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これってセクハラ?セクハラの法的な意味を弁護士に聞いてみた

セクハラ

今では、「セクハラ」という言葉が当たり前のように使われていますが、皆さんの中にも、普段の生活や職場などで「それってセクハラじゃない!?」と感じる性的な言動を受けたことはありませんか?

でも、そもそも「セクハラ」って具体的にどのような行為を指すのか、どんなことが法的な「セクハラ」になるのか、よく分かっていないのが本音ではないかと思います。


今回のコラムから、セクハラの意味や、セクハラに当たる言動、セクハラに遭ったらどうすればよいのかなどについて、解説していこうと思います。


そもそも「セクハラ」って何?

セクハラ

皆さんもご存知かと思いますが、「セクハラ」とは、「セクシュアル・ハラスメント(Sexual Harassment)」の略称です。「セクハラ」は、1970年代にアメリカで造り出された言葉ですが、日本でも1980年代半ば頃から女性の人権侵害の問題として取り上げられるようになり、テレビや雑誌などでも頻繁に使われ、1989年には流行語大賞も受賞して定着した言葉といわれています。

一般に「セクハラ」は、相手に不快な思いをさせる性的な嫌がらせ、相手の望まない性的な言動などと言われますが、法律上の「セクハラ」とは、どのようなものなのでしょうか?


男女雇用機会均等法における「セクハラ」

セクハラは、職場の中で問題になることが多いので、一般的には、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)」での定義が利用されることが多いです。


男女雇用機会均等法では、セクハラを、①「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否するなどの対応により解雇、降格、減給などの不利益を受けること」又は、②「性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること」とされています。


①のセクハラは、「対価型セクハラ」と呼ばれています。

具体的には、社内において上司が部下に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、その部下をクビにしてしまったような場合や、出張先の車中において上司が部下の腰や胸などを触ったが、抵抗されたため、その部下を不利益に配置転換してしまった場合などが挙げられます。

一方、②のセクハラは、「環境型セクハラ」と呼ばれています。

具体的には、社内において上司が部下の腰や胸を度々触ってくるため、部下が苦痛を感じて働く気にならないような場合や、同僚が取引先で自分に関する性的な内容の情報(スリーサイズや性経験など)を広めているため、苦痛を感じて仕事が手につかないような場合などが挙げられます。


なお、ここでいう「職場」とは、事務所などの社内に限られず、労働者が業務を遂行する場所(取引先の事務所、取引先と打ち合わせをするための飲食店、顧客の自宅等)であれば「職場」に含まれますし、勤務時間外の飲み会も、実質的に職務の延長と考えられるものは「職場」に当たります。

また、ここでいう「労働者」とは、正社員だけではなく、パート、契約社員、アルバイトといった雇用される労働者の全てを含みます。

職場

人事院規則における「セクハラ」

国家公務員については、男女雇用機会均等法とは別に人事院規則がセクハラについて定めています。この人事院規則では、セクハラを「他の者を不快にさせる職場における性的な言動及び職員が他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動」と定義されています。

また、人事院規則の運用に関する指針が定められていて、セクハラになりやすい言動が次のように挙げられているので、参考になります。


1.職場内外で起きやすいもの

①性的な内容の発言関係(スリーサイズを聞くなど身体的特徴を話題にすること、聞くに耐えない卑猥な冗談を交わすこと、性的な経験や性生活について質問すること、性的な噂を立てたり性的なからかいの対象とすること、「男のくせに根性がない」、「女には仕事を任せられない」などと発言すること等)

②性的な行動関係(ヌードポスター等を職場に貼ること、雑誌等の卑猥な写真や記事をわざと見せたり読んだりすること、身体を執拗に眺め回すこと、食事やデートにしつこく誘うこと、性的な内容の電話をかけたりメール等を送ること、身体に不必要に触ること等)


2.主に職場外において起こるもの

①性的な関心・欲求に基づくもの(性的な関係を強要すること等)

②性別により差別しようとする意識等に基づくもの(カラオケでデュエットを強要すること、酒席で上司の側に座席を指定したり、お酌やチークダンス等を強要すること等)


訴えられるレベルの「セクハラ」って?

裁判

このように、男女雇用機会均等法や人事院規則ではセクハラが定義されていますが、このセクハラの定義に当たる(当たりそうな)言動の全部が、損害賠償請求等の法的責任が生じる不法行為に当たるわけではありません。セクハラが不法行為として損害賠償の対象となるためには、そのセクハラが違法であるといえるレベルに至っていることが必要だからです。

では、裁判所では、どのように考えられているのでしょうか?


裁判所の一般的な基準

セクハラのうち、どのような言動が違法といえる不法行為に当たるかについての基準を示した裁判例として、金沢セクハラ事件判決というものがあります(名古屋高裁金沢支部平成8年10月30日判決)。


この裁判例では、「職場において、男性の上司が部下の女性に対し、その地位を利用して、女性の意に反する性的言動に出た場合、これがすべて違法と評価されるものではなく、その行為の態様、行為者である男性の職務上の地位、年齢、被害女性の年齢、婚姻歴の有無、両者のそれまでの関係、当該言動の行われた場所、その言動の反復・継続性、被害女性の対応等を総合的にみて、それが社会的見地から不相当とされる程度のものである場合には、性的自由ないし性的自己決定権等の人格権を侵害するものとして、違法となる」と判断されました。

つまり、セクハラに当たるような言動があったとしても、それが違法として損害賠償の対象となるには、様々な事情を総合的にみて、社会的に見ても相当でないというレベルにまで至る必要があるというわけです。


この金沢セクハラ事件の概要をざっくり説明しますと、男性上司が部下の女性に対し、約2か月間にわたり性的なことを話したり身体に触れたりしていたところ、性行為を強要しようとしたが未遂に終わったというもので、部下の女性は男性上司に対し、550万円の損害賠償を求めました。ただ、部下の女性は、性行為の未遂後も勤務を継続していて、それ以前には、男性上司の自宅に何度か泊まって入浴したこともあったというケースでした。

判決では、男性上司の言動が違法なセクハラに当たることは認めつつも、女性側の落ち度もあるとして、請求額を相当減額して、結局、138万円の損害賠償が認められました。

セクハラ

このように、一言に「セクハラ」といっても、法的な意味での「セクハラ」には、いくつかの種類があります。また、ご紹介した人事院規則の指針で定められているセクハラになりやすい言動の中には、「あー、こんなことされているな…」と思い当たるものもあったかもしれません。

ただ、裁判で損害賠償請求が認められるかどうかという点からすれば、はっきりと「これはNG!」と言い切れないケースもありますし、裁判の場合には、いろいろな事情が合わさって総合的に判断されて、セクハラの違法性の有無が認定されますので、必ずしも「これに当たるからセクハラだ!」 というわけではありません。そこは注意する必要がありますね。

「セクハラを受けているかも…」と思い当たる節のある方は、職場の人間関係もあってなかなか声をあげることができないかもしれません。でも、セクハラは、快適な職場環境を壊してしまう非常に重大な問題です。我慢していても問題が解決するわけではありませんので、親身になってくれる人に相談したり、弁護士などの専門家に相談したりする方が良いでしょう。


セクハラをしないように・されないように、いつまでも働きやすい職場で働きたいものですね。

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  • 田中雅大 (弁護士/第二東京弁護士会所属)

    1975年生まれ。埼玉県出身。証券会社に勤務した後、2010年に弁護士登録。中小企業の法務や不動産案件を中心に扱いつつ離婚や不倫などに関する数々の男女トラブルを解決。趣味はサーフィン、草野球。

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