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【小説#18】「わかってほしいのは辛いという気持ち」話し合いで男と女がすれ違う理由

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~

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前回のあらすじ:ついに迎えた哲也との話し合い。しかし遥が娘のゲーム機をいじっていたということが哲也にバレ、いきなり話し合いは険悪なムードからスタートする。「ごめんなさい」と謝る遥だが、心の中には、自分が謝罪することに納得できない感情が湧き上がっていた。

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第18話:「わかってほしいのは辛いという気持ち」話し合いで男と女がすれ違う理由

『悪いと思ってないなら謝らない方がいい』


10代の頃、誰かが私にかけてくれた言葉だ。

でもそれを言ったのが誰だったか、今じゃ思い出せないし、結局あれから20年近くたった今も、反射的に謝って、その場を収めるクセは治っていない。


「ごめんね」


不機嫌そうな哲也にもう一度声をかけるが、「大丈夫、気にしないで」という期待したような優しい返答は返ってこない。


娘のゲームを勝手にいじり、ひっそり恋人の立場を主張しようとしたあたしは、嫉妬に狂った不倫女なのだろうか。

自分のしたことを振り返ってみるけれど、哲也が強いることに比べたら、やっぱりこんなイタズラ、許されて当然な気がしてくる。


「…ごめん」


本音を押し殺すように、沈黙を待てなかった言葉がもう一度口から出る。哲也はピクリと反応し、遥の方へと向き直る。


「なんで勝手にいじったの?」


「それは……面白そうだなと思って」


噓を吐き出しながら、いたたまれなくなりそっぽを向く。

哲也は遥の手を取り、カラダを正面に向き直る。そして子どもに語りかけるよう、ゆっくりと話し出す。


「こういう事ってさ、2人の関係を危なくするだけって、遥ならわかるでしょ?」


「……」


「今まで上手くやってきたのに、最近どうしたの?遥はいつも『急がなくていいし、待ってる』って言ってくれてたじゃん」


「それは今も、そのつもり。でも…」


妙に優しい時の哲也は、本当は凄く怒っているから要注意だ。カラダから湧き上がる警笛を察知し、喉元までせり上がる本音を1回止める。


「悩みがあるなら話して欲しいし、勝手なことするくらいなら、きちんと向き合おうよ」


哲也の分かった風な口ぶりに、思わずカッと反発心の炎がつく。


「勝手なことって、じゃあ娘のゲーム機をわざわざあたしの家に置いたり、一人でチケットを売りに行っちゃうことは、勝手っていわないの?」


言い切った後に、哲也の顔が険しくなり、しまったと思う。本当は一言欲しかっただけなのだ。無理させてごめんの一言が。


「まだチケットのこと、根に持ってるの?アレは売ったって言ったじゃん。じゃあどうしたら良かったんだよ」


「違う! そうじゃないの」


違うと言いながら、何が違うのか、自分でも頭の中が混乱してくる。


違う。チケットがどうとか、ネズミーランドがどうとかを言いたいんじゃない。娘の私物を家に置くのを責めたいんじゃない。違う。違う。違う。


違うのに、気持ちを上手く伝えられない。わかってほしいのは気持ちなのに、あやまって欲しいだけなのに。哲也は事実だけをなぞり続け、遥は哲也に怒りをぶつけ続けてしまう。


「本当は、知ってるんだよ。ネズミーランドに行ったことも、家族が冷え切ってないことも、あたし知ってるんだよ」


そう言い切ると、目からポロポロと暖かな涙が溢れ出し、哲也は大きなため息をつく。


「どうしてそう思うのかわからないけど、ネズミーランドには行ってない。家は話した通り終わってるよ。どうしたら信じてもらえるの?」


ハッキリと口にする哲也を前に、遥は突き放されたような孤独感を覚える。


「あたしもわかんない。でもこの1年半、関係は変わらなかったし、本当に哲也が考えて行動を取ってくれてるのか、今の状態じゃ伝わらないし、信じられない」


ガタンッ。


哲也が大きな音をたて、カバンを持ち、立ち上がる。


「遥の言いたいことはわかった。今日は一旦帰る。話しててもしょうがないし」


「待って! なんで逃げるようなことするの?」


哲也の「帰る」という一言に、あきらかに前向きな意味が含まれていない。腹立たしさを覚え、遥は思わず哲也の腕をつかむ。

勢いで、握られていたゲーム機が投げ出される。


「あっ」


ひっくり返ったゲーム機を拾おうとして、遥は思わず声をあげる。


機器の背面には可愛らしいシールが何枚か貼られ、その1枚にネズミーランドの今シーズン限定イベントのものが目に入る。


(神様って、絶妙なタイミングで意地悪なことするなあ)


急に襲ってきた真実は、頭の中をスッと冷えさせていく。



NEXT ≫ 第19話:不倫の喧嘩に親友が乱入!繰り出されるビンタに、修羅場はさらに熱を帯びる




■恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~バックナンバー

第13話:まさか私が不倫で妊娠?! 万が一が起きた時考えるべきこと


第14話:彼の不安な不倫関係!不安すぎてついに自分の痕跡を残し始める


第15話:女が不倫で静かに狂うときやること


第16話:不倫相手の噓!? 告げられた絶望の真実は…


第17話:ついに運命の話し合い!でも秘密がバレて思わぬ険悪な空気に


  • おおしまりえ(恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)

    水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。

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