自分磨き

仕上げ歯磨きを嫌がる子は、我慢が足りないの?〜感覚統合という視点

仕上げ磨き嫌

「感覚統合」という言葉を聞いたことはありますか?


例えば、私たちは日常、様々な音に囲まれて暮らしています。向かい合って話している相手の声以外に、外を走る車の音、風が窓を揺らす音、子どもたちの足音、鳥の声など、耳はたくさんの音をキャッチしています。このキャッチした音の情報は「脳」で交通整理をされ、優先順位の高い順に大きな音として認知されます。

どんなに周りの音がする中でも、目の前にいる話し相手の声がもっとも大きく聞こえてくるのは、こうした脳の機能のおかげなのです。(※1)

この「感覚を通して入ってくる情報の交通整理」が「感覚統合」。


※1 参考:「発達障害の子どもを理解する」著 小西行郎 集英社新書


「うちの子はどうしてこんなに集中力がないのかしら?」

「なんでこんなにこだわりが強いの?」

「熱いとか、痛いとか、うるさいとか、過敏すぎない?」


そんな気になる子どもたちの様子。

「がまんしないさい」と言っても毎日が戦いのようになっていってしまうし、かといって「考え方」「とらえ方」で解決しようとしても「いつもそんな余裕のあるメンタルではいられない~」となるし。

こだわりの強さ・頑固さを持つ子たちの「絶対やだ!」「絶対これ!」と日々向き合っているママたちへ、「感覚統合理論」 をご紹介いたします。


Case6 仕上げ歯みがきの攻防

歯磨き断固拒否のマンガ

あみたんとママの攻防を目の当たりにした私は、

「そんなに嫌がるなら、仕上げ歯みがきやめちゃだめなのかな?乳歯って生え変わるじゃん?むしろトラウマ的体験になって愛着形成に問題出ないのかなこれ?」という発言をした。

しかし、そう言いたくなるくらいにあみたんの拒絶反応はすごかった。


「本にそう書いてあったから…」と言いながら、毎晩がんばって仕上げ歯みがきをしていたママ。でもママだって、あみたんがこんなに泣いていやがることなら、本音としてはやりたくない。

あみたんのママは、現在のじゃ塾の運動療育部門で感覚統合ワークを担当するまりん先生だ。


仕上げ歯みがき以外にも、髪の毛を切らせてくれない・結ばせてくれない、洋服はいつも同じもの等々、あみたんのこだわりは多岐にわたり、そしてその意思は石のように固かった。


生き方そのものが柔軟な、あみたん一家。ママもおばあちゃんも、そんなあみたんの「こうしたい」という主張やその時々の気持ちを大切にしながら育ちを見守るものの、これ、なんとかもうちょっと楽にいかないものかしら?とは思っていた。


「がまんではなんともならない」という理解

感覚統合で重視される感覚のうち、今回関係しているのは、痛み・温度・圧力などを感知してる「触覚」。


そもそも感覚には、「原始系(本能的)」と「識別系(認知的)」のふたつがあり、赤ちゃんが口元に触ったものに吸いつく吸てつ反射などは、原始系の触覚反射の代表的なものです。

生命の維持をする上で、必要なものを「取り込む」反応をしているというわけ。


これに対し、生命維持のもう一つの大切な機能は、危険回避のための「防衛反応」。

頭、首、脇腹など、ダメージをくらうと生命の危機に直結する部分への有害刺激を感知した時に、そこから身を遠ざけるといった反応のこと。(※2)


※2 参考:保育者が知っておきたい 発達が気になる子の 感覚統合」著 木村順/協力小黒早苗 GAKKEN)

あみたんの場合、仕上げ歯みがき断固拒否は、この「触覚防衛反応」。

原始系の反応が強く出ている状態である、ということ。防衛のスイッチが入ってしまうと本人にはどうしようもできないので、「慣れ」や「がまん」では解決できないんです。もちろん、ママの努力不足でもコミュニケーション不足でもない。

言って聞かせて解決できることではないんだということを、知っておいて欲しい。

原始系>識別系、を、識別系>原始系に

さて、とはいえ「仕上げ歯みがきしなくていいじゃん」というわけにもいかないとしたならば、これはどうやって解決すればいいのでしょう?


