自分磨き

LGBTやステップファミリーでも「普通に子育てできる」ために必要なこと【同性カップルの子育て③】

なんで子供が欲しいの?

前回は、同性カップルと異性カップルとの違いや、同性カップルの子育てを周囲にカミングアウトするべきか、について「にじいろかぞく」代表の小野さんにお話しをうかがいました。


今回も引き続き、小野さんにステップファミリー(再婚や事実婚により、血縁のない親子関係や兄弟姉妹関係を含んだ家族形態)の子育て、同性同士の子育ての実際と、問題点についてお伺いします。


小野 春さん

会社員。「にじいろかぞく」代表。

一度の離婚を経験後、女性のパートナー西川さんと同居をスタートさせ、3人の子供を育てている。同性カップルの子育てに悩んだ経験から、「にじいろかぞく」を立ち上げ、同性カップルの子育て支援を行っている。


ステップファミリーの子育て

ステップファミリーの子育て

―小野さんの家族は、小野さんのお子さん2人と、パートナー西川さんの娘さん1人で構成されています。西川さんの娘さんからはすぐに受け入れられましたか?


最初はまったく認めてくれませんでした。


父親も面会できる状態ですし、娘にとっては、父も母もいる状態なので、私の立ち位置が定まらなかったんです。私は家族幻想にまみれている人間なので、「お母さんと呼びなさい!」と強制したりしましたけど、娘は呼んでくれない。目の前に自分を産んだお母さんがすでにいるんだから当然ですよね(笑)。


当時はすごく悩んでいたので、ステップファミリーの方の集まりに参加したりしながら、解決の糸口を探していました。


そこで、「お母さんと無理に呼ぶように仕向けるのは、子供にとってストレスになる場合もある。そういうのはやめましょう」と言われて、様々な事例を教えていただき、「家族とはこうあるべき」という凝り固まった考えが次第にほぐれていきました。


パートナーと暮らし始めて、「こんなに大変なのはLGBT家族だからだ!」と最初は思っていたんですけど、よく考えてみると、それよりも「ステップファミリーだから」という要素が大きかったんですよね。


娘が懐かないことに最初は戸惑っていたし、焦っていました。娘は「あんた誰?」という態度で、最初の方は私もよく泣いてしまっていました。


それでも一緒に暮らしていこう、と思えたのは、子供たち同士の仲が良かったからです。


ステップファミリーは落ち着くまでに最低でも4年はかかる、という話を聞いたことがありますが、私自身も最初の3年間は死ぬかと思うくらいハードでしたね。それに私の中では家族だと思っているのに、一歩外に出たら家族として扱ってもらえない、というのもすごく辛かったです。


でも今は、いろいろと思い込みを捨てられた、というか諦められたので、「娘のお母さんじゃないけど、お母さん風のなにか、サブお母さん」みたいな立ち位置でいいかな、と。

娘にいわせると、私は「保護者」「親」だそうです。


完全無欠な母親になる必要はない、私は親なんだからって思えたときに、気が楽になりました。


法的効力がなくてもパートナーシップ条例が大切なワケ

同姓カップル子育て

―小野さんは世田谷区にお住まいということですが、パートナーシップ条例には登録されていますか?パートナーシップ条例には同性カップルの子供を法的に保護するような役割もあるのでしょうか?


世田谷区のパートナーシップ条例(※1)は、作る準備にも少しですが関わらせていただいたので、初日に登録しに行きました。


大半の方が勘違いされているんですけれど、パートナーシップ条例は法的な保障・権利は何一つないんです。ですから、子供に対する権利ももちろんありません。


渋谷区のパートナーシップ条例には、差別的な発言をした事業者がいたら、区が勧告してくれるという制度があるようですが、世田谷区にはそういった制度もありません。ですから、事実上、ただの記念というか、あまり効力はないんですよね。


「公的な補償が無いのに登録するメリットなんてあるの?」と思われる方も多いと思いますし、気持ちは分かります。


ですが、私は同性カップルがいるんだ、と可視化させるための大きな一歩だと思うんです。可視化させ、社会的認知を広めることで楽になる場面ってたくさんあんですよね。


例えば、世田谷区がパートナーシップ条例を導入した、というのは大きなニュースになりましたよね。当時私に乳がんが見つかって、主治医に説明を受けることになったんです。当然パートナーも同席しました。「どういったご関係ですか?」と聞かれたのですが、そのときに「あのニュースになっている同性パートナーなんです」と伝えることで、スムーズに理解していただけました。


