
「父親の物忘れが激しくなったな」
「母親が料理の火を消し忘れるようになった」
こんなことありませんか?
もしかしたら、それは認知症のサインかもしれません。認知症は、加齢に伴う物忘れと混同されやすい病気です。早期発見することによって、進行を食い止めることもできるので、この機会に物忘れと認知症の違いや、対処法について認識しておきましょう。
認知症は早期発見が大切

認知症は、年をとると誰でもかかる可能性のある病気です。加齢による物忘れと症状が似ているため、混同されやすいのですが、以下のような違いがあります。
加齢による物忘れと認知症の違い
①加齢による場合、体験の一部を忘れます(例:昨日遊びに来た友達の名前、なんだっけ?)が、認知症の場合体験のすべてを忘れます(例:昨日友達が遊びに来たこと自体を忘れている)。
②加齢による物忘れの場合、症状の進行はあいまいですが、認知症の場合、はっきりと物忘れがひどくなっていき、進行していることが分かります。
②加齢による物忘れの場合、自分でも忘れた自覚があり、「なんだったっけ……ああ、物忘れが多くなってきたな」となりますが、認知症の場合、忘れた自覚がないため「俺はぼけてない」「私は病気じゃないから病院には行きたくない」など怒ったり否定したりします。
早期発見のためのチェックポイント
以下のような症状が出ている場合は、認知症を発症している可能性があります。
・同じことを繰り返して言うようになった
・今まで好きだったことに情熱を無くした
・すべてのことに対して無関心になった
・今までできていた料理などの日常の動作ができなくなった
・簡単な計算ができなくなった
・話がつうじなくなった
「認知症かな?」と思ったら、すぐに病院に連れて行きましょう。
・脳神経科
・神経科
・メンタルクリニック
・心療内科
・老年科
・物忘れ外来
・認知症外来
などで診断を受けることができます。
認知症の主な4種類と対処法

ひとくちに認知症といっても、様々なタイプの症状・治療の方法があります。ここでは認知症の主な種類について簡単にご説明します。
①アルツハイマー病
脳の神経細胞にたんぱくが蓄積され、神経細胞が脱落し、脳が委縮することによりおこる病気です。症状は、物忘れや記憶力の障害、判断力の低下などがみられます。初期は人格の変化やうつ状態が見られることもあります。
対処法法:介護が長期化しやすいため、社会的援助が重要です。薬で進行を遅らせることができます。
②脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血などにより、血流が悪化し、脳細胞が機能しなくなってしまう病気です。毛尾度なものが多く、脳の障害を受けた箇所によって症状の表れ方に差があります。計算はできるのに、昨日食べたご飯のことは忘れているなど、俗に言う「まだらぼけ」の症状がみられることもあります。
対処法:寝たきりにならないようにリハビリの早期実施を検討する必要があります。脳卒中の再発防止も大切です。
③レビー小体病
脳の大脳皮質の神経細胞内に、レビー小体という異常なたんぱく質が蓄積される病気です。幻覚、特に幻視が特徴的な症状です。歩き方がぎこちないといった、パーキンソン病に似た症状が現れることもあります。
対処法:薬で症状が抑えられます。幻視を否定しないようにしましょう。
④ピック病
前頭葉や側頭葉の部位が委縮する病気です。比較的若い人にみられます。性格が変わったように怒りっぽくなったり、同じ話を繰り返す、店のものを勝手に持ち出すなど、反社会的な行動をとることもあります。認知症と気が付かれないことも多く、誤解されやすい病気です。
対処法:向精神薬を対処療法で使用することがあります。言い分を頭ごなしに否定しないように注意が必要です。
参照:介護で仕事を辞めないために親が元気なうちからやるべきこと52 (125P)
認知症の専門家に相談し、情報・知識を得よう

家族が認知症にかかってしまったら、一人で抱え込ますに、専門家やボランティアなどに頼りましょう。
地域包括支援センター
地域包括支援センター(※1)では、認知症についての相談対応を行っています。講演会や、権利擁護(※2)のための相談対応を行うほか、センターによっては、認知症の人の家族会を開いているところもあります。
認知症サポーター
厚生労働省は、認知症に対する正しい知識と理解を持ち、地域で認知症の人やその家族に対してできる範囲で手助けする「認知症サポーター」を全国で養成することを目指しています。(※3)認知症サポーターは平成29年 12月31日時点で、980万人を超えています。認知症に対する理解を深めたいという方は、認知症サポーター養成講座を受講することができますので、事務局に連絡してみましょう。
さいごに

認知症は、進行性の疾患です。一度かかってしまったら、進行を遅らせることはできても、完治することはほとんどありません。そのため、介護生活は長引きがちです。進行を遅らせるためには、早期発見が大切です。「認知症かな?」と思ったらお近くの医療機関を早期に受診しましょう。
※1 地域包括支援センター
※2 認知症の人の財産を守ったり、騙されないようにすること
※3 認知症サポーター
参考文献:
不安解消!親の入院・介護のしくみと手続きがすぐわかる本 (城島明彦,大津佳明著.。秀和システム)
介護で仕事を辞めないために:親が元気なうちからやるべきこと52 (グループ・けあ&けあ21著・編集。創元社)
≫【バックナンバー】40歳までに知っておくべきこと
・介護で会社を辞める「介護離職」を避けるために知っておきたいこと・親が突然倒れたらどうする? 親が元気なうちに知っておきたいこと
・【知らないと損】シングルマザーや貯金ゼロで子供を産んでも大丈夫?
・30代で投資を始めてみよう。お金オンチこそ投資を始めるべき理由
・資産を増やすつもりが逆効果? 初心者が手を出してはいけない投資とは
・医療保険の保険料を安く抑える超簡単な方法。月々2千円で安心を買う
・自然とお金が貯まる買い物の極意「投資・消費・浪費」のうちどれ?
-
-
今来 今(フリーライター)
神戸出身。編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。
twitter@imakitakon