家事

「逃げ恥」みくりが無償の家事を「好きの搾取」と言ったわけ

  • 更新日:2019/04/17

人気少女漫画『 逃げるは恥だが役に立つ 』は2016年にドラマ化され、社会現象と言っていいほどの人気を博しました。


『 逃げるは恥だが役に立つ 』は、派遣切りにあった高学歴無職女性・みくりが、生活のために高収入だけど女性に慣れていない平匡( ひらまさ )さんの自宅で家事代行として働きはじめ、ふたりは次第に惹かれあっていく、というのが大まかなストーリーです。


なかなか一歩を踏み出せないふたりに、むずキュンした方も多いのでは?


本作が社会現象になったのは、みくり( 新垣結衣 )や、みくりの伯母の百合ちゃん( 石田ゆり子 )が単純に可愛すぎた、ということも一因だと思いますが、一番の人気の理由は、「 愛があれば無償でするのが当たり前だと考えられてきた家事に値段をつけたことによる斬新さ 」でしょう。


「 それは、好きの搾取です! 」にドキッとする人が多かった理由

指摘

主婦の行う家事の値段を19.4万円と算出し、平匡さんからお給料をもらって家事を行なっていたみくりは、ある日、平匡さんからプロポーズをされます。


好きな人からのプロポーズされたのですから、これまでのドラマなら、結婚をしてめでたしめでたし、となりそうなところですが、『 逃げ恥 』はそういったステレオタイプのラブストーリーとは一線を画しています。みくりは、結婚することでこれまで有償でしていた家事がタダになることに気がつき、「 好きの搾取 」だと、プロポーズを断るのです。


このみくりの決断が、視聴者をザワザワさせたのは、「 愛があるから家事・育児・介護などをするのは当たり前 」という価値観にモヤモヤしていた人が潜在的に多かったからでしょう。


また、これまで家族のために女性がタダで家事をすることは当然、と考えてきた世代にとっては、自分の生き方を否定されたように感じて、反発する気持ちもあったのかもしれません。「 みくりは強欲 」「 みくりが搾取だというのは当然 」など、みくりの決断に対して、賛否両論が巻き起こったことも、ドラマのブームを盛り上げるひとつのきっかけになりました。


主婦の労働の価値が19.4万円だとしても、実際には無償

20万円

ところで、主婦の労働価値が19.4万円というのは本当でしょうか? これについては、様々な計算がされていますが、「 コレが正しい価格 」だと決定することは難しいようです。家事・育児といってもどこまでするかは人それぞれですし、主婦の労働に価値があることはもちろんですが、実際には、その労働に関して直接給与が支払われることはほとんどないからです。


家事、育児といった、無償でありながらも、生活を支えるために不可欠な活動を、きちんと評価・認識したいという気持ちが、家事をお金に換算したい、という気持ちを産むのでしょう。


そういった無償の家事や育児を、きちんと評価・認識するために生み出された言葉のひとつに、アンペイド・ワーク(無償労働)という言葉があります。


家事をアンペイド・ワークだと認識することの効果とは?

主婦

『 逃げ恥 』のように、家事に値段をつけることは、一見「 主婦の労働にはこれだけの価値がある! 」という、主婦の労働の再評価に役立っているようにみえます。ですが、これは、少し危険な見方だと思えます。


なぜなら、「 主婦の家事には19万の価値がある。だから主婦の労働はバカにできない 」と言ったところで、実際には、主婦は無償労働を続けるしかなく、現実は何も変わらないからです。


家事などのアンペイド・ワークに値段をつけてみる試みは、「 主婦の労働を再評価するための方法 」というよりは、「 無償労働・有償労働に従事する時間が、男女において偏りがある 」ことを明らかにし、その偏りを是正するために使われるべきではないか、と思います。


実際、1995年の北京女性会議では、アンペイド・ワークという概念は「 責任分担の改善につながる 」と指摘さています。


日本は、アンペイド・ワークが極端に女性に偏っている国

家事

『 逃げ恥 』みくりに共感する人が多かったのは、好きの搾取を受けている、と感じた女性が多かったからでしょう。実際、日本は女性が家事・育児などのアンペイド・ワークを担う割合が他国と比べるとかなり女性に偏っています。


総務省が平成28年にまとめた調査(※1)をからも家事の男女間での偏りは明らかです。


家事関連時間の国際比較

★日本の家事関連時間 平成23年→平成28年

女性:7.41→7.34  男性:1.07→1.23

★日本の育児時間 平成23年→平成28年

女性:3.22→3.45 男性:0.39→0.49


★アメリカの家事関連時間 平成23年→平成28年

女性:5.37→6.01  男性:3.16→3.25

★アメリカの育児時間 平成23年→平成28年

女性:2.08→2.18 男性:1.08→1.20


日米を比較すると、家事・育児とも女性が担う時間が多いという点は同じですが、平成28年時点で、日本では女性が男性の約6倍家事を担っているのに比べて、アメリカでは約2倍の差にとどまっている、ということが見て取れます。


つまり、日本では現状、アンペイド・ワークが極端に女性に偏っているのです。



逃げ恥みくりが無償の家事を「 好きの搾取 」と言ったわけ

みくりが、家事を無償ですることを「 好きの搾取 」と言ったのは、「 自分だけが無償の労働を担当する 」ことに対する違和感があったからでしょう。


「 どちらか一方だけが家事などのアンペイド・ワークを受け持ち、もう一方が外で稼ぐ 」という形にお互いが納得している、というカップルもいるでしょう。そういった場合は、何も問題はありません。


ですが、「 なんとなく女性がするものだから 」という価値観から、仕事も家事もがんばってしまい、疲弊してしまっている女性も少なくありません。そういった女性にとって、『 逃げ恥 』やアンペイド・ワークという概念は、「 好きの搾取 」に気づかせてくれる、貴重なきっかけになるのではないでしょうか。


※1 総務省 統計局 平成28年 社会生活基本調査



▼バックナンバーはこちら

・「男女間の賃金格差」は差別?役割分担?
・女性が王子様を待ち続けてしまう理由。シンデレラ・コンプレックスとは?
・「女性の社会進出」という言葉に違和感。家事・育児は社会貢献じゃない?
・子供を産んだら「母性」が芽生えるのは当たり前?
・彼氏に「男らしさ」を期待しないでおこう、と思った話

▼著者:今来さんの他連載はこちら

・妊活・お金・介護・美容…40歳までに知っておきたいことリスト
・【連載】なんで子供が欲しいの?
・「仕事早すぎ!」と驚かれる私の仕事術を公開。遅くなる理由を捨てる

  • 今来 今 (フリーライター)

    神戸出身。編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。

この記事がいいと思ったら
いいね!しよう

Related関連記事

Pick Up編集部ピックアップ

Rankingランキング

#tag