現在のパートナーシップ条例は、同性婚に準じるものだと勘違いされている方も多いのですが、実際には事実婚ですらなくて、まだまだ不十分な制度です。同性婚の実現なんてまだはるか先のように感じられます。


国が動くのはまだ先かもしれませんが、民間企業の受け入れは始まっていると思います。


例えば、世田谷区のパートナーシップ条例に登録した友人の一人は、JALにかけあって、マイレージを同性カップルでも共有できるようにしてもらったそうです。民間企業で、家族割りなどのサービスを同性カップルでも使えるようにする動きは出てきています。


特別なことを望んでるわけじゃない。皆と同じに

同姓カップル子育て

―民間企業でも、同性カップルの権利に関する理解が進んでいくといいですね。まだまだ法的な整備は不十分だと思いますが、今後、どのように変わっていくことを望まれますか?


何も特別な保護を求めているわけじゃないんです。

だから最近、「同性婚」って言葉はどうなんだろう、って思うこともあるんですよね。同性でも、異性でも、結婚は結婚。婚姻が平等になってくれればいいと思っているんです。


一言でいうと、皆と同じようになりたいんです。

同じことをしているんだから、同じに扱ってほしい。


例えば「同性カップルは子育てしないから、婚姻で保証しなくていい」という意見があると思います。ですが、こちらからすると、「いや、子育てしている人がいっぱいいるんで、そこを保証してくれないと困るんですけど」と。


子育てしている人、ずっと一緒に暮らしている人は、同性カップルでもたくさんいます。


少子化少子化と言って「子供を産みたくない異性愛者」の人にまで圧力をかけているわりに、「子供を産みたいと望んでいる同性愛者」の言葉は無視しているのはなぜなんでしょう?


「同性愛だから」と差別することなく、社会保障を平等にしてほしいですね。


普通に子育てできる世の中へ

同姓カップル子育て

法律の整備に加えて、社会的な認知が同性カップルの子育てには必要だと思います。


今回インタビューを受けさせていただいたのも、同性カップルで子育てしている人がいる、ということを知ってもらえる機会になれば、と思ったからです。


LGBTの子育てというと、奇抜なものを想像される方が多いんですけど、内実は申し訳ないほど平凡でつまらないんですよ。「今日は暑いから水筒のお茶凍らせよう」とか(笑)。


家庭内は他の家庭と変わらないんですよね。それが社会的なこととなるといろいろ弊害がでてくるんです。「学校で家庭の話をしにくい」とか。同性カップルで子育てしている人たちがいるんだ、と認知が広がれば、対外的にも楽になってくると思います。


まずは知ってもらうこと、そうすることで、より子育てしやすい環境になると信じています。


同姓カップルの子育てはやはり、数でいうとマイノリティなんですね、それゆえに辛い想いをしているカップルもたくさんいます。「同性カップルで子育てするんだから、頑張って子育てしなきゃね」とか言われてしまうこともあります。


男女の家庭でも、子育てって大変じゃないですか。そこを「同性カップルは自分たちのわがままで同性同士で子育てしているんだから」と言われがちで、弱音が吐きにくいんです。


弱音がはけない育児ってとてもハードですよね。


同性カップルでも子育ての大変さは異性カップルと変わりません。

同じように子育てして、同じように家族を築いています。


ですから、同じように、普通に安心して子育てができる環境になることを望んでいます。


―ありがとうございました。


•パートナーシップ条例

同性カップルを「結婚に相当する関係」と認め、お互いを「パートナー」とする証明書を発行することなどを定めた条例。日本では渋谷区と世田谷区に導入されている。



同性カップルの子育てについては、社会的認知はひと昔前よりは進んでいるとはいえ、法律の整備などまだまだ課題が山積みです。「誰もが子育てしやすい世の中」を実現するためには、様々な家族の形を、存在しないものとして無視することなく、認めていく必要があると感じました。


次回からは、「血のつながらない家族の子育て」についてより深く考えるために、養子縁組について取り上げます。



≫NEXT

「血のつながりのない子ども」はかわいそう?【特別養子縁組①】

《バックナンバー》なんで子供が欲しいの?

・#6:同性カップルも子育てできる?【同性カップルと里親①】


・#7:「同性カップルによる子育ては危険」の根拠【同性カップルと里親②】


・#8:同性カップルに育てられた子供はかわいそう?【同性カップルと里親③】


・#9:「必ずしも女が好きなわけじゃない」女性が女性と暮らすワケ【同性カップルの子育て①】


・#10:同性カップルと異性カップルの違いとは?【同性カップルの子育て②】



  • 今来 今(フリーライター)

    神戸出身。編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。

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