恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~

【小説#8】幸せなはずの二人の生活がなぜか息苦しい理由

  • 更新日:2019/05/14

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前回のあらすじ:楽しいことしか待っていないはずの引っ越し。でも弘との温度差に夏美はだんだん苛立ちをつのらせていく。2人の幸せのためなのに。2人の生活のためなのに。そう思えば思うほど、弘ののんびりした態度が嫌になる。言い返すこともできず、この山を超えることで幸せへと進んでる。と、夏美は自分に言い聞かせるのだった。

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第8話:幸せなはずの二人の生活がなぜか息苦しい理由

吸って吐いて。吸って吐いて。

ソファに座り、夏美は部屋中の空気を吸い込もうとお腹と肩に力を込める。


同棲を初めて2ヶ月目。最近なぜだか呼吸がしにくい。普通に吸って吐いてを繰り返しているだけなのに、吸えば吸うほど体の中から酸素が漏れ出し、心臓の鼓動が早くなる。喉元が詰まる感じが抜けなくて、手からはじっとり汗が出る。


最初にそれを苦しいと認識したのは、弘を背中から抱きしめている時だった。胸が圧迫されているからなのかと思ったけど、姿勢を正しても苦しさがうまく抜けてくれない。


おかしいのかな?


一度気になりだすと、いつ本当に息ができなくなるのかわからなくて、不安からさらに胸が強く締め付ける。


弘とずっと一緒という新生活は、幸福感を生み出していた。朝も夜も弘の顔を見て、夕飯だけでも弘のためにご飯を作って、弘が明日も頑張れるように私なりに力を注ぐ。

もちろん忙しくて完璧にはできないけれど、同棲ってそういうことだと思うから。

ずっと一緒にいたいと確信させるまで。結婚が決まるまで。

そう自分にも言い聞かせていた。でも、最近弘を見ると凄く幸せな気持ちと、どうにも抑えきれない苛立ちが交互に来るようになっていた。


靴下を脱ぎっぱなしにしているところ。

ご飯を作ったのに食器を洗ってくれないところ。

マンガを読んだら出しっぱなしのところ。

今日の夕飯について確認のメールを逐一入れてくるところ。


1つ1つが些細なことだし、彼が何か変わったとも思わない。思わないのに、ときどき家に帰るのがすごく面倒に感じることが増えていた。仕事が急に増えて帰れなくなればいいのに。大雨が降って洗濯機を回せなくなればいいのに。そう思う頻度が、明らかに増えていた。


「それってマリッジブルー?それともノロケ?」


友達に相談してみたけど、幸せとワンセットな悩みというのは、なかなか理解がされにくく、残酷に切り捨てられて終わってしまった。

結婚ってこんな修行みたいな思いをするもんだっけ?つかめない弘の心に、夏美は自分が疲れているのか、怒っているのかすら、わからなくなっていた。


第8話

ベッドに寝そべり、天井をぼんやり見つめながらこのあとやるべきことを思い浮かべる。

弘は今日飲み会だから、ご飯はいらないって言ってたな。そろそろ床を掃除してペットボトルを捨てておこう。そういえば母親からメールが入ってたんだっけ。

1つ2つ3つ…忘れないようにやるべきことの数を数えていくと、ある瞬間、夏美の目にドッと水分が集まる感覚が湧き上がる。

どうしたんだろう。心の中で反芻したときには、溢れた水分が両頬につたい、鼻の奥がツーンとしびれてくる。


「……しんどい」


誰にも聞こえないことを確認してから小声で吐き出すと、言葉が部屋の中で響いているような、不安定に言葉だけが浮遊しているような気がして、また水分がじわっつと湧き出してくる。

手で涙をぬぐいながら、この同棲は失敗だったのか、環境による変化なのか。自分が辛いのか怒っているのか。涙がどうして出ているのか。1つ1つ思い浮かべながら、もう一度深く深く呼吸をしてみる。



NEXT ≫ 第9話:好きだから頑張る!でもそれって純粋な愛じゃない!?



■連載を1話から読む

第1話:とにかく結婚したい!家族の輪から取り残されるのは、私が独身だから?



■恋愛パラドックス|バックナンバー

第3話:迷った時に読む恋愛コラム!それって意味あるの?


第4話:結婚がしたい?彼と結婚がしたい?似ているようで全く違う女心の正解とは


第5話:絶対結婚するんだ!料理を作り、一緒になりたいと伝えた結果は…


第6話:同棲準備は楽しいことだらけ!でもそれって2人とも楽しんでる?


第7話:同棲前日!幸せの中にある焦りと不安の正体とは



▼前作の小説はコチラ!

第1話:行きたくない合コン!そこで待っていた地獄の時間



  • おおしまりえ (恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)

    水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。

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