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なぜ男は「愛され」を目指さないのか

男らしい

「愛され服」「カレから愛されるための○つのテクニック」といった言葉は、ファッション誌などの女性向けメディアでは人気ワードです。表紙にドカンと、「愛される女になる!」系キャッチコピーが書かれている雑誌も一時期とても多かったような印象です。


ですが、男性向けのメディア上では、「愛され」という言葉はほとんど見かけません。なぜ、女性は「愛され」を目指し、男性は目指さないのでしょうか?


女性は男性より恋愛を重視する傾向がある?

女性

女性向けメディアでよく使われる「愛され」系ワードのひとつに、「選ばれる」があります。


どちらも受け身のワードであることから、「恋愛や性的なことに対してはとくに男性にリードしてほしい」「女性は選ぶより、選ばれる側でいる方がいい(自分には選ぶ力はないと思っている?)」といった価値観が垣間見えます。恋愛関係において主導権をとるのは男性で、選ばれて愛されるのが女性だと思っている男女が少なくないために、女性側のみが「愛され」を求めていた、という仮説が考えられます。


また、女性向けメディアに「愛され」系ワードが頻出するもうひとつの理由に、「女性は男性よりも人生において恋愛を重視する傾向がある」ことが挙げられます。もちろん、「恋愛なんて興味はない」という女性もいるでしょう。ですが、世の中に出回っている商品やサービスを見ると、恋愛関係のモノは圧倒的に女性をターゲットにしています。


たとえば、漫画。少女漫画と呼ばれる女性向けの漫画では圧倒的に恋愛をメインテーマとして扱うものが多いのに比べて、少年漫画は、スポ根や異世界モノなどがメインで恋愛を主軸としてものは少数派です。


恋愛のHow To本も女性向けのものが圧倒的多数で、男性向けの恋愛本で売れているものといえば、ナンパや恋愛工学系の「いかにして多くの女性を落とすか」を目的としたものくらいです。また、ウェブの恋愛メディアのほとんどは女性向けです。


明治・大正時代、女性にとっての恋愛は自由への道だった?

自由に憧れる女性

上記の事例からも、「女性は男性よりも人生において恋愛を重視する傾向がある」と言えそうです。しかし、なぜ女性は恋愛を重視するようになったのでしょうか?


そもそも、日本に恋愛という概念が浸透したのは明治時代のころでした。大正時代には文芸評論家の厨川白村(くりやがわはくそん)が発表した『近代の恋愛観』が大ベストセラーになり、女学生たちの間で、恋愛に対する憧れが高まっていったといいます。


『近代の恋愛観』では、恋愛のない結婚を否定し、これまでの単なる親同士が決めた相手との結婚よりも、恋愛結婚を尊いものとする主張が展開されていて、その新しさに、女学生たちは熱狂したのです。


なぜ、男子学生ではなく女学生の方がより恋愛に熱狂したのかというと、女学生たちは家父長制の家制度のなかで、庇護されるべき存在として位置付けられており、「自分の生きたいように自由に生きる」など、夢のまた夢だったからです。


そういった時代において、恋愛を経ての結婚というものは、自分の意思で親の監視下から脱出できる、唯一の自由への道だった、というわけです。


「愛され」て「選んで」もらう方が合理的?

選ばれる女性

大正時代においては、恋愛をして一時期自由を味わうことができたとしても、結婚後は、「保護者が父親から夫に変わっただけ」という構造は残ったままでした。ですが、当時は恋愛結婚でなければ、親の決めた相手と結婚することになるだけですから、恋愛結婚後の生活が自由とはかけ離れたものであったとしても、恋愛が唯一自分の自由意志で人生を変えられるきっかけとして輝いて見えたのでしょう。


では、現在の日本女性の現状はどうでしょうか?


当時に比べると、女性の選択肢は大きく広がったように見えます。誰かに養ってもらう以外の方法で経済的な自立を目指すことも可能な時代です。

ですが実際には、自分が経済力をつけることよりも、「愛され」て「選んで」もらうことによって、経済的な上昇を目指す女性も少なくありません。


自身が経済力を身につけるよりも、愛されて経済的な上昇を目指す方を選択する理由はおおきく分けてふたつ考えられます。

ひとつは、日本が男女の経済格差のとても大きな国であるということです。ジェンダーギャップ指数は2018年時点で110位。賃金格差も男性を10とした場合、女性は7と、大きな差があります。自分で稼ぐのが困難な道だと悟ったあと、稼げる男性を捕まえる方に舵を切るのはある意味合理的な判断です。


二つ目は、女性らしさというジェンダー規範です。ガツガツすること、リーダーシップをとること、成功を目指すことは男らしいと表現されがちで、「女らしくしなさい」と言われて育った女性たちが、自分の力で経済的成功を目指すことに魅力を感じられなくなっている、という場合も考えられます。


「愛され」戦略でどこまで戦える?

恋人

現代でも、「自分から恋愛関係・性的関係をガツガツ求めるのは女らしくない」「リーダーシップをとり、成功を目指す人は男らしい」といったジェンダー規範があり、男女の賃金格差が依然として存在しています。そのため、「愛され」ることで、現状を変えよう、経済的に上昇しようと考える女性がいても、一概に「他力本願で浅はか」だとは言えないでしょう。


ですが、女らしさや男らしさに対する価値観が変わってきていること、恋愛に興味がない男女が増加していること、男性の非正規雇用が増加していること、若い世代で家事を分担する夫婦が増えてきていること、女性にも経済力を求める男性が出てきていること、離婚やDV・モラハラなどが珍しくなくなっていること、などを総合的に考えると、「愛され」戦略だけで、今世を乗り切ろうとすると、かなり厳しい戦いになることが予想されます。



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  • 今来 今 (フリーライター)

    神戸出身。編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。

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