
【乳がんなう#2】「死んじゃうかも」を間近に感じたとき、思ったこと
- 更新日:2019/04/11
- 公開日:2018/03/02
前回に引き続き、乳がん闘病中の装花デザイナー・関尚美さん(34)に、同じ中学校時代を過ごした同級生のコラムニストの私・東香名子(34)がお話を聞きました。病気が見つかったきっかけ、告知を受けて感じたこととは。
ぶっちゃけ、告知を受けたときはどんな気分?
東::私ら34歳。まだまだ人生これから。いきなりがんになるなんて私だったら卒倒すると思う。実際どうだった?
関::去年の夏、小林麻央さんの追悼番組を見ていて、自分の胸がふと気になってチェックしたの。そしたら、偶然しこりを見つけて「やばい」って思った。次の日、病院に行って何度か検査、そして改めて告知をされるわけだけど。やっぱり発見初日はすごく動揺したかな。
東::どれくらいで立ち直るの?
関::一般的に言うと告知を受けた患者は、ショック期・落ち込む期・立ち直る期に分かれるらしい。それを経て普通は1か月くらいで受け入れるみたいだけど、私はなんでか4日で受け入れ完了した!
東::早っ!
関::ね~(笑)。この異様に早い立ち直りは、夫のおかげかな。電話で「ごめん、癌だったかも」と初めて伝えたときのこと。そしたら「ん~、大丈夫だよ、虫歯みたいなもんだから」って言ったんだよ。「毎日歯を磨いていても、虫歯になったりする。がんだって一緒。治療すればいい」と言ってくれて、すごく励みになった。最初は「自分のせいだ、自分のせいだ」って頭の中ぐるぐるしてたけど、妙にスッキリして「オッケー、帰るわ」って(笑)。
東::名言だなあ。
関::愛犬と迎えに来てくれる夫がいて、慰めて一緒に泣いてくれる友人がいる。その事実にふと気づいて、まだ4日目だったけど、「私のためにこんなに泣いて、励まして、抱きしめてくれる人がいるって、超幸せじゃん!」って思ったら、「ま、いっか!」って思った。
東::がんを「ま、いっか」で受け入れたなんて。本当、強いよね。尊敬する。
関::病気についてたくさん情報を頂けたのも励みになったな。私ががんになったと話すと、みんな色々な助言をしてくれた。早く見つかれば怖くないこと、克服した人がたくさんいることも知った。私だけが悲劇のヒロインじゃないし、もっと難病の人もいる。それをたくさん知る機会になりました。
がんになっても、自分を責める必要はない
東::もし自分ががんになったら、尚美みたいに明るくいられるのか、すごく考えてしまう。「もっとこうしておけばよかった……」と自分を責めてしまいそう。
関::たしかに大きなショックだったし、私も自分を責めたよ。「あ~、ナオミだらしない生活してたからねって思われるかな」と思ったり。でもね、ストレスが最も良くないから、自分を責めないことが一番! その必要は全くない。もし何か気にかかることがあるなら、次の瞬間から改善すればいい。
東::君の明るさには、私の方が励まされる。
関::私のように前向き過ぎる発言をする患者を見て、不快に思う人もいるかもしれない。
でも私にもすごく甘やかして欲しい日や、くよくよする日があるよ。だからその日の体調とメンタルにあったものを、自分で選ぶのがいい。ポジティブになれない日は、無理して明るくする必要もないし、気持ちを切り替えたい日は、私のようなあっけらかんとした患者の姿を見ればいい。一つのことに固執しないのがいいかな。感情なんてワガママで自分勝手でいいって気づいたら、すごく楽になったよ!
「死んじゃうかも」を間近に感じたとき、思ったこと
――「がん=死」というイメージは根強くありますよね。著名人でも若くして亡くなられている方はたくさんいます。
東::私も、最初に聞いた時は、尚美が死んじゃうと思って、生々しい焦りや悲しみがあったよ。当事者としては、死を間近に感じて、どうなの?
関::実は、私の母も25年ほど難病と闘っているんです。母が発病したのは40歳くらいだったから、私もすぐに来ちゃうなと。だから私はやらなきゃいけないことより、なるべくやりたいことを優先して生きてきました。それもあって、今回の適応も早かったのかもしれない。生と死と病について、かれこれ25年ほど考えてきたからね。現時点での私は長生きが第一目標じゃない。「今日、どれだけ楽しいか」が第一目標。
東::なるほど、今を楽しむと!
