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【小説#11】理想どおりのはずが…彼の疑惑行動の見抜き方

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~

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前回のあらすじ:女の涙は有効。それ自体は嫌いではあるけれど理解していた。ふいに流れた涙に、遥も哲也も困惑しながらも、それをキッカケにもう一度対話の橋を渡すのだった。そして哲也は遥に1つの提案をする。「チケットを売って、それを証明する」意外な提案だが、いわくつきの場所を忘れるにはもってこい。なのか……。

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第11話:理想どおりのはずが…彼の疑惑行動の見抜き方

新宿の街が、今日はなんだかせわしない。

遥は早足に人の間をすり抜けながら、それは自分が急いでいるせいだなと思い、少し苦笑し待ち合わせ場所へと向かう。

こんな日に残業が押した自分を呪いながら、指定の本屋に到着する。すでに時計は午後8時を数分すぎているのに、哲也の姿はない。


「先に着きそうって言ってたのに」


ボヤきながらも、遥はなんとなく時間つぶしに平積みになった本を眺め始める。


「そういえば最近、小説を読んでないな」


『話題沸騰!映画化決定!』というポップの下に置かれた小説を手に取り、パラパラとページをめくるが、文字が意味をなして入ってこない。


(哲也はいつ来るのかな)

(チケット、本当に売ってくれるのかな)

(やっぱ売る必要なかったんじゃないかな)

目が紙の上の文字を追いかけるほど、頭の中のではくすんだ想いが生まれては弾け、また生まれては弾け続ける。


「おまたせ!何読んでるの?」


哲也がポンと肩を叩き、ハッとして本を閉じる。


「小説? あーそれ映画の予告見たよ! そんなん好きなんだ」


“そんなん”と言われ、遥は初めて自分が手にした小説が、10代向けの人気ファンタジー作品であったことに気づく。


「別にそういうわけじゃないけど、暇つぶし」


恥ずかしくなって本を勢いよく戻し、山の形が少し歪む。


「俺あんま映画って興味ないんだよね。時々子どもに連れてけって言われるけど」


サラリと出る“子ども”という単語に一瞬引きつり、哲也が映画館に座っているところが、まるで映像のように浮かんでくる。

前方中央の席に座る哲也。右隣には細身な女の子がポップコーンを食べ、スクリーンを見つめている。時折左を向き、哲也に何か合図を送る。愛らしい格好の顔だけ、ぼんやり暗いままわからない。


リアルな妄想を意識的に戻し、遥はとりあえず前へと一歩を踏み出す。


「そんなことより、チケット、売りに行くんだよね?」


「それなんだけどさー」


哲也は立ち止まり、カバンから現金の入った封筒を取り出して見せる。


「チケット屋8時までだったから、先に行って換金してきたよ」


封筒の中を見ると、お札が数枚と小銭が少し。たしかにチケット代とは相違なさそうな金額がある。


「え、一緒に行くって約束は?」


「行きたかったけど、調べたら8時で閉まるみたいだったから。今日売りたかったし」


「……そうなんだ。ちなみにレシートは?」


金券を売却したときには、換金証明としてのレシートが発行されるはず。浅い知識で突っ込むと、彼は困ったようにポッケの中をゴソゴソと探り、大きめなポーズで天をあおいでみせる。


「レシート捨てちゃったかも! ごめん」


「えーそれじゃあ本当に売ったか、分かんなくない?」


不満が思わず口をつき、「ヤバっ」と遥は肩をすくめるも、哲也の顔色はみるみる曇っていく。


「俺のこと、信用できないってこと?」


「ごめんごめん。冗談に決まってるじゃん! あたしも不安になっちゃっただけなの」


ありったけの謝罪の言葉を連呼し、口角を無理やり上に引き上げてニンマリ笑ってみせる。


「とりあえず、ご飯行こうよ!美味しいもの食べに行くんでしょー」


「……ああ」


遥は必死で濁った空気を払い除け、また歩きだす。

哲也の手を握って指を絡めると、まるで知らない人の手のように、ソレは妙に固くぎこちなく、冷たい。

あったまれあったまれ

遥は心の中で念じながら、固くなった手を必死に握り返し、気まずい空気から逃れようとする。

ふと顔をあげると、どこから飛んできたのか、暖かな新宿の夜に、桜の花びららしきものが舞っているのが見えた。





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■恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~バックナンバー

第6話:思いつきのデートは地獄確定?


第7話:やっかいな男同士のプライドと浮気の言い訳


第8話:彼のついたうその真実に感情の爆発がとまらない


第9話:彼の「愛してる」は噓?本当?二番手の恋


第10話:これが本当の男の誠意?ケンカの元の処理方法


  • おおしまりえ(恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)

    水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。

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