恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~

【小説#40】「結婚する予定は?」憧れの彼からの答えに、引き戻される恋心

  • 更新日:2019/03/19

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前回のあらすじ:二次会の幹事を幸太と務めることになった夏美。1年ぶりに会う幸太は、一瞬「あっ」という表情をするも、変わらぬ爽やかさとユーモアで場を支配している。 夏美はそんな彼に妙に緊張してしまい、とにかく幹事としての役割に徹することを自分に課す。 そうして打ち合わせは無事終わらせることができたものの、「この後飯でもどう?」と言われ、反射的に行くと答えてしまう。その誘いには下心があるのかないのか。不安になりながらも、夏美は弘に今日は遅くなることを連絡するのだった。

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第40話:「結婚する予定は?」憧れの彼からの答えに、引き戻される恋心

楽しいはずなのにぎこちない。

その意味は、本当に触れたいコトから逃げている証拠。


居酒屋のカウンターに並びで座り、慣れた感じで注文をすませる。

早い時間にもかかわらず店内は騒がしい。だからこそ二人の距離がいつも以上に近く、そして彼の声が響く気がする。


「いやー本当にあの二人が結婚するとはね」


「私もまさかって思いました。いい感じって聞いてはいたんですが。決断早いですよね」


「早いかな?何気にあの飲み会からもう1年だよ」


あははと顔を見合わせ笑いあい、どこかぎこちない空気から逃げるため、夏美はレモンサワーをぐっと喉に入れる。


(冷たいなあ)


当たり前の感想を頭の中で反復し、先輩の視線を入れないようにお皿に箸をつける。


「この大根、美味しい」


本当に美味しいと思っているのに、妙に白々しい声が漏れる。

気まずい。というのはこういうことなのか。

夏美は大根からあふれる出汁を感じながら、恥ずかしさをかみしめる。


気まずい原因には、1年前のキスのこともある。

でもそれ以上に、今2人をつなぐものが“友人の結婚”という、羨ましくも浮ついた、そして話題としては触れにくいイベントが絡んでいるからにほかならない。


「いやー本当先を越されたって感じです。こうしてどんどん周りがラッシュになっていくんですね」


努めて明るく、夏美は結婚の話題に触れてみる。これ以上ぎこちなさに耐えられないというのが本音だ。


「先輩だって、そういう予定はないんですか?モテるでしょう!」


私はもう1年前のことなんて全く気にしていませんよ。あなたはもう私とは関係のない男性なんですよ。ということを、めいいっぱい口角を上げてアピールしてみる。


「俺?あー…うーん、ないわけではないけど…まあ近いうちはない。かな。わかんないや」


「そ、そうなんですね」


てっきり「ある」とか「彼女はいるけど予定はない」とか、どちらにせよハッキリした返事が返ってくると思っていた。望んでいた。でも予想とは違う歯切れの悪さに、心臓がバクバクと高鳴り、変な声が出てしまう。


「わ、私も近いうちにあるかなー……同じく、わかんないかも」


精一杯の強がりのつもりが、結局湿っぽい愚痴も一緒に口をついて出る。


「彼氏いるんだね」


「一応婚約中って感じです。でも、事情があって…結婚がいつになるか本当にわかんなくて…、最近は一緒にいても微妙な感じなんです」


「そうなんだ…なんか聞いちゃってごめん」


「謝らないでください。愚痴っぽくて、わたしこそ、ごめんなさい」


夏美は垂れ流してしまった弱さを打ち消すため、とりあえず食べ物を口に運ぶ。


「あーでも夏美ちゃんも彼氏がいるのか。俺、知ってると思うけど好きだったのにな」


「え!?何ですかそれ?今、言うんですか?」


はははと笑ってみせるけど、お酒のせいか照れなのか、顔が反射的に火照る。


「本当だよ。だからあの時も、キスしたし」


「……そうだったんですね」


笑っていると思っていた幸太の目は真剣で、目が合うと、次の言葉が浮かんでは消え、浮かんでは消えていく。

第40話

「そういう話は、一年前にちゃんと言ってください」


小さな声でそう返すのが精一杯だった。

ふいに床においた手に、幸太の手が覆いかぶさる。


「そんな不安なら、結婚なんて考えなくていいんじゃない?」


「不安?」


「だって、夏美ちゃん、今泣きそうな顔してる」


言われた瞬間手汗が吹き出し、水分が目の周りに集まってくるのがわかる。

私は辛いんだ。そう認識させられたら、何かが外れてしまったように、感情の波が押し寄せる。


「無理すんな」


そう言うと、幸太は夏美を自分の方に引き寄せる。握られている手が、夏美のカラダを包み込み、その温かさにカラダは抵抗力を失っていく。



NEXT ≫ 第41話:ついに一線を超える関係、その時頭に浮かんだことは…



■連載を1話から読む

第1話:とにかく結婚したい!家族の輪から取り残されるのは、私が独身だから?



■恋愛パラドックス|バックナンバー

第35話:一難去ってまた一難。憧れの彼から連絡が入り、女がその時決めたこと


第36話:新たな一歩を踏み出す2人。それは愛か?それとも偽りのモチベーションか?


第37話:再び動き出す恋模様!1年経って変わったこと


第38話:これはピンチ?チャンス?流れた縁が再び私の手に戻るとき


第39話:憧れの先輩と再接近!今からご飯…その後に何が待っているの?



▼前作の小説はコチラ!

第1話:行きたくない合コン!そこで待っていた地獄の時間



  • おおしまりえ (恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)

    水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。

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