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結婚式と指輪の費用をひとりで出した女友達に凄いねって言えなかった

女性を幸せにする本

「見て、これ婚約指輪。自分でデザインしたんだ。可愛いでしょ?」

小学校からの友人・冴子は、そう言いながら、左手薬指にキラキラ光る指輪を嬉しそうに見せてくれました。


結婚式と指輪の費用をひとりで負担する女性は「かわいそう」?

ウエディングドレスを選ぶ女性

彼女は女性服のデザイナーで、職業柄、常に最先端の服に身を包んだオシャレさん。そんな彼女がデザインした指輪は、これまでに見たことのないユニークなデザインでありながら、洗練されていて、さすがだなと感心させられるものでした。


「可愛い!さすが冴子」と指輪を褒めはしましたが、当時の私には、若干解せない思いがありました。

冴子は、結婚式の費用と婚約指輪・結婚指輪の費用を全て自分で支払っており、彼氏は1円も出していないというのです。


冴子が結婚を決めたのは彼女が28歳になったばかりのとき。相手は、大学時代から10年弱付き合っている彼氏でした。新卒で大手の銀行に入行した彼は、仕事が肌に合わず2年で退職。そのあとは、派遣で事務の仕事を細々としているため、まったく貯金が無い状態だといいます。


一方、冴子は実家暮らしで高給取り、FXなどの財テクも得意だったため、28歳で1千万弱の貯金があり、「お金はある方が出せばいい」と考えて、結婚式にまつわる費用を自分で全て負担することに決めたというのです。


私はその話を聞いた時、「なんだか冴子が損をしている気がする」と思ってしまいました。もっというと「かわいそう」とどこかで思ってしまっていたような気がします。


なんで私はこんな風に感じてしまったのでしょうか。


これが男女逆だったら、かわいそうなんて思わなかったでしょう。男性に稼ぎがあり、結婚にかかる初期費用を全額負担する、という形の結婚なら、「頼り甲斐がある彼でいいな」と思っていたはずで、「かわいそう」だなんて絶対に感じていなかったと思うのです。


残念ながら私の中には、「稼げる男性の経済力には価値があり、女性が稼げることにはそんなに価値はない」「男性の方が稼いでいる家庭の方が幸せ」という価値観が残っていたのだと思います。口では、「稼げる方が稼いだらいい」「夫婦の形は千差万別で、どれが正しいということはない」と言いながら、旧態依然の価値観を引きずっている自分に気がつき、がっかりしました。


そんな、自分の中に残る偏見に気がつかせてくれたのは、山崎ナオコーラさんの小説『可愛い世の中』でした。


経済力のない男性と結婚する32歳の女性の胸のうちを描いた小説『可愛い世の中』

『可愛い世の中』の主人公は、32歳の地味で冴えない女性・豆子。「一生独身かもしれない。そのためには、自分ひとりで住む家が必要」だと考えて、コツコツ貯金をしていた豆子は、偶然、心優しく自分を無条件に愛してくれる男性・鯛造と出会い、ライフプランを変更し、結婚を決意します。


周りの友人たちの影響から、「結婚するとなれば、結婚式をするのは当然」だと考えていた豆子でしたが、マッサージ店で働く鯛造の貯金はわずか4万円。「お金はある方が出せばいい」と考え、親族の顔合わせや結婚式にかかる費用などを全額自分で支払うことを決意します。


豆子は、親族や友人に「大黒柱になります。鯛蔵さんを食いっぱぐれさせません」という表明を結婚式で行いたいと考えており、「経済力」が自分のひとつの魅力であると信じていたのです。そのため、父親への手紙などの余興をカットし、華やかなウエディングドレスではなくシンプルなスーツを着用し、謝辞などは夫ではなく自分で行うことは、豆子にとっては合理的なことでした。


けれど、結婚式の準備を進めていく中で、女性である自分は、経済力を見せて安心させることよりも、着飾ってにこにこしていることが求められていることに気がつきます。


「男の人だったら、『オレが主に稼ぎます。でもにこにこしたり、気遣いしたりは、あまり得意ではありません』は、逆に格好いいイメージだよね? なんで属性が女ってだけで、それがマイナスイメージに変わっちゃうんだろう。(略)にこにこしたり、優しそうに見せたりっていうのができなかったら、他のところでどれだけ頑張っても、あっという間にアウトな新婦になるわけだね」(P.103)


豆子は、周囲から求められている女性らしさと、自分が目指す場所のギャップに悩まされ、ときには流されながらも、仕事・結婚生活・出産について、自分なりの答えを見つけだします。


35歳より前に子供を産んで、「ここにいていいよ」と社会から言われたかった。そんな思いで子供を欲しがるなんて、本当におかしなことだった。あと、2、3年は仕事に全力を注ごう。そのあとのタイミングで妊活して、授かれなかったら、諦めたい。とにかく、自分で決めた、という実感があればいい。(略)自分で決めた。それで子供を持てる可能性が小さく……、いや、可能性がゼロになったとしても、すべて自分のせいだ。あとになって人のせいにしない覚悟があれば、どんな決断だってしていいのだ。(P.174)


さいごに

幸せな二人

『可愛い世の中』を読んで、すぐに冴子のことを思い出しました。『可愛い世の中』の主人公との共通点は、自分より経済力のない男性と結婚し、結婚式にまつわる費用を自分で負担した、という点です。


なんであのとき、かわいそうだなんて思ってしまったんだろう。「それだけの経済力があるなんて凄い。かっこいい」と、なぜ思えなかったのだろう。


『可愛い世の中』は、「男女関係はこうあるべき」という自分の中の偏見に気がつかせ、立ち止まらせてくれる一作でした。



今回ご紹介した本

『可愛い世の中』

著者:山崎ナオコーラ

出版社:講談社




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  • 今来 今(フリーライター)

    神戸出身。編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。

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