
【小説#28】自分の本音と今後に絶望!頼れるのはもう実家だけ
- 更新日:2019/03/19
- 公開日:2018/11/06
前回のあらすじ:「インド雑貨の輸入業を、友達とやっていた」借金の理由を聞いて、夏美の中には正直いい印象は浮かんでこなかった。なんで雑貨なのか、なんで友達同士で起業したのか。親はどこまで知っているのか。思いつく質問を精査し彼にぶつけてみると、弘からは「ただ知りたいんじゃなくて、安心させて欲しいだけでしょ?」と一喝され、反発心から「今の弘とじゃ結婚できるわけないじゃん!」と一喝してしまう。
思わず放った一言で自分の本心を知った夏美は、弘への怒りと自分への落胆で、涙を流しながらも、実家に一次避難することにした。
昔に読んだ本に書いてあったけど、それはものすごくキレイ事なんじゃないか。今の夏美には、そうとしか思えない。 急な帰省に、母親はただただ心配したけど、特に話を聞くでも慰めるでもなく、お風呂だけ湧いている。と声をかけてくれた。それが冷たいような温かいような、いつもの日常だ。 ベッドに突っ伏すと、安心する匂いに少しだけ涙が止まる。だけど絶望的な状況は変わらない。 弘が1番気にしていることを、怒りにまかせて責めてしまった。そして自分は、弘との結婚ではなく、安心感を求めているだけだった。もっと言えば、借金のある弘となんて私は絶対結婚したくない。とすら思っていたのだ。 自覚した事実が罪悪感として、胃のあたりをチクチク攻撃する。弘が怒ったところは、何年ぶりに見ただろうか。むしろ初めてかもしれない。 大きな声を出すことのない彼に驚いたと同時に、彼もそれなりに2人の未来を考えていたんだという事実も思い出す。 「もう、どうしようもないけど……」 後悔なのか、絶望なのか。わからないけど、夏美は無意識にスマホを開いていた。 『今日はありがとう。急にごめんね。夏美ちゃん見てたら思わずあんなことしてて…でも遊びとかではないから』 幸太からLINEが入っている。そういえば数時間前、私はこの人とキスをしたのだ。ドキドキして運命かもと思った恋は、過去の思い出というアドバンテージにくわえ、彼から放出される結婚という安心感に、私は惹かれていたのかな…。妙に冷静に感情が整理されたとたん、自分と幸太に対して嫌な気持ちが湧き上がり、画面を閉じてしまう。 「はーっ」と大きなため息をついて、次に季子のHPを開き、今の状況を打ち込む。借金の一件から、状況を説明したら怒られるんじゃないかと思い、なんとなく気まずくてアクセスもできていなかったけど、頼れる場所が今はここしかなかった。 どうしたらいいか答えは出ない。でも……迷う気持ちを打ち込み、着替えを手にして、最後に一応弘からの連絡が入っていないかだけ確認する。もちろん、スマホは何も受信してはいない。 「だよね……」 それだけのことを、自分は言ったし、やってしまったんだ。 湯船につかると、暖かさが涙腺を緩め、涙が思い出したかのようにまた流れ出す。今日は妹がいないから、細かく何かを詮索されることもないし、比べて過剰に落ち込むこともない。 静かな浴室に、夏美の小さなすすり声だけが響いていた。 NEXT ≫ 第29話:「ただ結婚して安心したかった」その事実に気づけただけで、実はいいこと? 第1話:とにかく結婚したい!家族の輪から取り残されるのは、私が独身だから? 第25話:キスの後の「この後どうする?」その時彼女の頭に浮かんだこと 第26話:微妙な温度から戻る二人の仲。そして彼が話した借金の真実 第27話:明かされる彼氏の借金の理由!ただ聞きたかっただけ?それとも安心させてほしかっただけ?恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第28話:自分の本音と今後に絶望!頼れるのはもう実家だけ
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おおしまりえ
(恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)
水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。
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