
「彼氏からのプロポーズを待つ」が危険すぎるワケ
- 更新日:2019/10/11
- 公開日:2019/10/11
現代日本では、プロポーズをするのは男性と相場が決まっていますよね。女性がする場合もありますが、少数派であるため、逆プロポーズ、なんて言われたりします。
しかし私は、「プロポーズは男性がするもの」という常識は、女性にとって損でしかない、と考えています。
「プロポーズは男性がするもの」という常識はどのように生まれたか

そもそも、なぜ今現在「プロポーズは(基本的には)男性がするもの」という常識が日本に根付いているのでしょうか?
この歴史は、平安時代まで遡ります。日本では、平安時代末期から鎌倉時代にかけて家父長制が始まり、鎌倉時代には戸籍制度などを整備することによって制度化されました。家父長制とは、「家父長権をもつ男子が家族を統制・支配する家族形態」であり、「家父長制家族においては、長男が財産と家族に対する統率権を持ち、絶対的な権威になるため、他の家族は人格的に服従する」という制度のことです。(※1)
簡単に言うと、「家で一番エラいのは、父親、次が長男で、家父長となる。そのほかの家族は家父長に従うべし」というスタイルが家父長制です。
家父長制のもとでは、家族のなかでエラくて決定権を持つのは男、と決まっているため、女性が家庭で絶対的権力者になることはありません。家父長の権力は、家庭内のご飯のおかずの多さや、お風呂に入る順番から、財産の分配にまでおよびます。もちろん結婚も例外ではありません。
こういった状況のもとで、女性が結婚するということは、「父親の権力下・庇護下を離れ、養ってくれる別の男性の権力下・庇護下に入ること」を意味しました。
「娘さんをください」という言葉は、こういった状況を端的に言い表しています。「女性は、父親から別の男に譲渡されるモノ」だったわけです。
女性はかつて、経済力を持つことができませんでしたから、結婚するかどうかの決定権は、経済的な負荷を背負うことになる男性の肩にかかっていました。仕事をして自立して生きていくという選択肢がない状態では、「誰かに選ばれて庇護してもらう」ほかには選択肢がなかったため、女性は、「選んで、プロポーズしてもらう」ため、「愛される」ために、男性を慰撫し、喜ばせるスキルを磨く必要があったのです。
「プロポーズは男性がするもの」という価値観は、女性の主体性を奪う

では、現在はどうでしょうか?
現在、女性はひとりで自活することが可能です。一生独身でも経済力があれば、困ることは少なくなりました。ただし、未だに「女性は男性から愛されなければならない」というイデオロギーや、「プロポーズは男性がするもの」という文化は残っています。
なぜでしょうか?
ひとつには、まだ男女が完全な平等を達していない、ことが挙げられるでしょう。正社員であっても、男性と女性の年収の差は、男女比で10:7と依然として開きがありますし、シングルマザーの貧困は顕著です。経済的に苦しい女性は、男性に選んでもらい結婚することによって生きていくことができる、という側面はまだあるため、強い立場にいる男性が結婚に対する決定権を握っている、というケースが多々あることは否定できません。
もうひとつは、単純に「メディアからの影響」が考えられます。世の中には、「彼氏からの素敵なプロポーズのシチュエーション」についての情報があふれています。そのため、経済的・精神的に対等な立場の男女であっても、「男がプロポーズをするもの」であり、「素敵なプロポーズを女性は望んでいる」という価値観を内面化しているケースが多いように思われます。生まれたときから浴びるように、「彼氏が素敵なプロポーズをして、女性が感涙する」というシチュエーションをテレビ・映画で観てきたら、それが、本当に自分が望んだものかどうかを考える以前に、「こういうものだ」と考えてしまっても不思議ではありません。
ただし、私個人としては、「プロポーズは男性がするもの」という常識は、百害あって一利なし、だと考えています。
なぜなら、「プロポーズは男性がするもの」という文化は、そもそもが「男性側に選ぶ権力が偏っていた自体の文化の名残」であり、こういった文化は、結婚という人生の変化の一大事において、女性は主体的に選ばず、受け身になるべきだ、という価値観を密かに強化するものだと思えるからです。
さいごに。女性は男性の意思とは無関係に、自分で選択できる存在

結婚したいと思ったとき、女性でも男性でも、その意思を相手に伝える権利があります。
女性だからという理由で、「男性が決めてくれること」を待つ必要は一切ありません。「女性から言うなんて恥」だと思うのは、「男性が決定権を持つべきで、女性は受け身であるべき。男性が決めて、女性が従うべき」という価値観に通じています。
誰かが決めてくれるのを待つことは、短期的には楽な道に思えるかもしれません。ですが、他人に自分の運命を委ねるということは、自分の力・決定権を手放すことであり、誰かに庇護され愛されなければ生き残れないかもしれない、とても危険な道です。
当たり前のことですが、女性は男性の意思とは無関係に、自分で選択できる存在です。長期的に見たら、「自分の主体性・選択権を発揮して、自分で選び取った道」が一番自由で楽しく、安全な道なのではないでしょうか。
▼バックナンバーはこちら
・母親の自己犠牲は「母性」があるから当たり前?・「女性の性欲」を「無いもの」にするのはやめよう
・セクハラなどの性暴力被害をなくすために、女性ができることは?
・「母親なんだから」「女は加齢で価値が下がる」呪いの言葉から自由に!
▼著者:今来さんの他連載はこちら
・妊活・お金・介護・美容…40歳までに知っておきたいことリスト・【連載】なんで子供が欲しいの?
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今来 今
(フリーライター)
神戸出身。編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。
twitter@imakitakon
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