エンタメ

【小説#7】やっかいな男同士のプライドと浮気の言い訳

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~

≪ 先に前回を読む

前回のあらすじ:合コンの印象とは異なり、意外とイイ奴っぽい正典に、気持ちを少し許し始める遥。しかしだんだんとお酒が回ると、男の本性が見えてくる。自分のしていることが恐ろしくなった遥は、たまたま近くにいた哲也にSOSを出す。なんとか正典を駅まで送り、別れの挨拶をしたそのとき、タイミング悪く哲也と鉢合わせをしてしまう。

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第7話 やっかいな男同士のプライドと浮気の言い訳

沈黙という怒りが何より恐ろしい。

遥と哲也は向かい合って座ったまま、携帯をいじったりうつむいたりしながら、くつろいでいる素振りの中でキッカケを探していた。

火にかけていたやかんがピューっと吹き出し、遥はここぞとばかりに腰をあけ、キッチンへと避難する。哲也はその姿を目で追うでもなく、うつむいたままだ。

2人を流れる空気は、いわゆる“修羅場”という奴なのか。遥はお茶を入れながらどうこの場を修復したらいいか思考を巡らせていた。


「あたしは何も悪いことはしていない。むしろ悪いのは哲也のほうだ」


責めようと思えばいくらでも弁解の言葉も理論だった説明も浮かぶのに、行動に起こせないのは、やっぱりそこに愛があるからかもしれない。


正典との別れ際、運悪く哲也と鉢合わせしたけれど、彼はいたって紳士的かつ、きちんと立場を主張して場を収めてきた。


「はじめまして。“遥の”同僚の後藤です」


あくまでも礼儀正しく愛想よく。そしてほんの少しだけ高圧的に立場を主張する。哲也の態度からは、男の闘争心のようなものがヒリヒリ感じ取れた。

察しのいい正典も、曲がった背筋をシャンと伸ばして挨拶に応じる。


「なんだ、遥ちゃん、やっぱり彼氏いるんじゃん!」

「こんな現場ですみません。富山といいます。心配させるようなタイミングですが」


正典はいつもどおりの万能な笑顔で、手早くポッケから会社の名刺を差し出す。

身分をキッチリさせることで、怪しい男でも怪しい関係でもないことを証明する上手さに、過去にも似たような現場があったのではないかと、遥は正典のバックグラウンドを想像する。


「いやいや、全然疑ってないですよ。むしろ俺の方こそ気を使わせてしまって申し訳ない」

哲也も表情を和らげるが、遥とは目を合わせない。そのギャップと、あくまでも「彼氏」という立場を守り続けた彼のプライドに、遥は恐ろしさと同時に笑いがこみ上げる感覚があった。



いつもよりお茶を丁寧に入れながら、1時間ほど前の出来事を振り返り、哲也の本心がどこにあるのか想像していた。嘘をついて遊園地のチケットを隠していた彼。第三者の前で彼氏という立場を示した彼。どちらも同じ彼なら、心はどこにあるのだろう。


天秤にかけながら、彼の前に淹れたての紅茶を置く。「ありがとう」と小さくつぶやくと、哲也はカップを手に取りゆっくりと口をつける。

暖かさが2人の体をめぐると同時に、硬直した空気が動き始める。


「あのさ、さっきの男だけど…」


「うん。だまってデートしたのは、ごめん」


一度動かしたら、言葉が勝手に口をついて出てくる。


「ああ……」


「本当に、彼とはやましい事はないから」


「………」


やましい事とは、セックスなのかキスなのか、それとも好意なのか。言葉を発しながら、定義が曖昧だなと遥は自分の発言に思わず突っ込んでしまう。


一瞬笑いがこぼれそうになり、ギュッと口を結んで哲也の顔色をうかがうと、久しぶりに彼の茶色くスキのない目が飛び込んでくる。


「俺さ、立場上エラそうなことは言えないけど、やっぱり遥が他の男とデートしているのは、いい気分では見られない」


「……そんなの、ずるい」


またしても熟考するまえに言葉が漏れてしまう。


独占できる立場にはないけど、どこかに行かれると不愉快なんて、どうしろってこと?

攻撃的な言葉を喉元で飲み込み、遥は一呼吸し心を決めて目を見返す。


「うん。だまってデートしたのは、ごめん」

「デートの事は本当にごめん。誘われて、ちょっと色々あって気持ちが揺らいでたから行くことにした。でも本当に、疑われるようなことは何もないから」


「……色々って、何?」


「それは……」


じっとりと湧く手汗をふきとり、遥は心の中で「もう知らない」と自分を奮い立たせる。


「それはね、哲也があたしに嘘をついてるって分かったからだよ」






NEXT ≫ 第8話:彼のついたうその真実に感情の爆発がとまらない




■恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~バックナンバー

第1話:行きたくない合コン!そこで待っていた地獄の時間


第2話:「不倫やめて」女友達のおせっかいは聞き入れるべき?


第3話:4年彼氏ナシ女と不倫女子!どちらが幸せで充実した人生か


第4話:不倫は普通の恋愛と変わらない!罪悪感ないけど何か問題ある?


第5話:不倫の疑心暗鬼は、他の男で解消するもの


第6話:思いつきのデートは地獄確定?


  • おおしまりえ(恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)

    水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。

女子力アップ

編集部ピックアップ

女子カレとは?

今週のお悩みQ&A

広告掲載について

Facebook

Twitter

ページTOPへ