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これってパワハラ?〜パワハラの意味とパワハラに当たる行為とは?【弁護士に聞いてみた】

弁護士に聞いてみた

最近、テレビやインターネット、SNS、職場や身近なところでも、「パワハラ」という言葉を耳にすることが多いですよね。普段の生活でも、「それパワハラじゃん!」と思うこともあるのではないかと思います。でも、どんなことがパワハラになるのか、よく分かっていないのが本音ではありませんか?

今回のコラムから、パワハラの意味や、パワハラに当たる言動、パワハラに遭ったらどうすればよいのかなどについて、解説していこうと思います。


そもそも「パワハラ」って何?

パワハラ

ご存知の方も多いと思いますが、「パワハラ」とは、「パワー・ハラスメント(Power Harassment)」の略称です。「パワハラ」は、2000年初頭に発表された造語(和製英語)ですが、近年の職場における人権意識の高まりから、社会一般に浸透してきた言葉といえるでしょう。ちなみに、英語でパワハラを表現するならば、「Abuse of authority(権力の乱用)」でしょうか。

一般に、「パワハラ」は、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義されることが多いです(2012年1月30日・厚生労働省「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」報告書。厚生労働省HP「あかるい職場応援団」)。また、「パワハラ」には、上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩の間や同僚の間、さらには部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われる行為が含まれるとされています。

なお、「パワハラ」は、裁判所の判決文の中で「いわゆるパワー・ハラスメント」というように表現をされることもありますが、法令上の言葉ではありません。


パワハラの6つの類型

パワハラ

一般に、「パワハラ」には6つの類型があると言われています(厚生労働省HP「あかるい職場応援団」より)。以下では、事例を紹介しながら、この6つの類型についてご説明します。

ただし、この6つの類型はあくまで例であって、これらに当たらない行為は「パワハラ」に当たらないというわけではありませんので、ご注意ください。


①暴行・傷害など(身体的な攻撃)

叩く、殴る、蹴るなどの暴行や傷害行為は、犯罪行為にも当たり得るものですから、たとえ業務の遂行に関係するものであっても、「業務の適正な範囲」を超えていることは明らかですよね。

例えば、裁判例でも、以下のような事例で身体的な攻撃によるパワハラの違法性を認めています。


・会社の上司が、被害者である部下を自席に呼びつけて、仕事の話をしていた際に激高して部下の膝を足蹴りしたり、数か月にわたって扇風機の風を当てたりした事例(東京地裁平成22年7月27日判決「日本ファンド事件」)

・先輩同僚から、シンナーなどをかけられたり、上腕部をつねられて全治2~3日の傷害を負わされたり、火のついたタバコを当てられたリした事例(東京高裁平成22年1月21日判決「警視庁海技職員事件」)


②脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)

「ぶっ殺すぞ」と脅迫したり、日常的に「バカ」「アホ」「無能」「給料泥棒」などと侮辱したりするなどの精神的な攻撃も、業務の遂行に必要な行為とは通常考えられませんから、原則として「業務の適正は範囲」を超えた違法なパワハラと認定される可能性が高いです。

例えば、裁判例でも、以下のような事例で精神的な攻撃によるパワハラの違法性を認めています。


・社長や役員が多数出席する研修後の全員が出席する懇親会で、上司がスピーチの際に、出席者全員の前で、被害者である部下のことを「出来が悪い」、「何をやらしてもアカン」などと発言した事例(大阪地裁平成19年11月12日判決「日本ヘルス工業事件」)

・社長が被害者であるタクシー乗務員に対し、運転指導の際に、「キチガイ」「あほ」「脳みそ狂っとるんちゃうか」 などと侮辱する表現を使ったほか、「辞めろ」「辞表を出せ」などと退職を迫る表現を繰り返し使った事例(東京地裁平成26年12月10日判決「東京エムケイ事件」)


③隔離・仲間はずれ・無視(人間関係からの切り離し)

仲間はずれや無視などによる職場でのいじめや人間関係からの切り離しも、業務の遂行に必要な行為とは通常考えられませんから、原則として「業務の適正な範囲」を超えた違法なパワハラと認定される可能性が高いといえます。

例えば、裁判例でも、以下のような事例で人間関係からの切り離しによるパワハラの違法性を認めています。


・被害者社員が、社内のホワイトボードに「永久に欠勤」と書かれたり、ホワイトボードから名前を消されたり、理由もなく端の方に座席を移動させたりたりして、最終的には整理解雇を通告された事例(東京地裁平成14年7月9日判決「国際信販事件」)

