
同性カップルも子育てできる?【同性カップルと里親①】【連載】なんで子供が欲しいの?#6
- 更新日:2019/05/15
- 公開日:2017/07/15

「子供を産むこと」や「子育て」について考える連載も今回で6回目となりました。
この連載を始めるにあたり、友人に「子供が欲しいか」「子供を産みたいか」についてアンケートを行いました。現在未婚で子供がいない人に多い答えは「いつか欲しいと思っている」「いつか産むんだろうなとは考えているけれど、今ではない」という答えでした。
既婚者では「周りからのプレッシャーはあるけれど、まだ先だと考えている」という答えや「現在不妊治療をしている」という答えなど、子供について概して「いつか欲しい」と考えている人が多い印象でした。
けれど、友人の中の一人は、「欲しいけれど、現実的に考えて無理だと思う」と答えました。彼女は同性愛者で、現状の日本の法律では結婚もできませんし、養子も迎えることができません。
「養子が仮に迎えられるとしても、レズビアンの家庭で育てることについて、周りに受け入れられるかが分からないし、幸せにできる自信がないから子供は無理だと思う」とのことでした。
同性同士のカップルやLGBTの方が家族を作ることは、異性愛者に比べて、日本ではまだハードルが高いことのようです。ですが、不可能ではありませんし、現実には家庭を築いている人、子供を育てている人はたくさんいます。

今回は、ひとつの家族の在り方、子育ての在り方として、LGBTと子供の関わり方、および里親制度の現状と課題について考えてみたいと思います。
今回お話しをお伺いするのは、一般社団法人レインボーフォスターケア代表理事、藤めぐみさんです。
藤めぐみさん
一般社団法人レインボーフォスターケア代表理事。法務博士(専門職)。1974年豪州・シドニー生まれ。大阪府育ち。 大阪大学文学部卒業、関西大学法科大学院修了。衆議院議員公設秘書、自治体職員などを経験。2013年、LGBTと社会的養護の問題について考える団体「レインボーフォスターケア」を設立。
一般社団法人レインボーフォスターケアとは?
「LGBT×社会的養護」をキーワードに、LGBTが里親として子供を養育できることを目指し、調査や講演活動を行っている。
藤さんにお話しをおうかがいすることになったのは、2017年2月に、日本で初めて同性カップルが里親に認定された、というニュースを目にしたことがきっかけです。
同性カップルが里親に?
結婚していないと里親認定されないのでは?
里親と養子はどう違う?
などの疑問が多々ありました。
インタビューを行うなかで、さらに、知らなかった事実が次々と明らかになりました。
同性愛者の方だけではなく、不妊治療をされている方や、養子に関心がある方にとっても有意義なお話しをうかがうことができました。
インタビューの模様を3回連続でお届けします。
里親と養子の違い

―日本で初めてゲイカップルが里親に認定されたというニュースを聞いて、里親は結婚していなくてもなれるんだ、と驚きました。
意外と知られていないことなんですが、里親と養子縁組には違いがあるんです。
社会的養護における里親と養子縁組は、実親が養育に適さない場合に行われる、という点では共通しています。その事情は、虐待、経済的理由、逮捕されて刑に服している、病気、など様々です。
違いはというと、簡単に言うと、法律上の親子関係を結ぶのが養子、お子さんを預かるのが里親。養子には特別養子縁組と普通養子縁組の2パターンあります。特別養子縁組の場合、元の親との法律関係を断ち切りますが、普通養子縁組は実の親との関係も続いています。
特別養子縁組ですと、結婚していないとダメなので、現行の法律では同性カップルは養子縁組できません。
ですが、里親だと「結婚していないとダメ」という規定はないんです。
今年2月に同性カップルが里親に認定されていたことがニュースになりましたが、これは厚生労働省が認識したのは日本で初めて、ということであって、それ以前にも女性カップルに子供が委託されていた、という事例はあったらしいですね。
ですが、その場合は「それぞれが単身者として里親の認定を受け、二人で子供を養育している」という形でしたので、同性カップルを一つの世帯として認識し、里親認定し、子供を委託した事例は、今回は初めてになります。
ゲイカップルの社会貢献

―藤さんがLGBTの里親認定を推進される活動を行うことになったきっかけはなんですか?
もともと、同性カップルの友人が多かったんです。
同性のカップルの場合、多くの異性カップルと違って、恋愛・結婚の延長に子供が生まれる、という風にはならないですよね。ですから、真剣に「子供をどうしよう」「産むのか産まないのか」「子育てはどうするのか」ということを考えている人が多かったんです。
そんな環境の中で、シアトルで出会ったソーシャルワーカーの方から、「ここでは同性カップルの方は里親の重要な人材であり資源で、とても頼りにしている」という話を聞いたんですね。実際に里親になったLGBTの家庭を見たりすると、すごくポジティブな印象を受け、日本でもそうなったらいいな、と思ったことがきっかけです。
―外国と比べて、日本は里親制度の整備がとても遅れていると聞きました。
そうなんです。
アメリカではシアトルやニューヨークなど、都市部ではLGBTが里親になることも普通のこととして受け入れられていますし、里親制度自体も根付いています。けれど、日本は諸外国と比べて里親制度についての認知度も低い状況です。
日本の里親制度が遅れているのは「実の親が里親委託に同意したがらない」など、さまざまな理由があるようです。
―自分では子供を育てられる状況ではないけれども、里親に出したがらない、ということでしょうか?
そうですね。
背景には「里親に出したら子供が取られる」といった里親制度への理解不足があるようです。また、「里親委託には同意せず、児童養護施設に預けてはいるが、施設で暮らす子供には一度も会いに来ない」というパターンもあり、里親に委託するのに実親の同意を得る必要はないのでは、という意見も出ています。
現状、日本は児童養護施設が多くて、子供を預ける割合でいうと施設が約85パーセント、里親が約15パーセントだと言われています。
今、国は施設を小規模化して里親を増やそうとしている、とは言っていますが、積極的に広報していないと伝わってこないですよね。そういう意味で、今回の同性カップルの里親報道は、里親という制度の認知度を広めるいい機会だったと思います。
次回は、同性カップルが里親になる社会的な意義についてお伺いします。
■一般社団法人レインボーフォスターケアのHPはコチラ
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「同性カップルによる子育ては危険」の根拠【同性カップルと里親②】《バックナンバー》なんで子供が欲しいの?
・#2:2人の子持ちが語る、子供を育てるメリット・デメリットとは?
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