自分でもよくわからない。

ただその生々しい跡が、さっきまで男に抱かれていたことを思い出させ、夏美の頭をいつまでも喜びと不安で混乱させ続けた。



NEXT ≫ 第44話:浮気から始まる恋は、幸福感とともに悪いクセを呼び起こす



■連載を1話から読む

第1話:とにかく結婚したい!家族の輪から取り残されるのは、私が独身だから?



■恋愛パラドックス|バックナンバー

第38話:これはピンチ?チャンス?流れた縁が再び私の手に戻るとき


第39話:憧れの先輩と再接近!今からご飯…その後に何が待っているの?


第40話:「結婚する予定は?」憧れの彼からの答えに、引き戻される恋心


第41話:ついに一線を超える関係、その時頭に浮かんだことは…


第42話:カラダを重ねたあとに湧き出す不安、女の浮気は本当にバレない?



▼前作の小説はコチラ!

第1話:行きたくない合コン!そこで待っていた地獄の時間



  • おおしまりえ (恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)

    水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。

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