子どもの偏食

子どもの偏食、しつけでなんとかできるもの?

  • 更新日:2019/07/23

ひーくんはとても賢い子です。国語も算数も、プリントを「やれば」あっという間に終わらせられるくらいに、理解も早いし記憶力もいい。問題なのは、プリントに「集中できない」という点だけ。いわゆる『多動』と診断され、学校に行く時はコンサータというお薬を飲むようにと処方されていました。


今回は、感覚過敏にも悩まされていたひーくんの、偏食のお話です。


【CASE18 】毎日夕食はラーメンかハンバーグ、絶対に!

子どもの偏食

「しつけが足りない」

「お腹がすけば他のものも食べるんだから、わがままを聞く必要はない」

「飽食の時代の弊害だ」


まぁ、なんとでも言えます。


が、しかし、です。

ここで取り上げているのは、「試しにひと口これも食べてごら~ん」と言って、口を開けてくれるような子どもたちのことではなく、親のどんな努力もむなしく「絶対にこれしか食べない」という子どもたちのことです。


まったく聞いてくれない我が子をどうするか

発達症の子どもたちの「絶対受け入れない」という時の状態を、一度でも見たことのある方は、それを言って聞かせてどうにかしよう(=しつけよう)と毎日がんばっているママやパパの気持ちが想像できることと思います。


こちらの話を聞かない、聞けない。


言って聞かせようと思っても、聞くという状態に持っていくまでに相当な努力を要することもしばしば。本人が頑として話を聞かない姿勢の時に、ぐっと身体を抱きしめ、話を聞かせる。でも聞いてくれない。我が子が泣き叫んで要求を通そうとする時に、完全に無視して泣き止むのを待つ。けれど、一向に泣き止まない。


ご近所迷惑になるのでは? 仕事で疲れて帰ってくるご主人に理解を求めることもなんだし、「うるさい」ってこの前怒られちゃった。そうなると、この際しつけ云々はさておき、要求を通してしまった方が早いのでは……と諦め折れてしまう。


子どもたちの食事について、まんべんなく食べさせたい、栄養バランスが気になる……と考えるのは、至極もっともなことだと思います。しかし、上記のような状態の我が子を怒鳴りつけたり、食べ物を与えずに空腹にさせたり、泣きながら言い合いしたりしてまで、その食の偏りは「今」治さなくてはならないものなのでしょうか?


そこのところを、ちょっと一緒に考えてみませんか?


感覚過敏という理解

さて、偏食。例を挙げればキリがありません。


お弁当は毎日絶対白いご飯にのりたま、ソーセージ(ウイニーじゃないとダメ)という子もいるし、野菜類にドレッシングをかけると食べなくなる、という子もいます。おにぎりには具を入れないし海苔もまかないという子もいれば、夏はずーっとガリガリ君を食べ続け、合間にちゅるちゅる(=うどんやラーメン)を食べるという幼児もいます。


まず、感覚過敏についての理解をしてあげること。


“熱い”“冷たい”という感覚も、“塩辛い”“甘い”という感覚も、本当に人それぞれなもの。中には炭酸水のシュワシュワが気持ちよくて病みつきになってしまっている子もいるし、ちょっとでもザラザラな食材はアウト、という子もいます。


こうしたことが原因であるならば、食材の切り方や調理方法を変えたりすることで、「食べない」という行為が解消される場合もあるし、そもそもその食材にこだわらず、別のものを代用するといった形で対処もできます。


子どもの視点で考えてみる

そして意外に多いのが、「子どもはこういうものが好き」 という、大人の側の誤解。オムライス、ハンバーグ、コーン、プリン、スパゲッティ、ケチャップ、マヨネーズ……なら食べるだろう的な。

本当に、そうですか? ひとりひとり違って当たり前じゃないですか?


ここで大切なのは、大人の側が何を食べさたいかということよりも、本人がなぜそれを食べ続けたいのかということに、視点を置いてみることです。


おおまかで良いので、その子の食の履歴を振り返ってみると、食べる、食べないの基準が何なのか、捕らえることができたりします。どんなタイミングで、どんな調理方法のものを、どんなシチュエーションで、それを食べたり食べなかったりするのか。「食べさせる」ということにばかり意識が向いてしまうとつい、本人の全体像を見失いがちになるものです。


