ジェンダー

「女性には複数の相手とカラダの関係を持ちたいという欲はない」って本当?

  • 更新日:2019/07/05

「女性の体は子供を産めるようにできている。そのため、ひとりの男性を選んだら、ほかの男性を必要としない。一方男性は、精子をいくらでもバラまけるから、できるだけたくさんの女性とセックスしたいと思っている」。そんな言説があります。


こういった言説はしばしば、「だから、男が浮気をするのは仕方がないことなんだよ」「男性と女性の浮気は罪の重さが違うよね」「女性が体の浮気をすることってないでしょ。女性の浮気は心の浮気」という説を補強するために使われています。


でも、それって本当でしょうか? 「男性は浮気症で女性は貞淑」は真実でしょうか?


今回は、化学ジャーナリストのアンジェラ・サイニー著『科学の女性差別とたたかう: 脳科学から人類の進化史まで』(作品社)を参考に、「男性は浮気症で女性は貞淑」説の真偽について考えてみたいと思います。


「女性より男性の方が複数の相手とセックスすることに意欲的」を裏付ける有名な実験

セクシーな女性

「女性より男性の方が複数の相手とセックスすることに意欲的」だという説を裏付ける実験結果があります。代表的なものは以下のふたつでしょう。


1、フロリダ州立大学で行われた実験

ひとつめは、1978年にフロリダ州立大学で実施された実験です。

大学のキャンパスで、「あなたのことが気になっていました。とても魅力的だと思って」といきなり声をかけ、デートするか、自分のアパートに行くか、一緒に寝るか、の3つの選択を提示する、というものです。


結果は歴然としていて、男女どちらとも見知らぬ人とのデートに同意する確率は同じくらい高かったのですが、女性は誰ひとりとして一緒に寝ようとはしませんでした。一方、男性の四分の三は、知らない女性とのセックスに意欲的だったと言います。


2、ベイトマンによるショウジョウバエの実験

ふたつ目は、アンガス・ジョン・ベイトマンによって行われたキイロショウジョウバエを使った実験です。

ベイトマンは、三匹〜五匹の成虫の雌と雄を選び、繁殖行動を観察しました。結果は、雄は乱交型で相手を選ばなかったのに対し、雌は選り好みをし、ほとんど乱交をしなかった、というものでした。


「女性が複数の相手とセックスするのは一般的なこと」を裏付ける研究も多い

男女

上記の有名な実験に後押しされ、「男性は乱交型で相手を選ばず、かたや女性は非常に相手を吟味し、性的には受け身かつ貞淑だ」ということが真実かのように語られるようになっていったわけですが、実際には、「こういった理論に反旗をひるがえす研究結果はいくらでも存在する」と著者は指摘しています。


1、サルの研究

インドの避暑地マウント・アブで行われたサラ・ハーディによる研究では、雌の猿が一匹以上の雄と交尾することで得をする事実を明らかにしました。生まれた子の父親が誰かわからなくなってしまえば、雄たちが子殺しに走ることはない、というわけです。


2、ヒンバ族の研究

ナミビア北部で半遊牧生活を送っている畜産農業社会のヒンバ族では、女性も男性と同様に浮気は許容されているといいます。


前述のベイトマンの実験では、「雌が複数の雄と交尾することは、進化上なんら利益にならない。妊娠するには男がひとりいれば十分だから」と結論付けていました。ですが、ヒンバ族では、それは事実ではない、と研究者ブルック・スケルザは指摘し、「浮気による子供が何人かいることは、実際に子孫繁栄において総合的にはよい結果になった」と述べています。


また、性的自由度に男女差は見られなかったものの、女性の方が男性よりも、相手を選り好みする傾向があった、といいます。


3、フロリダ州立大学の実験結果を覆す実験

2013年、ドイツのヨハネス・グーテンベルク大学にて、有名なフロリダ州立大学の実験結果を覆す実験が行われました。


心理学者のアンドレアス・パラノブスキーは、女性は数々のもっともな理由(暴力にさらされる危険・簡単にナンパされることに対する社会的な汚名)から、見ず知らずの相手とセックスするのをためらうように社会的に仕向けられているのだろうと推測し、別のアプローチをとったのです。


実験では、被験者に「この実験は、相手探しの相性マッチングを探るもの」だと伝え、見知らぬ異性の写真を10人見せて、「全員があなたとデートに行くか、セックスを前提に会ってみたいと言っている」と伝えられました。


結果は、男性は全員がデートに行くことに同意し、少なくともひとりとはセックス することを承諾しました。一方女性は97%がデートに同意し、ほぼすべての女性が少なくともひとりの男性とのセックス に同意した、というものでした。


つまり、リスクのない環境であれば、見知らぬ人とのセックスに対する意欲は性差がほぼない、という結論が出たのです。


実験2と3から言えることは、「女性は男性よりも選り好みはするが、より貞淑だというわけではない」ということになります。


「女性は男性に比べて、浮気しない」という説の科学的根拠は弱い

浮気

今回は、男女の貞淑さに関する科学的な研究・実験結果を紹介しました。

「女性は男性と比べて、あまり浮気しない」「女性は複数の男性とセックス することに意欲的ではない」という説は、文化的・社会的に作られた幻想なのかもしれません。


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  • 今来 今 (フリーライター)

    神戸出身。編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。

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