
コロナ禍の今こそ、知っておきたい漢方。女性の不調や未病対策が得意です!
- 更新日:2020/09/27
- 公開日:2020/09/27
コロナ禍で、心身の不調に敏感になっている人が増えています。こんなときだからこそ、漢方(東洋医学)を見直してみませんか? 検査では、“異常なし”でも、漢方では、未病(健康と病気との間のグレーゾーン)と捉えて、治療対象になります。体調が不安、何か支えになるものが欲しい、と思ったら、心と体が“中庸(偏らず、バランスよく真ん中にいる状態)”でなくなっているかも。女性は、生理周期による体調のゆらぎがあります。今こそ、いざというとき助けてくれる、漢方について、知っておきましょう。
漢方は細菌やウイルスに対抗できる体をつくる

漢方(東洋医学)は、西洋医学のように細菌やウイルスを直接叩くことを目的にするのではなく、自然治癒力、免疫力を引き出して、細菌やウイルスに対抗できる体をつくることを目的のひとつにしています。
たとえば、インフルエンザが流行しているときに、漢方薬「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」を処方されることがあります。
「補中益気湯」には、免疫力を高める朝鮮人参や黄耆(おうぎ)という生薬が含まれています。
これらは、特定のウイルスを消滅させるわけではありませんが、体内の免疫力を高めることで、ウイルスを跳ね除け、感染リスクを下げるという特徴があるのです。
漢方薬は、複数の生薬の組み合わせのハーモニー
漢方薬に使われている生薬は、自然界にある植物や鉱石といった素材です。生薬には、それぞれの特性と、作用、副作用があります。
漢方薬は、複数の生薬の組み合わせです。生薬ひとつだけでは、漢方薬とは言いません。ですから、アガリクス、ドクダミ、ショウガなどの1種類だけの生薬は、漢方薬とは言わないのです。
たとえば「葛根湯(かっこんとう)」は、葛根、麻黄、大棗、甘草、桂皮、生姜、芍薬の7つの生薬で構成されています。
桂皮は、シナモンのことですが、それ単体では、薬ではありません。生姜も同様です。
それぞれの配合量(ℊ数)は医療用(医師処方)か、一般用(市販薬)か、また製薬会社によって多少の違いがありますが、生薬の組み合わせは同じです。
音楽でたとえれば、生薬は音符。音符を組み合わせたメロディーが漢方薬です。まさに、生薬の組み合わせの妙で、漢方薬のハーモニーが出来上がっているのです。
漢方薬は、作用を強める生薬、毒性や副作用を弱める生薬など、複数が配合されることで、薬効が高まるようにできています。
この配合の法則は、2千年以上の経験医学を通じて培われてきたもので、日本人の体質、気候、風土に合った日本独自の医療です。
漢方は、女性の不調改善が得意分野です。女性ホルモンのバランスのゆらぎによって左右され、体調コントロールが難しい生理前の時期や産後、更年期の女性の体と心を下支えすることもできます。
病気でなくても、漢方薬を飲んでいい!

