女性らしさ

女性はなぜ「女性らしい」言葉づかいを要求されてきたの?

  • 更新日:2019/03/25

「女の子なんだから、そんな言葉づかいしちゃだめ!」

「最近の若い女性は、男っぽい乱暴な言葉づかいをして嘆かわしい」

そんな言説を聞いたことがある方も多いでしょう。


ところで、なぜ、

「男なんだから、そんな言葉づかいしちゃだめ!」

「最近の若い男性は、女性っぽい言葉づかいをして嘆かわしい」

とは言わないのでしょうか?


それは、「女性は、丁寧な美しい言葉づかいをするべき」「乱暴だったり、断定的だったりする言葉づかいは女性にはふさわしくない」と考えている人が多いからでしょう。

でも、なぜ女性にだけ、そういった「言葉づかいの美しさ」が求められるのでしょうか? 今回は、言語学の研究者・中村桃子さん著『女ことばと日本語』(岩波新書)を参考に、女性はなぜ「女性らしい」言葉づかいを要求されるのか、について解説していきたいと思います。


「女性の話し方を説いたマナー本」は、鎌倉時代からあった

マナー

中村さんによると、「女性の言葉づかいについての規範」が語られ始めたのは、鎌倉・室町時代だといいます。


今でも女性のためのマナー本は数々ありますが、なんと、そういったマナー本は、鎌倉時代から存在しており、女訓書(じょくんしょ)と呼ばれ明治・大正まで広く読まれていたといいます。そして、女訓書のなかでも度々、「女性の話し方はこうあるべし」というルールが語られてきたというのです。


江戸時代には、中世の女性観と仏教・儒教思想に基づく男尊女卑観が、封建的な家制度のもとで融合しました。そのため、江戸時代の女訓書では、夫やその両親に従う嫁・妻としての役割が強調されました。その中心を成したのが、四行という考え方です。四行とは、婦徳(女として硬くまもらねばならない諸徳)、婦言(女が日常で使うべき言葉づかい)、婦容(女にふさわしい身だしなみ)、婦巧(書道・和歌・裁縫など人が身につける技芸や教養)という女性にとって大切な四つの行いをさします。(P.33)


中村さんは、四行の中に言葉づかいの規範が含まれている点に注目し、「言葉づかいに規範を与えることが、女性を支配するために重要だと認識されていた」と指摘しています。


また、江戸時代の女訓書では、「女は喋りすぎず、必要のないことを言ってはいけない」「おしゃべりな女は品がない。遊女と同じだ」「ものを言うときは静かにいい、唇は開かない」などを推奨しており、端的に言うと、「女は黙っていろ。主張するな」というものだったといいます。


封建的な家制度を守るために、「女性は嫁として、妻として、夫に口答えすることなく、しとやかに従うことこそ美徳」という規範を強化しておく必要があったというわけです。


「女は黙れ」から「つつしみ深く、美しく」へ

美しい女性

女訓書で女性の言葉づかいについての規範が語られ始めた当初こそ、あからさまに男尊女卑思想に基づいた「女は黙っておけ」という文言が散見されましたが、次第にそれは、「つつしみ」というオブラートに包まれることになります。


印刷技術の発達により、広範囲に多くの女訓書が普及し、前の女訓書の内容が繰り返し引用されることによって、同じような言説が増幅していきました。教訓は、やさしい言葉づかいに書き改められ、箇条書きに書き直され、挿絵や具体的経験談を付け加えられて普及していきました。(略)その過程で、男尊女卑の思想的背景は捨象され、個々の内容が、日常生活におけるたしなみや行儀として短い箇条書きで具体的に提示されていきます。つまり、女性の言葉づかいの「あるべき」規範を述べることが、女性を支配する思想に基づいていることが見えにくくなり、かわりに、女らしい話し方、女性の「つつしみ」となっていくのです。(P.39)


女性にだけ美しい話し方を求める背景には、女性にでしゃばらせず発言させないことで支配しやすくしようとする思想がかつては明確にあり、それが次第に「つつしみ」や「女らしさ」にすり替わっていったというのです。


女性は、女性らしく、美しい話し方をするべき?

女性の笑顔

鎌倉時代から連綿と続いている「女性は女性らしく話すべし」「女性は美しい話し方をすべし」という言葉づかい規範は、現代ではどのように変化しているでしょうか?


先ほど、Amazonで、「女性 話し方」で検索したところ、「好感度を上げる」「好かれる」「大切にされる」ための女性向けの話し方マナー本を多数確認することができました。ですが、「男性 話し方」で検索しても、そういった類の本は一冊も確認することができませんでした。


こういったことを鑑みると、現代においても、「女性は男性より言葉づかいに気をつけるべき」という価値観を是とする風潮は、まだまだ存在しているようです。

ただし、「女だから〇〇すべき」という規範は、どのようなものであっても、女性が自由に生きることを妨げる要因になりがちです。


「美しい言葉遣いをしよう」「言葉遣いに気をつけよう」というのは、「女だから」ではなく「人として」の気遣いであり、マナーである、と認識しておく必要があるでしょう。


参考



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・「子供のいない夫婦はかわいそう」と「LGBTに偏見がある」は似ている

・今見るべき!セクシュアル・マイノリティを描いた映画・ドラマ5選

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  • 今来 今 (フリーライター)

    神戸出身。編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。

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