
「男らしさ・女らしさ」から自由になって、自分らしく生きる方法
- 更新日:2019/11/23
- 公開日:2019/11/23
自分の中に、「男性っぽい部分」を感じたことがある女性は多いと思います。
同様に、男性の中にもカワイイものが好きだったり、共感力が高かったり、「女性っぽい」部分は少なからずあるはずです。
ですが、マッチョな社会で、仕事もできて権力のある男性として生きてきた人ほど、自分の中の「女性らしさ」を抑圧しがちです。
「男性だったら常に強くいなければならない」「いつも女性をリードできる存在でいないと」と、頑張っている男性の中には、「常に男らしくいること」に息苦しさを感じている人もいます。
テレビや映画のプロデューサーで作家のクリスチャン・ザイデルもそんな男性の一人でした。男性社会を勝ち抜き、成功をおさめてきたクリスチャンでしたが、ある出来事をきっかけに、「男性がもつ女らしさ」について、自分の体を使って実験しようと考えたのです。
今回は、クリスチャンが1年にわたって行った実験を綴ったノンフィクション作品『女装して、一年間暮らしてみました。』をご紹介します。
男がストッキングをはいたっていい
クリスチャンが行った実験は、「女性の恰好をして生活してみる」というものです。
「この実験を通じて、昔から言い古されてきた『男と女の壁』をよりよく理解し、乗り越えられるのではないか」こんな心の声が、私をこの実験に駆り立てたともいえます。(P.2)
きっかけは一足のストッキングでした。冬の寒い日、男性用肌着の冴えないグレーやカーキの色、選択肢の少なさ、「モモヒキ」のダサさに辟易したクリスチャンは、女性用肌着用売り場でストッキングを見つけ、そのバリエーションの豊富さと美しさ、実用性に関心し、購入にふみきります。
そして、デパートの女性フロアの華やかさをみているうちに、女性のほうが生活をより楽しめるのでは?というアイデアが頭をよぎるようになります。
男とはこうあらねばならない、女はこうふるまうものだ、などといった堅苦しい偏見に抵抗するための手段として、僕は女性に変身することを思いついた。性別という壁に対する個人的な抵抗運動だ。革命と言っても過言ではない。そうすることで、自分がもつ偏見も明らかになるだろう。(P.28)
女装することで「男性」という不自由から解放された

クリスチャンは、女装をはじめ、ファッションやヘアスタイル(ブロンドのウィッグ)、メイクなどを楽しむようになります。
女性として当たり前どころか、毎日しなくてはいけない煩わしいものとさえ考えがちだったネイルやメイクなどをウキウキしながら楽しみ、「女性にはこんな楽しみがあったなんて!」とハマっていくクリスチャンを見ていると、「可愛く着飾ることに躊躇しなくていいのって、もしかして女性の特権だったのかも」と思えてきます。
クリスチャンは、女装をして自分の中の女らしさを肯定することで、男性として解放されたような感覚を味わったといいます。
まるで古い儀式のように、男たちがことあるごとに男らしさを強調するのにも嫌気がさしていた。性別という伝統にとらわれるあまり、新しい風がふいても飛び立つことができないのだ。(略)男性が解放の必要を感じるには、まずは男も不自由で束縛された存在であることを認めなくてはならない。男とはこういうものだ、というイメージに縛られているのは間違いないのだから。(P.86-87)
クリスチャンは、女性になりたい男性、ではありません。妻を愛していて、恋愛対象は女性です。自分が男性であることに違和感を覚えたこともありません。ですが、男性であることの不自由は感じていました。思い切って女らしく着飾ることで、男性らしくいなければいけない、という不自由さから自らを解放することができたのです。
男が弱くていい。女も強くていい。自分らしく生きる近道

僕は好きなときに、好きなように、強くもなり、弱くもなりたいのだ。軟弱さも、いわば新しい自由の一部なのだから。(P.92)
クリスチャンは、自分の中の弱さを認め、男女の役割を演じることをやめたとき、妻のことがより深く理解できるようになったといいます。
どんな女性の中にも男らしい部分があり、どんな男性の中にも女性らしい部分はあるでしょう。
ただ多くの人が「男性だから○○しないと」「女性だから○○してはいけない」と自分の中の女性性・男性性を抑圧し、ジェンダー規範に沿うように本来の自分をゆがめてしまっているような気もします。
男の殻を打ち破りたかった。それは同時に自分本来の姿に戻ることを意味していた。男であることを一秒たりともやめずに、自分のなかの女性らしさを取り戻すことだ。(略)何を女性らしさとみなすかは人それぞれだろう。しかし各自が自分の思う女性らしさを理解し、そして体験することが、古びた男性像を打ち破り、本当の個性を取り戻す近道のはずだ。(P.243-244)

彼氏や夫に、「男なんだからリードしてほしい。しっかりしてほしい。いつも強くいてほしい」と思う女性も多いでしょう。ですが、男性だって、当たり前ですが、誰かに甘えたり頼ったりしたくなるときはあります。かわい子ぶりたくなるときもあるでしょう。
「男なんだからしっかり稼いでほしい!」「愚痴なんて言わないでほしい」と男性に強さ、男らしさを要求しすぎることは、自分自身にも「女なんだから〇〇しないといけない」とプレッシャーをかけることにもつながります。
男女ともに、自分と相手の中にある男性性・女性性を認めることができたとき、より自分らしく自由に生きられるのではないでしょうか。
今回ご紹介した本
『女装して、一年間暮らしてみました。』
著者:クリスチャン・ザイデル
翻訳:長谷川圭
出版社:サンマーク出版
【バックナンバー】女性を幸せにする本
・無償の家事労働を担うのは9割女性。貧困・タダ働きはいつまで続く?・後悔?安堵?「子供を産まない選択」をした女性の本音
・裸の写真を撮るリスクを知ろう。リベンジポルノ加害者の心理とは?
・「やる気が出ない」「先延ばしにしちゃう」人が目標を達成する方法
・【出産の商品化】他人のために妊娠・出産する代理出産はアリ?
・心理学者が勧める「ダイエットせずに痩せる方法」が納得感しかない

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今来 今
(フリーライター)
神戸出身。編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。
twitter@imakitakon
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