恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~

【小説#91】「ねえ、夢ってなに?」本音で彼に問いかけると意外な答えが…

  • 更新日:2019/06/25

≪ 先に前回を読む

前回のあらすじ:空腹をおさえながら、夏美は”自分の夢”というものを考えていた。小さい頃は漠然と色々湧いていたものの、オトナになると希望の仕事に着くこと、そしてお嫁さんという夢があったことに気づく。 結婚に対して“夢”と“ねばならない”を持っていたからこんなにこだわっていたんだ。 そんなずっと知っていたような、でも新たな発見のような気付きを得ながら、今度は弘の夢についても、改めて聞いていこうと決意するのだった。

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第91話:「ねえ、夢ってなに?」本音で彼に問いかけると意外な答えが…

本音で話すって、出来ているようで、実は全然出来ていない。

嫌われること、疎まれることを怖がって、無意識に“ワタシ”を、いつも押し殺してしまう。


「ねえ、ちょっと聞きたいことあるんだけど、今いい?」

夕食終わり。くつろぐ弘を前に、夏美はゆっくり自分の呼吸を整えてから話し出す。

「突然だけど、弘の夢ってなに?」

「え?何いきなり?」

「あのね、これから2人で北京に行くわけだけど、弘のその、将来の展望的なこととか、もう少し教えて欲しいなって思って。例えば今の会社にずっといたいなら、どうなりたいとか、あるのかなって……」

言いながらだんだんと語尾が小さくなる自分がわかる。「弘を信じろ」と、心の中で叫ぶ。


「なんだよソレ!どうしたの?夢とか、んー別にそんな壮大なことは無いけどお……」

言いながら彼は視線を外し、スマホをいじる。

弘が私から視線を外す時、それはウソをついているサインだ。そして今まで、そのサインを知りながらも、夏美は都合よく突っ込んだり見逃したりしていた。

「別に何言っても私は驚かないから、聞かせてよ!なになに?石油王にでもなる?」

「なんだそれ!……別にこれは夢っていうか憧れだけど……海外はやっぱり好きだからさ。その、なにか海外に関係する事業をやれたら、いいなとかは思ったりする」

第91話

どんどん小さくなる声の中で、“事業”という二文字はハッキリ聞き取ることができた。

「え?事業?起業ってこと?どんな事とか考えてるの?」

驚かないと言ったはずが、意外なフレーズに目が丸くなる。のんびりした彼からそんな野心的なキーワードが出るとは。

「……まあ、そうだね。もともと親も商売やってた人だし。ずっとサラリーマンとかは、漠然と違うかもしれないって思うくらいだけど」

「あれ、ご両親って会社員じゃないんだっけ?」

「うん、もともとは建築系の個人事務所だね。今は付き合いの長い会社に就職してるらしいけど」

「そう…だったんだ…っけ…」

長く付き合っているのに、まるで別人と話しているような錯覚を覚える。弘の夢、弘のルーツ、全部が想像通りではない気がして、ドキドキが高まる。

「じゃあ北京も夢の第一歩ってことなんだね。てっきり海外赴任の後の出世を狙ってるのかと思ってた」

「出世はするに越したことはないだろうけど、北京だけじゃなく海外に行くチャンスがあれば、これからも前向きに考えたいって気持ちはあるよ」

「へ、へえ……」


“日本にこれから先も住まないかもしれない”

その衝撃の大きさが、夏美をクラクラさせる。


確かに弘が大学の頃バックパックで世界中を回ったとかは聞いたことがある。でも、今は旅行も自分から行くタイプではなかったし、たまに海外に出張に行くくらいではあった。

どうして今さらそんな意識の高いことを言い出すのだろう。

「で、でも夢だから全部。あんまり具体性があるもんじゃないし」

弘は夏美の不安そうな顔を読んだのか、ヘラヘラしながらいつもの顔に戻り、お風呂入ろうかなと気まずそうに部屋を後にする。

夏美は話を聞けたという達成感と、想定していた以上の驚きに体の中が熱くなる感覚が残っていた。


NEXT ≫ 第92話:楽しそうな彼に比例する彼女の落ち込み。なぜ一緒に幸せを感じられないのか?



■連載を1話から読む

第1話:とにかく結婚したい!家族の輪から取り残されるのは、私が独身だから?



■恋愛パラドックス|バックナンバー

第86話:待ちわびたプロポーズに、反射的に答えられない心理とは…


第87話:「結婚することになった…でも」感じる不安はマリッジブルー?


第88話:プロポーズは嬉しいのに…日に日に不安が募る女の本心


第89話:聞かれて頭が真っ白に…「彼が望む幸せ」ってどこまで知ってる?


第90話:聞かれて頭が真っ白に…「彼が望む幸せ」ってどこまで知ってる?



▼前作の小説はコチラ!

第1話:行きたくない合コン!そこで待っていた地獄の時間



  • おおしまりえ (恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)

    水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。

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