関::そもそも私、あんまり生まれてきたくなかったんですよ……。
東::なになに、なんだって?
関::いや、そんな深い話ではないけれど。単純に、大変じゃん、生きるのって! 働かなくちゃいけないし、家賃高いし、ついつい自分が掲げちゃう目標に対して頑張らなきゃいけないし。生活って、毎日色々と疲れるじゃん。「生きること」は、本当に大変な作業だよ。
東::なんとも新しすぎる考え方だわ(笑)。
関::命を軽んじているとか、そういう次元の話ではなくて。もちろん、今の親のもとに生まれてきた事については、ラッキーだったと思ってる。でも存在するより、そもそもの「無」でいたほうが、きっと穏やかだったんだろうなぁなんて。それでも誕生したからには「生きる」を選択しているし、それなら、自分のために満足度を上げてあげよう! って思ってるんだ。
東::満足度を上げるって、自分をあやすような感じ? がんばれ自分! みたいな。
関::そう。「よしよし、よく生きてる。良かったね~」って。自分の中に、いつも自分を客観視する他人みたいな自分がいる。
東::病気が分かった時、もう一人の自分はどんな言葉をかけた?
関::40歳くらいで母が病気になったから、自分もなるかなという恐怖心はずっとあった。だから「あ、来たか」という感じ。「本当に死んじゃうかも」を間近に感じたときは……、「私は、それでも平気」と思ったかな。意外と怖くなかった。小さいときから感じてた「いつか来るかも」という想像のほうが怖かった気がする。この感情は、自分的に実は嬉しかった。日々を楽しく生きて、満足していたことが具体的に分かったから。ある意味、幸せすら感じたよ。
東::「時間がない、どうしよう!」みたいな焦りはなかった?
関::焦って等身大の自分じゃないことは好きではないの。同じくものづくりをする夫との共通する姿勢が「着実に一個ずつ身につける」こと。目標や大きなビジョンはあるけれど、現時点で、今の私たちが無理してない場所にいること。それがすごく気に入ってる。
東::それが悲壮感のない理由なのかもしれないね。
関::私はもしかしたら皆より命が短いかもしれないけど、こんなふうに色んな人に会ってお話したり、大好きな人と「好き」と伝えあう時間や、子どもみたいに親に甘える時間をこの年になって再びもらえた。病気は必ずしも悲しみばかりでないと、改めて感じたよ。
NEXT:乳がんなう#3 ところで手術したの?君のおっぱい、今どうなってんのへ続く
関尚美(装花デザイナー)
1983年生まれ。16歳からフラワーデザインに触れ、日本フラワーデザイン専門学校を卒業。日比谷花壇勤務、マミフラワーデザインスクール デザインルーム勤務を経て、現在はフリーランスで活動中。フラワーデザインで得た技術を用い生花のみならずあらゆる素材で空間装飾、スタイリング、ネイルデザイン等制作活動をしている。
東香名子(コラムニスト)
1983年生まれ。東洋大学大学院修了。編集プロダクション、外資系金融、女性サイト編集長を経て現在フリー。独身女性のリアルな視点から書くコラムが好評を博す。テレビ、ラジオ、雑誌などメディア出演を精力的にこなす。著作に「100倍クリックされる Webライティング実践テク60」(パルコ出版)。趣味は鉄道一人旅。
撮影協力:GOOD MORNING CAFE 神田錦町店
URL:http://www.gmc-nishiki.com/

Address:東京都千代田区 神田錦町3-20 錦町トラッドスクエア1F
都営三田線、都営新宿線、地下鉄半蔵門線 神保町駅 A9出口より徒歩3分
地下鉄丸の内線、JR総武線、中央線 御茶ノ水駅より徒歩10分
地下鉄東西線 竹橋駅 3b出口より徒歩7分
#乳がんなう バックナンバー
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東 香名子
(恋愛コラムニスト)
ひとり妊活実践者。独身女性の本音に切り込み、これまで1000本以上のコラムを執筆。
著書に「100倍クリックされる超Webライティング実践テク60」(パルコ出版)。趣味は鉄道。
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