
【小説#33】母親の小さな嫌味!模範回答を探していると、意外な彼からのアシストが
- 更新日:2019/03/19
- 公開日:2018/11/24
前回のあらすじ:30分遅刻で到着した食事会場。どんな嫌味を言われるかと思いきや、穏やかそうなご両親は言及せず、そのまま会食が始まった。久しぶりに会う恋人の顔に、懐かしさと苛立ちを覚えつつ、でも会えたことは嬉しい。
当たり障りのない質問に模範解答を出していると、ふと母親からの嫌味の変化球が飛んでくる。悪いのは確かに夏美なのだが、どう返したらいいのか迷い、思わず言葉に詰まってしまう。
オンナの敵はオンナ。 これもある意味そういうことなのか。 母親の上品な嫌味を聞き、回答を探しながらそんなことを考える。 「夏美さん、土日もこんな急に仕事が入るなんて、大丈夫なの?あなたの体もそうだけど、その、これから2人になったとき、仕事ばかりでは育つ仲も育たないんじゃないの?」 言わんとしていることは、夏美の心配というオブラートに包まれた、弘の心配と、今日の非礼に対するツッコミだ。 それは分かっていた。分かっていたからこそ、どう言えば納得してもらえて、どう言えば彼女に気に入ってもらえるのか、満点に限りなく近い答えを、夏美は探していた。 「えっと…そうですね」 どもりながら、乾いてもいない喉を炭酸水で潤す。母親の顔は、変わらず口角が上がっているが、細まった目がどこか怖い。 「お母さん。夏美だって仕事頑張ってて忙しいんだから、心配いらないよ」 「え?」 と言いかけて、思わず口をつぐむ。 助け舟を出してくれたのは、意外にも弘の一言だった。 「俺よりもずっと俺たちの事考えてくれるし、助けられてばっかりなんだよ。この引っ越しだって、夏美が段取ってくれたから実現したことなんだ」 「え?そうなの?」 母親の顔から、みるみる驚きと恥ずかしいという気持ちが浮き出てくる。 「うん。いつも忙しいのに、部屋が汚かった事なんて1回も無いし。ご飯だってオレが野菜食べないからって、野菜中心のメニューにしてくれてさ、なんだったら俺より遅い日もたくさんあるのに、そういうの毎日一生懸命やってくれてんだよ」 「弘、お前ちゃんとしてるのか?迷惑かけてるんじゃないか?」 「そんなこと言って、お父さんだってなんにもしないじゃない」 「犬のトイレ掃除と、ゴミ捨てはやってるぞ」 「それは家事って言わないのよ」 父親と母親の即席コントが始まり、場がドッと和らぐ。 「まあだから、夏美には頼りっぱなしだけど、一応なんとかやれてる。今日も忙しいのに、来てくれて本当ありがとう」 弘と目があう。面と向かってありがとうと言われたのは、いつ以来だろう。 思わず頬が熱くなる。こういう見ていないようで見ている彼が好きだった。夏美は忘れかけていた彼の魅力をなぞり返すような気持ちになる。 「こっちこそ、遅れてごめん…」 返答しながら、手汗が吹き出す感覚を必死に抑える。 「夏美さん、弘と一緒で、大変じゃない?この子全然普段のこと教えてくれないから。今日だって、夏美さんがどんな人か、会うまで全然教えてくれなかったし」 「…そうなんですね。お会いできて、よかったです」 一瞬、「教えてくれない」という一言に借金の話がよぎった気がするが、弘は誰に対しても弘なのだと思えたら、小さく諦めがついてくる。 何より、私をかばってくれて、頑張っていたと肯定してくれた事実が、夏美を想像以上に安心させる。 もう一度話せるかもしれない。 そう思いながら、テーブルの上はデザートへと移っていくのだった。 NEXT ≫ 第34話:プロポーズして欲しかった!気づいた自分の中の期待を手放し、出した答え 第1話:とにかく結婚したい!家族の輪から取り残されるのは、私が独身だから? 第29話:「ただ結婚して安心したかった」その事実に気づけただけで、実はいいこと? 第32話:30分遅刻して彼親と対面!謝罪の後に待っていた状況恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第33話:30分遅刻して彼親と対面!謝罪の後に待っていた状況
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おおしまりえ
(恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)
水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。
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