「なぜそうしているのか? 」という視点は何も食べ物に限ったことではなく、常に、子どもたちと私たちのコミュニケーションを助けてくれる言葉であると言えるでしょう。


楽しい食卓こそ、食欲の元

食の本来の目的についても考えてみましょう。

栄養を摂るという目的の他に、もっと多くの要素が含まれているのが食卓です。


食べさせること、食べさせ方に関する大人の側の固定観念をいったん捨ててみましょう。栄養バランス、食べる時間、食べる時のマナーなど、いくつも越えなければならないハードル(決まり事)を作ってしまうと、それを守らせることが目的となってしまい、注意することが増えてしまいます。私たち大人にも、「子どもの頃の食卓は楽しい空間ではなかった」という記憶を持つ方も少なくありません。


「楽しい空間としての食卓」と「しつけ」、バランス感覚が大切なのではないでしょうか。


食卓には、いろいろなおかずを並べておけばいいのだと思います。それを食べるか食べないかは自由です。そのおかずを美味しそうに食べている大人たちの様子を見ながら育つことの方が、食べることを強要されて育つよりもずっとパワフルな食育になることと思います。


「食」=「愛」の紐づけをやめる

食事に関して、子どもに過度な要求をしてしまう原因のひとつとして、親にとって食を与えるという行為は、愛情を与えることと密接に結びついている、ということがあげられます。


これが過剰になると、「食の拒絶」=「自分自身の愛情の拒絶」と解釈し、自己批判、自己攻撃の元にしてしまい、子への非難の始まりになってしまうことも。統計によれば、実子への虐待がもっとも多いのは実母なのですが、それは、乳幼児期の主な養育者が母親であることから、一緒にいる時間が絶対的に長いということ、そしてこの、「食」を与えるという行為の主体になることが多いからなのだそうです。


子どもたちがもしもあなたの作ったお料理を食べなかったとしても、それはママが嫌いだからではありません。

「これ、おいしいよ」とママがすすめたお料理を拒絶したとしても、それはママをママと認めていないからではありません。


食と愛とを混同しているのは、大人の方なのです。


がんばることで自分を縛らない

バランスよく食べさせなくっちゃ! と、がんばってしまう自分をいったん脇に置いて、深呼吸しましょう。


子ども自身に備わっている、健康であろうとする力、成長しようとする力を信頼しましょう。変化しない子どもはいません。


発達症の子どもたちの多くは、成長過程で二次障害(愛着の形成を著しく傷つけられるような体験)が無ければ、その特性(こだわりやマイペース)は10~12歳前後で和らいでいくそうです。


将来を気にするあまり、今のしあわせな感覚をないがしろにしないこと。


「『今日も一日楽しかった』と、子どもが感じられた一日だったかな? 」

夜眠りにつく前に、そう自分に問いかけてみてください。「うん、そういう一日だった」って答えられる自分なら、それは十分最高のママだと思います!


参考資料

平成26年3月13日 柏市要保護児童対策地域協議会研修会「発達障害のある子の家族への支援~児童虐待防止の視点から」

まめの木クリニック・発達臨床研究所 代表 藤井和子氏


平成28年7月6日 我孫子市療育セミナー

「気になる幼児の理解と支援~発達と愛着の二つの視点から」筑波大学宮本信也教授



バックナンバー

♯17:「あっち」や「こっち」では動けない!固まるわが子を動かす方法


#16:「絶対今日はこの服で!」そのこだわり、許せますか?


♯15:子どもたちが言いたいこと、どこまで理解できますか?


♯14:子供の貧乏ゆすり、しつけで何とかできるもの?



実は、多くの人がもつ【愛着障害】

① ツライ恋愛から離れられないホントの理由とは?


② 超えられない壁を感じる彼との恋愛、その壁の正体は?


③ 恋人も友だちもいるのに感じる『孤独』の原因は?


④ 相手の本心がわからなくてあれこれ考えすぎてしまう癖、解消したい!


⑤ 相手の言動や行動で傷つく自分をやめるには



「まなまりんManaMarine」とは?

発達療育イベントを各地で開催。感覚統合と愛着形成を目的としたメソッドを、運動と遊びを通してお伝えしていきます!

Mana Marineの運動療育で育てていくのは、この、脳の交通整理に必要な5つの感覚(視覚・聴覚・触覚・固有覚・前庭覚)。同時に、ボウルビィの愛着理論を元に、愛着の形成に必要な要素も取り入れ、独自のメソッドで親子の関わりを支え、脳の発達のみならず心の成長もサポートします。

まなまりんManaMarine:Facebook



  • いしづかみほ (学習・療育のじゃ塾塾長/日本子ども虐待防止学会会員/イラストレーター)

    「子どもたちが本来持っている才能を存分に発揮できるよう双方向で作る授業」と「彼らのありのままを理解する教育カウンセリング」を軸とした療育を実践しています。

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