・被害者が、複数の同僚女性社員から、社内メッセンジャーで毎日のように被害者の同期社員に被害者に対する悪口を送信されたり、「これから本格的にいじめてやる」 などと言われたりして、2年以上にわたり執拗ないじめや嫌がらせを受けた事例(大阪地裁平成22年6月23日判決「富士通事件」)


④職務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)

一日では処理できないほど多量の仕事を押し付けられたリ、業務上の些細なミスについて見せしめ的に始末書の提出を求められたりするなど、職務上の過大な要求も、「パワハラ」に当たることがあります。

例えば、裁判例でも、以下のような事例で過大な要求によるパワハラの違法性を認めています。


・教員であった被害者が、精神疾患による病気休暇明け直後であるのに、校長らが、従来の音楽科と家庭科に加えて、教員免許外の科目である国語科を担当させるなどして業務を軽減させることなく、被害者の心理的負荷を重くした事例(鹿児島地裁平成26年3月12日判決「U市市立中学校教諭事件」)

・鍼灸師である被害者が、整骨院院長から、勤務時間外・退社後に、ブログ記事の作成・更新業務や、毎日の業務報告・反省文を作成してメーリングリストに投稿することを命じられ、その時間に対して給料を支払わないとされた事例(横浜地裁相模原支部平成27年11月27日判決「鍼灸整骨院院長事件」)


⑤業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じられることや仕事を与えないこと(過小な要求)

営業職として採用された社員に営業としての仕事を与えずに草むしりばかりさせたり、お前はもう仕事をするなといって仕事を与えずに放置したりすることなど、職務上の過小な要求も、「パワハラ」に当たることがあります。

例えば、裁判例でも、以下のような事例で過小な要求によるパワハラの違法性を認めています。


・被害者が会社の退職勧奨を拒否したところ、上司が、自主退職するよう追い込む目的で、被害者に仕事を与えずに社内公募による異動先探しのみ行わせて降格させるなどした事例(神戸地裁平成16年8月31日判決「P&G事件」)

・被害者である社員が、45日間にわたる給料減額を伴う日勤教育を命じられたり、車両の天井清掃や除草作業、規定書類の書き写しなどを命じられたりした事例(大阪高裁平成21年5月28日判決「JR西日本事件」)


⑥私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

有給休暇を取って旅行に行こうとしたところ、上司から「誰とどこへ行くの?宿泊先はどこ?」などと執拗に聞かれたあげく、有給休暇の取得も認められなかったなど、上司などが個人のプライベートに過度に立ち入ることも、「パワハラ」に当たることがあります。

裁判例でも、以下のような事例で「個の侵害」によるパワハラの違法性を認めています。


・被害者が、勤務時間終了後も、先輩の遊びに無理やり付き合わされたり、先輩の肩もみや家の掃除、車の洗車などの雑用をさせられたり、被害者が交際相手と会おうとすると職場に呼び出されたりした事例(さいたま地裁平成16年9月24日判決「北本共済病院事件」)

・上司が、販売目標を達成できなかった部下の美容部員に対し、社内研修会において、占い師姿のコスチュームやうさぎ耳のカチューシャを着用させ、許可なく写真撮影して、別の研修会で写真をスライド投影するなどした事例(大分地裁平成25年2月20日判決「カネボウ化粧品販売事件」)


会社

このように、パワハラには少なくとも6つの類型があります。あなたの身の回りにも、「あ、もしかしたらパワハラにあたるかも…」という言動があったかもしれません。もっとも、ご紹介した裁判例も、いろいろな事情が合わさって総合的に判断されて、パワハラの違法性が裁判上認定されたものです。必ずしも「これに当たるからパワハラだ!」というわけではありませんので、注意してくださいね。

パワハラかどうかの判断で重要なのは、「職場内での優位性を背景にしているか」と「業務の適正な範囲を超えているか」です。自分がパワハラに当たりそうな行為をしてしまっているなら、すぐに止めた方が良いですし、自分がパワハラに当たりそうな行為を受けているなら、すぐに弁護士などの専門家に相談した方が良いでしょう。

パワハラは職場の人間関係に絡む問題ですから、そうはいってもなかなか相談しにくいかもしれません。でも、このコラムなどを読んでいただいて、予備知識を得ることは重要だと思います。パワハラをしないようにされないように、いつまでも働きやすい職場で働きたいものですね。



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  • 田中雅大(弁護士/第二東京弁護士会所属)

    1975年生まれ。埼玉県出身。証券会社に勤務した後、2010年に弁護士登録。中小企業の法務や不動産案件を中心に扱いつつ離婚や不倫などに関する数々の男女トラブルを解決。趣味はサーフィン、草野球。

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