
不倫は人を不幸にする。そう思っていた時期が私にもありました。が、どうやら現実はもう少し柔軟なようです。今だから書けることですが、結婚してからのとある期間、私は「公認不倫」制度を導入していました。
公認不倫とは、結婚相手に「外で彼氏・彼女作ってもいいよ」と認めることで、アメリカでは1970年代ごろから「オープン・リレーションシップ」という名前で知られています。Facebookの恋愛ステータスで「オープンな関係」という選択肢がありますが、こちらがそのオープン・リレーションシップ。
■日本では公認不倫の認知度は低い

日本での知名度は低いでしょうし、いまだに公で「私たちって、オープン・リレーションシップなんだ」とはいいがたい雰囲気もあるでしょう。特に女性の不倫は公認だろうが非公認だろうがバッシングされやすいと、芸能界のスキャンダルを見るだけでわかります。
私もリベラルを標ぼうしながら矛盾しているなという自覚はあるのですが、叔父がfacebookで実際に「オープンな関係」と表記したときには度肝を抜かれました。もう数年はそのままなのですが「これって叔母の同意を取られた上での行動ですか? それとも『オープンな関係』が何を意味するか知らずに設定されました?」と未だに本人へ突っ込めていません。
そして私自身も公認不倫制度を導入していたとき、ごく一部の友人を除いてそのことは秘密にしていました。夫婦仲が悪くなったのかと勘繰られるのが面倒だったのです。ただ、その当時、夫に彼女ができたとしても私は傷つかなかったでしょう。
ですから不倫は人を不幸にするとは限らない、そう思います。
■誰かを独占するなら、きっと誰かを傷つける

不倫の話からさらに主語を広げます。
この世には「誰も傷つけない恋愛」なんて存在しないのではないでしょうか。
たとえば、あなたがとある男性と付き合うとしましょう。そうすれば彼は(基本的に)他の誰とも付き合えません。基本的に、恋愛って排他的です。彼へ片思いする人は叶わぬ恋に傷つきます。誰かを独占した時点で、もはや人を傷つけかねないのです。
本来なら排他性のルール違反に当たる、不倫ですらそうです。あなたが既婚者の彼を作るなら、きっと彼はそのほかに彼女を作れない。不倫できるくらいモテる彼を、あなたは独占しているのです。たとえ奥様との仲が完全に冷えきっていようが、あなたは誰かのチャンスを奪うことで彼を独占している。
■止められないなら、覚悟して走る

だったら「特別な誰か」を作らず、平穏に暮らしたほうがいいんじゃないか。実際、仏教では愛を執着の一種として、忌むべき対象にしています。誰かを傷つけ、自分も苦しむくらいなら愛さないほうがいい。
なんて言っても、止められないのが恋じゃないでしょうか。傷つけてもいい、傷つけられてもいいと思い込めてしまう暴走こそが恋愛感情です。「もういい年なんだから」と自分をなだめてどうにかなるものではありません。
仕事でたまにシニア層へのヒアリングも行いますが、「老人ホームでお姫様のようにモテる方がいて、男性入居者同士の争いが絶えない」「70代で不倫。双方に孫までいるが、財産を相手へ譲りたいので家族が大揉め」なんて話題でいっぱいです。年の功すら、恋の前には無力です。
ならば、覚悟を決めて恋するのが大人ってもんじゃないでしょうか。止まれなかったら仕方ない。愛した人が既婚者かもしれないし、そのときは自分が結婚しているかもしれない。けれどせめて、傷つく人を最小限に減らす努力はすること。
そして誰かを傷つけてしまったときの尻ぬぐいは、あらかじめ考えておくこと。
いざ何かあっても「彼のほうから誘ってきたんです。私は騙されたんです」と醜い言い訳をしない覚悟。それだけは持ちたいなあ、と思っています。
▼著者・トイアンナさんの人気コラム▼
・この年になるといい男は結婚してるじゃないですか・好きなタイプが結婚に向かないからって「妥協」しなきゃだめなの?
・彼が転勤するならついていくのが「正解」なの?
・毎晩遅くまで頑張ってると何で「かわいそう」になるの?
・新しい彼氏ができたからって結婚への道のりを描かないでほしい
・この彼と別れたら次はないかも、っていう心配をしたくない
-
-
トイアンナ
外資系企業で消費者インタビューを経験後ライターとして独立。500人超のヒアリングから女子の楽しさも悲しさもぎゅっと詰め込んで文章にしています。現在はアラサーの恋愛とキャリアを中心に多くの媒体で連載中。
公式サイト:トイアンナのぐだぐだ