
「必ずしも女が好きなわけじゃない」女性が女性と暮らすワケ【同性カップルの子育て①】#9
- 更新日:2019/05/15
- 公開日:2019/05/05
20代後半になると、結婚の報告だけではなく、離婚や再婚のお知らせを受ける機会も増えてきます。
昨年行われた厚生労働省の調査によると、結婚する人の4分の1が再婚だとか。(※1)
その中には子連れで再婚する人も多いでしょう。
今回は、子連れで新たな家庭を築いたある女性、小野さんにインタビューを行いました。
小野さんの家庭が多くの再婚家庭と違うのは、女性同士のカップルだということ。
第一回目の今日は、男性しか好きにならなかった小野さんが、女性のパートナー西川さんと巡り合ったきっかけと女同士で家庭を築くことへの葛藤をお伺いしました。
小野 春さん
会社員。「にじいろかぞく」代表。
一度の離婚を経験後、女性のパートナー西川さんと同居をスタートさせ、3人の子供を育てている。同性カップルの子育てに悩んだ経験から、「にじいろかぞく」を立ち上げ、同性カップルの子育て支援を行っている。
離婚→同性カップルになるまで

―まずは小野さんが現在のパートナー、西川さんと出会われたきっかけをお伺いしたいと思います。小野さんは一度ご結婚されているということですが、もともとは男性が好きだったのでしょうか?
はい。幼稚園の初恋も男の子だったし、男性としかお付き合いしたことがなかったんです。
ただ、高校は女子高に通っていたんですけど、一人かっこいい女の子がいて、その子のことが好きかも、って思ったことはあったんです。当時は恋愛をしたことがなかったので、その気持ちが恋なのか、単なる憧れなのか、よく考えずに通りすぎてしまいました。
今考えると、「考えないようにしよう」と無意識に気持ちにブレーキをかけていたのかもしれません。
ですから、実際に女の子とお付き合いする、っていう経験は、今のパートナーに出会うまではなかったんです。
「女性」が好きなわけじゃない

―それがいつ、女性が好きだと気が付かれたんでしょうか?
自分のセクシャリティに特に疑問をいだくことなく、26歳のとき結婚したんです。結婚して子供もできて、このまま平和に家族で暮らしてくんだろうな、と思っていました。けれど、結婚後ほどなくして、夫とうまくいかなくなってしまって、できるなら修復したいという想いはあったんですが、結果離婚してしまいました。
自分がまさか離婚するなんて思ってもいませんでしたから、当時はかなり悩んだし、混乱していました。
私の何が悪かったんだろう?どうしてこんなことに?…考えても仕方のないことをぐるぐる考え続けて、その中の一つとして、もしかして自分のセクシャリティが原因なんじゃないか、って思ったんです。離婚はセクシャリティとは直接関係がない、と今は思うんですけど、そのときはあらゆる原因を考えていました。
セクシャリティについて考えていく中で今のパートナーと出会ったんですが、自分の中では、女性を好きになっている、という感覚はないんです。
「私はバイセクシャルです」と言ってはいます。
そうすると「女の人も好きになるんですよね?」と聞かれるんですけど、ちょっと違うんですよね。
「男性~女性らしい男性~男性らしい女性~女性」とグラデーションがある、と考えていただいて、私は、男性プラス性別としては女性だけれど、女性として生きていくのがちょっと難しいかな、という女性までが好きになる範囲です。ちょっとややこしいんですけど基本的には男性が好きで、「男役割を担った方が自分に合っていると考えている女の子」も私の中では男カテゴリに入る、と考えてもらえばいいと思います。
一方、パートナーは同じバイセクシャルとは言っても、元から女性が好きで女性と若いころから付き合ってきているんですよね。本人は社会的、身体的にも女性だけど、女性という役割に違和感があって、小さいときから「男だったら楽だな」と考えてきたようなタイプです。
同姓愛への偏見と受け入れるまで

―バイセクシャルといっても様々なタイプがあるんですね。現在のパートナー西川さんとの出会い、家族を築くことになったきっかけを教えていただけますか?
先ほどお話ししたように、離婚した当初は「なんで離婚するハメになってしまったんだろう」と日々考え込んでしまっていて、その原因のひとつが私のセクシャリティにあるんじゃないか、と思ったんです。
高校生のときに、女性を「好きかもしれない」と思ったことがあったので、「もしかして私って完全な異性愛者じゃないのでは?」って思ったんです。ですが、実際に私はそれまで同性愛者の人を見たこともなかったので、実際に会って確かめてみよう、と思ったんです。
そう考えて、インターネットでバイセクシャルの女性が集まるサイトを訪れるようになりました。男の子と付き合うこともセックスもできるので、レズビアンと名乗るのは違うな、と思ったのでレズビアンのサイトは敷居が高かったんですね。
そのサイトは「彼氏がいるんだけど女の子が気になる」「夫がいるんだけど女の子も好き」というコンセプトのサイトで、運営していた女性も、異性愛の女性だったんです。
そのサイトのオフ会でパートナーと出会うんですけど…最初のオフ会のことは今でも忘れられません。ほんと恥ずかしいんですけど、「きっと、ごついピアスとか付けていて、髪も金髪で逆立てたりしてるパンクな人たちが現れるんだろう。怖くなったらすぐ帰ろう」って思ってたんです(笑)。
当時は偏見だらけで、反社会的な人が来るに違いない、と(笑)。ですが実際は、当たり前なんですけど、どこにでもいるすごく普通の人ばかりだったんです。
私ってほんと偏見だらけだったな、と頭からぶん殴られたような気持でした。
―同性愛に対する偏見はすぐになくなりましたか?
二度目のオフ会に参加したとき、パートナーに出会ったんです。
それですぐに仲良くなったんですが、やっぱり自分の中の偏見は消すことが難しかったですね。
現に、好きな人ができているにも関わらず、自分が同性愛者だと思われるなんて絶対に嫌だ、って思っていたんです。
私はこれでいいんだ、と思えるまでに4年くらいかかりました。
私が自分のセクシャリティを受け入れるまで、パートナーはよく耐えてくれたと思います。シングルマザーだった私の生活が苦しくなっていたとき、見かねたパートナーが「手伝おうか?家事大変だったら一緒に住もう」と声をかけてくれたんです。
彼女は親切心から申し出てくれてるのに、私はまだ当時偏見から抜け出せていませんから、「同居したら同性愛者だと思われる!村八分になる!」って思いこんで拒否したりしていました(笑)。
今考えたら、村八分っていつの時代だって話なんですけど(笑)。
パートナーに呆れられつつも、いつの間にか半同棲するようになって、なし崩し的に一緒に住むようになったんです。
(※1)平成 28 年度 人口動態統計特殊報告 「婚姻に関する統計」の概況
離婚を経て、パートナーと巡り合った小野さん。
パートナーである西川さんも離婚経験があり、一人のお子さんがいました。
次回は、二人のお母さんによる子育て事情に迫ります。
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同性カップルと異性カップルの違いとは?【同性カップルの子育て②】《バックナンバー》なんで子供が欲しいの?
・#4:「トイレで出産した17才未婚の母」は不幸だと思いますか?前編
・#5:「トイレで出産した17才未婚の母」は不幸だと思いますか?後編
・#6:同性カップルも子育てできる?【同性カップルと里親①】
・#7:「同性カップルによる子育ては危険」の根拠【同性カップルと里親②】
・#8:同性カップルに育てられた子供はかわいそう?【同性カップルと里親③】

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