原始反射は成長とともに見られなくなりますが、それは無くなったわけではなく、「識別系」のネットワークが働き出し「脳」の交通整理がされるようになったため。

目で見て認知する、触ってみて認知する、音で聞いて認知する。こうした「認知機能」=「識別系」のはたらきが優位にはたらくと、「原始系」の反射にブレーキがかかるのです。

吸てつ反射を例にとると、「口元に触れるものが何であれ吸いつく」(=原始系)から、「目で見てそれが何かを確認してから口に入れる」(=識別系)という変化が起こるということ。


あみたんの場合は、「歯ブラシを自分で持ち、その手にママが手を添えて動かしてあげる」ということを試してみました。自分の手で歯ブラシを持つことで識別系のスイッチが入り、原始系の苦痛が少し抑えられるのです。


触覚防衛反応は「防衛」でしかないのだけれど、触れようとする大人の側から見ると「拒絶」や「攻撃」と感じられてしまったりしますよね。


手をつなごうとしたら払いのけられたといった経験、ありませんか?

ドライヤーで髪の毛を乾かそうとしたら、「熱い痛い」と泣きじゃくられたというママもいました。

大切にしているが故の行動なのに、こばまれるってショック……。言葉には出さないけれど、ちくっと心に刺さる体験をされてきている方、けっこういらっしゃるんじゃないかな。


こんな時、「もしかして、触覚防衛反応が出ているのでは?」という視点を思い出してみる。

そうすると、同じ出来事なのに、なんか気持ちも楽。

子どもたちとの間の愛着の問題ではないということ、ぜひ、心に留めておいてください。



追記(2017/07/19 19:45 更新)

本記事公開後に、「『 仕上げ磨きはそんなに無理にしなくてもいいんじゃないか?』ということについて、患者さんにもよく聞かれることなのでお伝えしておきたいなと思って」と 、歯科衛生士の細田徳恵さんからこんなお声を頂きました。

乳歯は永久歯に比べて軟らかいので、 仕上げ磨きをしないと 虫歯になりやすく進行も早いので、治療が必要になってしまうことも多くあります。お子さんにとっては、仕上げ磨きに比べると、治療の方が苦痛を伴うことです。仕上げ磨きをちゃんとしなかったことにより、後々余計に可哀想な思いをさせることになりかねません。

仕上げ磨きは本来気持ちの良いものであるはずなのですがお母さん達は「一生懸命に磨こう」と頑張るあまりに、痛みや苦痛を伴う磨き方になってしまっていることがとても多いように感じられます。

障害者歯科や一般家庭でも、お子さんが嫌がるには嫌がるだけの理由がちゃんとあるのだと思います。 お母さん達が、ちゃんと正しく痛くなく気持ち良く磨く方法を身に付ければ、お子さんが嫌がることは格段に少なくなると思います。


歯ブラシで磨くのが難しい場合は、小さいサイズのスポンジブラシから練習してみるとか、口を大きく開けるのが難しければタフトブラシ(インタースペースブラシ)で始めてみるとか、仕上げ磨き用の歯ブラシは毛が硬めで歯肉にあたると痛いので、軟らかい歯ブラシで磨いてみるとか。

嫌がるには理由がある、防衛したくなるのには理由がある、と思うのです。

色々と試してみるといいかもしれません。


細田歯科医院 歯科衛生士

太陽歯科衛生士専門学校非常勤インストラクター細田徳恵



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幼児から大人まで通える療育塾。

発達症、発達症のボーダー、学校や家庭での問題行動全般、不登校、拒食症、統合失調、ダウン症など、子どもたちに同じケースはひとつとしてありません。 自宅の一室で、「語らい」や「遊び」「学び」の中から発見される子どもたちの心の声を聴きながら、ひとりひとりに、オーダーメイドな授業、教育カウンセリングを実践しています。また、のじゃ塾の療育メソッドをもとに、感覚統合を促進させる運動療育チーム「まなまりんManaMarine」を発足。



  • いしづかみほ(学習・療育のじゃ塾塾長/日本子ども虐待防止学会会員/イラストレーター)

    「子どもたちが本来持っている才能を存分に発揮できるよう双方向で作る授業」と「彼らのありのままを理解する教育カウンセリング」を軸とした療育を実践しています。

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