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「女の方が賢いから、男を手のひらで転がした方がいい」の本当の意味は?

  • 更新日:2019/05/10

「女性の方が賢いんだから、男性をうまく手のひらで転がした方がいい」

「上手に立ててあげて。男なんて単純でバカな生き物だから」

といった、男女関係を円滑にするためのアドバイス、たまに聞きますよね。

一見、男性を貶めて、女性を上げている発言にも見えます。ですが、実際には、こういった発言は、「女性嫌悪だ」とフェミニストのイ・ミンギョンさんは指摘しています。


今回は、イ・ミンギョンさん著『私たちにはことばが必要だ』(タバブックス)を参考に、無意識に自分がしてしまっている可能性もおおいにある「女性嫌悪」とは何か、について解説していきます。


「女性嫌悪」ってなに? 「内助の功」「男のくせに」

女性批判

女性嫌悪とは、ミソジニーとも呼ばれ、女性や女性性に対する嫌悪のことです。


著者は、女性嫌悪を「女性性を劣ったものだとみること」だと述べ、「女性性の枠からはみ出した人を、女のくせに、と非難するなど、女性の抑圧につながるものだ」と指摘しています。


「女性嫌悪」ということばには恐れ、蔑視、崇拝、賛辞、嫌悪感、邪魔者扱い、対象化など、相反する感情がすべて含まれています。それは枠の中にさえとどまっていれば、男性は女性を過剰に持ち上げるからです。世の中で女性に与えられている場所は、男性より低い地位です。「『女のくせに』『男のくせに』という言い方が両方あるのだから、男女ともに差別はあるんだ」と主張したい人もいるでしょうが、そこには明らかなごまかしがあります。男性が制裁されるのは、劣位の女性の領域に入り込んだときだけ。(略)わざわざ劣った(女のような)まねをしていると見なされれば、その男性はつぎのようなことばで制裁されるのです。「女の腐ったようなまねしやがって」「おまえ、それでも男か」「男がそんなことでどうする」。(P.117)


注目すべきは、崇拝や賛辞という形で、女性嫌悪が表現される場合もある、という点でしょう。


前述の「女性の方が賢いんだから」がこれに該当します。女性は「女性ならでは」とされている細やかな気遣いができるのだから、リーダーになるのではなく、サポートする形で輝くべき、と考える人にとって、「男性をうまく立てて転がせる女性」「内助の功を体現している女性」はまさに女性のあるべき姿です。


「内助の功」を体現しているかに見える、芸能界から引退してスポーツ選手である夫の食事管理を頑張る元タレントの妻は賞賛されがちですよね。しかしその賞賛は、「女性性という枠の中にとどまっている」間だけしか得られません。「結婚・出産」したにも関わらず、「自分がでしゃばって」社会で活躍しようとする主婦タレントは、叩かれてしまいます。

つまり、「女性の方が賢いんだから」という言葉は、「男性を立てようとしない女」に対する非難や圧力も内包しているのです。


また、著者は、「男なのになんで専業主夫なの?」などの発言も、「状況的には男性を見下しているようですが、実際には女性性を劣ったものと見なしている」ため、女性嫌悪である、とも指摘しています。


「男のくせに」という発言は、「男のくせに、劣った女の領域に入り込んでいる」という意味が含まれており、そのため、女性嫌悪のひとつの表れである、というわけです。


女性の中の「女性嫌悪」。脱することはできる?

女性嫌悪

ここまで読んできて、「私も女性嫌悪発言をしたことがある」と感じた人は多いのではないでしょうか。


女性嫌悪は、社会にあまりにも浸透しすぎているために、女性自身が気づかずに抱いしてしまっていることも多い感情なのです。エッセイストの酒井順子さんも著書『男尊女子』(集英社)のなかで、「男子の汚れ物を嬉しそうに洗う女子マネージャー」などを例に挙げ、「女性のなかにある、男が上、女が下、という意識」を面白おかしく指摘しています。また、『男尊女子』では、酒井さん自身にも、拭い去れない男尊女卑の意識がある、ということも語られています。


実際、現代日本で、完全に女性嫌悪の意識から自由でいられている人はレアなのではないかと思います。では、私たちは、どうすれば女性嫌悪から自由になることができるのでしょうか?

イ・ミンギョンさんは以下のように指摘しています。


この社会では誰もが女性嫌悪からは自由でいられません。だれだって一度くらい、女性性の枠をはみ出した女性に「なんだ、女のくせに」と思ったことがあるはずです。そのとき感じた抵抗感を嫌悪感と思えばいいでしょう。枠から出ようとする女性に向けられた嫌悪という名の矢。女性嫌悪を脱することは、その矢の向きを女性を封じ込める枠のほう、つまり女性への抑圧のほうに方向転換するプロセスではないかと思います。(P.121-122)


「女のくせに」「男のくせに」とイラつきそうになったら、その嫌悪感を「女(男)らしくしろ、という価値観」の方に向けられる高い視点を持つことで、女性嫌悪を脱する第一歩になるのかもしれません。


さいごに

ただ、自分の中の女性嫌悪は意識を変えることで最小限に抑えることができても、他人の発言や価値観は変えることができません。


女性嫌悪発言に、イライラしたり、悔しい思いをしたりすることは、これからも続くでしょう。『私たちにはことばが必要だ』では、女性嫌悪に基づいた偏見を持つ人と対話をする方法(また対話を終わらせる方法)も紹介されています。気になった方はぜひチェックしてみてください。


参考




▼バックナンバーはこちら

・「女性の市場価値は、年をとると下がる」は誰にとっての真実?
・初デートで割り勘はありえない?なぜ「奢られたい」と思うのか
・『〇〇な男、〇〇な女』。男女の違い本の3つの弊害とは?
・2018年の男女平等ランキング。149カ国中、日本は何位?
・なぜか上から目線で説明してくる、男の「マンスプレイニング」とは?

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  • 今来 今 (フリーライター)

    神戸出身。編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。

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