
【小説#12】猫で孤独を癒やしても、結局ひとりぼっち
- 更新日:2019/03/19
- 公開日:2018/04/09
前回のあらすじ:チケットを換金し、このトラブルをなかったことにすることにした2人。しかし一度疑惑の生まれた関係は、なかなか元通りには戻らない。哲也は遥と一緒に換金する約束を守らず、売り払ったお金だけを見せたのだ。彼は本当にチケットを手放したのか?遥の不安は思わず口をつき、哲也を不機嫌にさせてしまう。
夜は余計なものが見えないからいい。 ごちゃごちゃした街も汚れも、キレイなものも余計なものも。 暗がりの中の哲也は、本当にキレイな顔をしているなあ。 隣で寝息を立てる最愛の人を見ながら、遥は1日を振り返り、疲労と同時にひとときの幸せを噛み締めていた。 くっきりとした目と鼻筋。髭の薄い白めの肌。ハリのあるこげ茶色の髪。少し筋張った腕と、その付け根に生える脇毛。1つ1つのパーツを観察しながら、他人様のモノである彼を呪いたい気持ちと、同時に今この瞬間独占している自分に、息が詰まるほどの幸福感が芽生える。 結局あの後は何事もなかったように食事をし、こうしていつも通りの夜を迎えている。ただ1つ違うのは、遥の中の小さな疑惑が、気づくたび確実に膨れ上がっていることだ。 あれは本心なのか。ウソはついていないか。本当はどうしたいのか。どうなっているのか。 好きという感情以上に、真実を知ることを望み始めていた。 「ちょっと気分転換でもしようかな」 興奮と不安が溜まったカラダを起こし、遥は部屋を抜け出しコンビニへと向かう。 まだ心地いいとはいえない深夜の風にあたり、冷静さを取り戻しながらコンビニへと向かう。 特に目的はないものの、カゴには炭酸水やパンやお菓子などを入れ、数分の間雑誌を立ち読みしてから店を後にする。目的は果たしたのに、なんとなくカラダは家に戻りたがっていなかった。 彼が待つ家は幸せな空間のはずなのに、目にすると、心の中に幸せと疑いが混ざり合うから辛い。 ため息をつきながら歩き出すと、ふと脇を白いものがよぎる。 「あ、猫!」 振り向くと、門扉をくぐり抜けようとする白い猫と目が合う。 痩せた猫は警戒心を全身から発し、小さい声で威嚇する。 「怖くない、怖くないよ」 かがんで手を出し、猫を招き入れようとする。不審な対象物に警戒心と興味を示しながらも、猫は微動だにしない。 遥はさっき買ったパンをちぎり置くと、猫はゆっくりと近づきニオイを嗅ぎ、恐る恐る食べ始める。 ひとりぼっちの飢えた猫。 そう思って見ていると、とたんに親近感が湧くような気がする。 「一生懸命、一人で生きて、大変だよね」 つぶやきながら頭をなでようとすると、下を向いていた頭がさっと動き、反射的に鋭い爪が、遥の指先を捉える。 「痛っっ」 猫は数秒前の恩義なんて忘れて、必死に身を守ろうとしている。 「義理堅くない猫だな」 感傷にふけった自分を恥じ、残りのパンをもう少しちぎって投げ入れる。しかし一旦離れた猫は、もう近くに寄り付こうとしない。 警戒する猫の姿をよくよく見ると、お腹がふっくらと大きい。 「猫ちゃん、もうすぐお母さんになるのか」 そう思ったら、急に野良猫にも住む世界に境界線を引かれた気がして、またどんより暗い気持ちになってくる。 「一人ぼっちじゃないってことか」 立ち上がって歩き始めると、ふと自分のお腹のあたりに違和感が走る。 「……そういえば、次の生理、来てないかも」 お腹をゆっくりさすってみるも、違和感はどこかへ消えてしまった。 遥は血の気が引くのを感じ、怖くなって振り返る。 道端に猫はもうおらず、そこには食い散らかされたパンのカスだけが、生々しく残されていた。 NEXT ≫ 第13話:まさか私が不倫で妊娠?! 万が一が起きた時考えるべきこと恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第12話:猫で孤独を癒やしても、結局ひとりぼっち
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おおしまりえ
(恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)
水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。
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