
【小説#24】握られた手、思わず急接近するデートの行方は…
- 更新日:2019/03/19
- 公開日:2018/10/23
前回のあらすじ:弘と借金の話しをしてから、2人は気まずさからほとんど会話をしていない。折れることができない自分。説明しない彼。そして迫る食事会。夏美は日々焦りをつのらせ、苛立っていた。そんなとき、幸太との2回目のデートが行われる。幸太と弘、2人の男性のことを考えながら時間を過ごしていると、なんだか今日は、すごく積極的に距離を詰められているような感覚に陥る。このドキドキは、思いすごしかそれとも事実なのか。
「男は単純」ってよく言うけれど、人生でそう思えたことのほうが少ない気がする。 手を握って誉める。その行為自体は“脈アリ”っぽいのに、正直何を考えているのか、全然わからない。最も気づいたところで、止められる自制心が私にあるのかってことの方が、問題だけど。 「結婚とかさ…」 「え??」 思わずカラダがビクッと反応し、スマホを足元に落としてしまう。 幸太に触れられた手が、ずっとその感触を覚えていて、一言一言に過剰に反応してしまう。 「ご、ごめんなさい!」と慌ててスマホを拾い上げ、会話に戻る。 「いやさ、俺らも結婚とか急かされる年齢だよなーって。この前会社の同期に子どもが生まれてさ、あんま考えたことなかったけど、なんかいいなーって思っちゃったんだよね」 「結婚、私たちの年齢だと多いですよね。子ども産んだ子も、周りにけっこういますし」 「いいよねー子ども…」 ふふふっと無言で微笑み返すしか、今の夏美にはできなかった。心の中は、幸太が結婚に好意的という状況に、ただただ浮かれてファンファーレが鳴っているような気がして、自分を抑えるのに手一杯だ。 やばい…ダメ…止まれ…。私には関係ないじゃん。 目の前にいる男はこんなにも結婚に好意的なのに……、そう思うと、今度はなんだか言葉に出来ないモヤモヤとした感情があふれて目の奥が熱くなってくる。 「情緒不安定かよ」と頭の中で叱咤しながら、一旦この考えから距離を取る。 「みんなそろそろ結婚する頃ですよね。まあでも今は仕事とかで忙しいと、後回しになってしまうことも多いと思いますけど」 「俺も長く付き合ってた彼女がいたけど、今思えばタイミングを逃したんだなって思うし」 「……」 なんて返したらいいかわからず、フリーズしてしまう。 空気が変わるとはこのことなのか。てっきり口説かれていたと思っていた話は、やっぱりただの世間話だったのかもしれない。 そう思ったら、自分の舞い上がった状態が、とたんに恥ずかしくて、そしてなんだかやっぱり彼が遠い存在に思えてくる。 (結局過去の懺悔かよ!) 気持ちを整えるため、ゆっくりとお酒を飲み、精一杯の笑顔で「難しいですよね…」とだけ小声で返す。 幸太も察してか、少しだけ照れるように微笑み返す。 夏美は、自分が今泣きそうな顔をしているのではないかと、酔いかけの頭で思案する。 お店を出ると、外はすっかり肌寒い空気に変わっていた。結婚についての話題が出てからというもの、うまくお酒を楽しむことができず、痛々しさが伝わってしまわないか、そればかり気になっていた。 小さな入り口の段差を超えるとき、幸太はサッと夏美に手を差し出す。「あっ…」と一瞬躊躇するが、手を取り出口まで導いてもらう。 離すタイミングが、よくわからないまま、2人は歩きだす。 「今日はありがとうございました」 なんとなく気まずいような照れるような空気を解くため、歩きながら話しかけると、幸太が優しく微笑み返す。家に帰りたいような、帰りたくないような。この人が私の手を取り、今何を考えているのかだけ、ただただ気になる。 「じゃあ、またご飯行きましょうね!」 駅に着くと同時に夏美から手をほどき、人混みを避けて挨拶をする。少しだけ、墓穴を掘らなかった自分に安心しつつ、でもこの時間と別れる寂しさもある。 「あんまり、考えすぎんなよ!」 幸太がおもむろに夏美の頭をポンと叩く。 びっくりして夏美は幸太の顔を見つめ、再びフリーズしてしまう。 目が合った瞬間、「逃げられない」という言葉が浮かぶ。 寄りかかりたい自分から逃げられないのか、幸太から逃げられないのか、この場からなのか、分からない。 離れた手が、もう一度ふれあい、そして握られる。 固まる夏美を包み込むように、幸太は最小限の動きで、唇をゆっくりと重ねる。 NEXT ≫ 第25話:キスの後の「この後どうする?」その時彼女の頭に浮かんだこと 第1話:とにかく結婚したい!家族の輪から取り残されるのは、私が独身だから? 第19話:結婚したいけど問題山積!酔った勢いで確信に迫る!? 第20話:結婚がしたいけど問題が片付かない!頼った先で言われたアドバイスとは 第21話:借金のある男は問答無用でダメ男?問われて気づくお金への思い込み 第22話:ついに問い詰める借金の真相!そのとき彼が話したことは…恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第24話:握られた手、思わず急接近するデートの行方は…
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おおしまりえ
(恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)
水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。
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