自分磨き

「子どもを育てられない親」はいます。【特別養子縁組③】

なんで子供が欲しいの?

前回は、「特別養子縁組をした家族の幸せの築き方」を、一般社団法人ベビーライフ代表、篠塚様に語っていただきました。

今回は、子どもをたくす親の葛藤や、孤立しない子育てのヒントなどをおうかがいしました。


ベビーライフとは

赤ちゃんを産んでも育てられない事情のある方への相談事業、および特別養子縁組の支援を行っている一般社団法人。民間団体である強みを活かし、養子を受け入れた後のケアにも力を入れている。


特別養子縁組とは

実父母の養育が困難な6歳未満の子どもを、養父母が引き取り、法的に親子関係になる制度のこと。その際、実父母との法的な親子関係は解消される。


子供をたくす理由

子供をたくす理由

―ベビーライフさんでは、年間何件「養子縁組」が成立しているのでしょうか?


私どもの場合、メールや電話での相談は、年間600件ほどいただいています。産みの親からの問い合わせが400~500件、養父母からの問い合わせが100~150件程度で、圧倒的に産みの親からの問い合わせが多いです。そのため、養父母は常に不足しており、アメリカ、カナダの養父母に頼らざるを得ない状況です。


―実父母が、子どもを手ばなさなくてはならない理由は何なのでしょうか?

やはり経済的な理由が多いですね。


ただし、経済的問題だけでいうと、実は生活保護を受けて育てることはできるはずなんです。実際に養子に出そうと決意する方は、身体的または精神的な病気で働けない状態にあるとか、DV、家族の支援が受けられない、社会から孤立している、など、経済的要因とは別の要因が複合的にからんでいることがほとんどです。


産みの親としては、自分で育てられない状況であれば、児童養護施設に頼むより、「養子縁組で子どもと法律的な関係を結び、子どもを守ってほしい」「施設より家庭で子どもを育ててほしい」といった想いがあるようです。


最善の選択をするために、思い切り悩もう

最善の選択をするために

―産む前から相談を受けることが多いのでしょうか?


妊娠期から相談受けているので、妊娠中期~後期にかけての相談が一番多いですね。


生まれてからの相談もありますが、数年子育てをされている場合は、なかなか手ばなせないことが多いですし、その場合は「どうしたら育てられるか」を共に考え応援します。


また、うつや病気で育てられなくなった場合には、施設に一時的に預けておいて、病気が改善したらまた親子で暮らせるというパターンもありますよね。相談に来られた方のシチュエーションに応じて、養子が適切なのかどうかを、一緒に考えていきます。


出産前から相談いただいていて、「養子に出したい」と考えている方でも、産んだ後「やっぱり自分で育てます」という方も多いんです。ベビーライフでは、出産したあと必ず意思確認をしています。

「養子に出すべきか」「自分で育てられるのか」など、悩む過程って大切だと思うんです。


悩みながら、産みの親御さんが、最善の方法を自ら決定する。この自己決定を支援するのが、私達のような民間団体の役目だと思います。共に考え、悩んでいくというのが私達のスタンスです。

ですから相談=即養子、ということではありません。昨年は400件の相談のうち、実際に養子縁組につながったのは60件強でした。


―相談=必ず養子に出す、ということではなく、最善の選択肢を一緒に考えていけるんですね。次に、養子を受け入れる側、養父母についておうかがいします。どういった方が養子を望まれるのでしょうか?


1割程度はすでに子どもがいて、「兄弟を作ってあげたい」と希望するご家庭です。そのほかにも様々なご事情がありますが、一番多いのは、不妊治療を断念した方です。「不妊治療で結果が出なかった」というマイナスの感情を引きずっている方が多いのですが、それをどうプラスに変えていくか、が重要だと思います。


「自分は産めなかった」と罪悪感を抱いている方もいるのですが、産むことだけが家族を作ることではありません。過度な罪悪感は子育てにも影響をおよぼしかねませんから、気持ちを切り替えていく必要があります。


辛い過去にふたをしたり、過去を否定する必要はありませんが、過去よりも、これから先、家族を作っていけるということに目を向けて、新しい気持ちで子どもを迎え入れていただければと思います。


養子縁組は「子どもを選ぶ」制度ではない

子どもを選ぶ制度ではない

―養子を受け入れるさい、赤ちゃんの性別などに希望は出せるのでしょうか?


子どもへの期待がふくらみすぎて「養子の場合は、選べるんでしょ?」という思考回路になってしまう方もいらっしゃいます。

ですが、ベビーライフでは、そういったリクエストにはあえて答えないというスタンスです。


リクエストする方もいらっしゃいますが、自分で出産する場合も性別や健康状態など、誰にも分からないですよね。リクエストをいただき、それに答えてしまうと、子どもを選ぶことになってしまう。リクエストには答えるつもりもないし、答えられません。仮に答えられたとしても、それは健全な形での縁結びではないと考えています。


たとえば「家を継ぐための男の子がいい」と言われても困ってしまいます。特別養子縁組は、家制度を維持するための養子縁組ではなく、あくまで子どもたちの福祉のための養子縁組であるということを理解いただければと思います。


国からの補助は発達途上

国からの補助

―ベビーライフで実際に養子を受け入れるさいの費用はどれくらいかかりますか?国からの補助はあるのでしょうか?


国内の養父母の場合、トータル200万円前後を想定していただければと思います(2017年現在)。


費用は、交通費・医療費・赤ちゃんの一時的な養育費・人件費などを含んでいます。

保育施設がここ(ベビーライフ)から5分のところにあるのですが、24時間体制でスタッフが3人詰めています。あとは、全国飛び回っているソーシャルワーカーをトレーニングする教育費、人件費などですね。


国からの補助はありませんが、去年、2年以内に施行される法律で助成金が出ると決まったので、今後の制度づくりに期待したいと思います。


孤立しない子育てを!地域のサポートにつながろう

孤立しない子育て

―ベビーライフでは、養子を受け入れたあとのフォローもされているのでしょうか?



はい。ベビーライフには、「保育士、看護師、助産師、保健師、社会福祉士」などの専門職が多いので、専門職の立場から、養育の相談を受け付けています。また、現在は年に一回、養父母と子どもたちの集まりを実施していますが、こういった当事者同士の集まりも増やしていく方向です。


同じ養父母の立場から、「うちではこういう問題があって」「こう取り組んだらこうだった」など語り合える場所を作っていきたいと思います。


ただ、子育てにおいて一番大切なことは、地域のコミュニティのサポートにつながることなんです。

地域の保健センター、コミュニティ広場、クリニックなどに出かけて行ったり、地域の保健師さんとつながって養育の相談をしたり、保育園を利用したり。

自分で産んだ子どもであれ、養子縁組で授かった子どもであれ、子育てという視点に立てば同じことですから、養子縁組に特化した支援だけではなく、地域の支援につながることも大切です。

子育ては孤立してしまいがちですから、社会的リソースはなんでも使うという姿勢が必要だと思います。


次回は、真実告知(養子であることを子どもに伝える)や、実親と子どもとの交流の是非、についてうかがいます。



▼ベビーライフHP



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家族の形・幸せの形はひとつじゃない【特別養子縁組④】

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・#10:同性カップルと異性カップルの違いとは?【同性カップルの子育て②】


・#11:LGBTやステップファミリーでも「普通に子育てできる」ために必要なこと【同性カップルの子育て③】


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  • 今来 今(フリーライター)

    神戸出身。編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。

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