
【小説#1】とにかく結婚したい!家族の輪から取り残されるのは、私が独身だから?
- 更新日:2019/03/19
- 公開日:2018/08/04
恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第1話:とにかく結婚したい!家族の輪から取り残されるのは、私が独身だから?
「あんたが1番早く結婚しそうだよね」
学生時代、家族や友達、色んな人に言われてきた言葉。
誰よりもいい子だったし、誰よりも見た目を磨いていたし、誰よりも冷静に男を選んで、誰よりも相手に合わせてきた。
だから恋愛で失敗するはずないし、幸せな結婚が当然手に入ると思っていた。
夏美は鏡にうつる自分を見つめながら、32年の人生を、お風呂上がりの肌から読み解いてみる。
昔は24歳が結婚適齢期なんて言ったものだけれど、本当にオンナが輝いて見えるのは、仕事の結果が出始め、自分にお金をかけられるようになった32歳くらいなんじゃないか。
1万円の美容クリームを塗り込みながら、そんなことを考える。
「キレイになって。キレイになって。キレイになって」
心の中で呪文を唱え、肌に指を丁寧にすべらせる。夏美の肌は、たゆまぬ努力のおかげで、シミもシワもなく今日も艶やかに輝いている。
「ガシャーン」
「ゔわーーーーん」
恍惚とした美容タイムを、大きな雑音がつんざき、思わず「はあ」とため息混じりに、洗面所を後にする。
リビングに戻ると、妹の息子みのるが、おもちゃを床に投げつけ、わんわんと大声で泣き、その周りを妹と母が取り囲み、オロオロと泣きわめく王子様をもてなしている。

「せっかく帰ってきたのに、落ち着かないなあ」
2人に聞こえないようつぶやき、自室に戻ろうとする。
「ちょっとなっちゃん、お風呂の栓抜いといてくれた?」
「ごめん。抜いてない!」
「最後なんだから抜いといてよねー」
母がみのるをあやしながら、ブツブツと不満を述べている。
「実家に来てまで、空気よめってか」
夏美は母の不満は聞こえないふりをして、そのまま自室のドアを強めに閉める。
久しぶりに実家に帰省してみたものの、そこは見知った家ではなく、すでに妹と母が、みのるという王子様を育てるために作り変えた城になっていた。
かろうじて残る夏美の部屋も、おむつストックが置かれ、しみったれた雰囲気が漂っている。
「ここに私の居場所は無いんだな」
おむつを見ながらつぶやき、気持ちを切り替えるべくLINEを確認し、今度は弘からのLINEを開き、その内容にまたしても大きなため息をつく。
『家族水入らず、楽しい時間を過ごすんだよー(^o^)』
「水入らずって、わかってないなー」
付き合って2年になる弘とは結婚を考える仲だ。と、夏美は思っている。思っているのだが、弘から“結婚”の2文字が出たこともなければ、ニオってくることもまだない。
夏美は夏美で、プロポーズは男からするのが常識と思っているフシがあり、確信に触れられないでいた。
「妹が実家の近くに家を買って子育てしてて、姉としては焦っちゃうなあ」なんて愚痴っぽいにおわせ行為をしたと思ったら、これである。優しいけれど鈍感な男に、今日は無償に苛立ちが募る。
コンコンとノックと同時に扉が開き、母親が部屋へと入ってくる。
「ちょっと悪いわね」と言いながら、母親はおむつをいくつか掴み、足早に部屋を出ていこうとする。
「なんかさ、私ちょっと邪魔だった?」
せわしなく動く母の背中に、思わず言葉をかけてしまう。
「邪魔ってことはないけど、あんたも彼氏がいるんなら早く考えなさい。お母さんだって、いつまで手伝えるかわかんないんだから」
「…うん」
夏美の弱々しい返事を待たずして、扉が閉められる。
母は労働力の話しをしているのだ。それはわかっている。わかっているはずなのに、自分が追つめられる感覚に、カラダの芯がグワンと揺れる。
結婚したい。結婚したい。結婚したい。
内側から吹き出す焦燥感を封じるように、夏美は布団の中に潜り込み、丁寧に手入れした肌に触れ、安全な眠りについた。
NEXT ≫ 第2話:結婚したい!彼氏に匂わせたリアクションの結果は…
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おおしまりえ
(恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)
水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。
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