「漢方は、長く飲まないと効かない」。そんなイメージがあるかもしれません。漢方薬は、2~10種類の生薬を配合してつくられていますが、漢方薬には、「上薬」「中薬」「下薬」と3段階あります。
長く飲んで、穏やかに体質改善をするのは、「上薬」に分類される漢方薬です。これは、病気になる前の未病の段階で飲んでいいお薬です。
一方、「下薬」は作用が強く、即効性があり、頓服薬としても使われる漢方薬です。ウイルス性の風邪の治療としても、昔から使われています。
また、メンタル症状にも漢方薬はよく使われています。「上薬」「中薬」「下薬」とも、メンタル症状に処方されています。
うつ病まではいかない、気分の落ち込みやイライラ、不安、不眠など、女性が感じやすいメンタルのケアには、漢方薬が良い適応になります。
漢方が目指すのは“中庸”です!
漢方(東洋医学)が目指しているのは、どちらにも偏らずバランスの良い“中庸(ちゅうよう)”の状態です。
体力があって、暑がりで赤ら顔、胃腸が強く、便秘気味、風邪をひくと高熱が出るが回復も早い、こんなタイプは「実証(じっしょう)」です。
逆に、体力や抵抗力がなく、やせ型、または水太りで、顔が青白く、下痢気味で寒がりの人は、「虚証(きょしょう)」タイプです。
どちらが有利ということではなく、漢方では心身全体の調和を図り、どちらかに傾いた、体の中のアンバランスを整え、“中庸”を目指すことを大切にします。
また、漢方では、薬だけではなく、日常生活の「養生」も大切にします。そのため、自分の傾いた状態を把握しておくことも大切と考えます。
漢方は、中国、韓国のものとは違う日本オリジナル
日本の漢方は、7世紀ころ中国から伝来しました。江戸時代には、日本の環境や日本人の体質に適した日本独自の漢方医学の体系が出来上がりました。
「漢方」は、オランダ医学=「蘭方」と区別するためにできた言葉です。さらに、明治以降は、「西洋医学」に対して、「東洋医学」という言葉が使われ始めました。
また、中国の「中医学」や韓国の「韓方」を扱うのは、西洋医学の医師とは異なります。日本の漢方は、西洋医学を学んだ医師が行います。日本独自の医学です。
治療は、病名ではなく「証」で決める

漢方(東洋医学)では、治療方針を決めるために、診察で診るのが「証(しょう)」(体質、タイプ)です。
「証」を診る指標には、「陰(いん)と陽(よう)」「虚(きょ)と実(じつ)」などがあります。
新陳代謝が低下し、冷えた状態を「陰」。反対に、新陳代謝が活発で、熱感がある状態を「陽」と考えます。
また、「虚証(きょしょう)」は、体力がなく胃腸が弱く、抵抗力がないタイプです。逆に、「実証(じっしょう)」は、気力があり、抵抗力が強いタイプです。
ほかにも、心身の状態を「気・血・水」という概念でも把握します。
このように漢方では、病名や検査結果で治療するのではなく、その人の心身の状態を漢方特有の診察で見極め、いくつもの指標で、総合的に判断して治療します。病を診るのではなく、人を診る医学なのです。
気分の落ち込み、イライラ、不眠、のどの詰まりなどのメンタル症状にも

漢方では、軽いうつ症状は、「気」の異常と考えます。その人の「証」(体質、タイプ)や症状に応じて適した漢方薬が処方されます。
精神科や心療内科にかかるほどでもない、気分の落ち込み、イライラ、倦怠感、不眠、のどの詰まりなどの心の不調には、漢方薬がよく効きます。
東洋医学(漢方)では、軽いメンタル症状を「気」の異常と考えます。
漠然とした不安やのどの違和感は、気が滞っている「気滞(きたい)」で、代表的な漢方薬は、「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」「香蘇散(こうそさん)」です。
気力低下、全身の倦怠感、不眠は、気のエネルギー不足で「気虚(ききょ)」ととらえ、「加味帰脾湯(かみきひとう)」「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」などが代表的です。
ほかにも、イライラや気分変調なタイプには、「加味逍遥散(かみしょうようさん)」。神経の高ぶり、精神不安などには「抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)」なども女性によく処方されます。
コロナ禍で、体や心に不調を感じる人もいるでしょう。そんなときは、漢方専門医に相談してみてはいかがでしょうか?
漢方専門医の探し方
「一般社団法人日本東洋医学会」漢方専門医検索で全国の各診療科の専門医が検索できます。
▼バックナンバー
・お尻がかゆい!見えない場所だから不安……どんな病気?病院はどこに行けば?
・コロナ太り!? ウォーキングしても体重が減らない!どうすれば?
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増田 美加
(女性医療ジャーナリスト)
女性誌や女性専門サイトで、女性の医療&健康・美容現場を取材&執筆。2006年に乳がんを経験。検診の啓発、更年期への対策、予防医学の視点より、健康で美しくイキイキと生きるためのエイジングケア講演を行う。
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