自分磨き

間違っているのが子どもとは限らない〜忘れ物は誰のせい?

子供が忘れ物をしちゃうのは?

「のじゃき?うちの孫、発達障害なのかな?一度会ってみてもらえませんか?」

おばあちゃんの依頼を受け、りゅーちくん(以下りゅうちゃん)が初めてのじゃ塾に来たのは、彼が小学校2年生の5月のこと。

のじゃ塾にやってきたりゅうちゃんは挨拶もそこそこに、金魚鉢、本棚、タンスの上の小物、と順に観察を始めました。最初の部屋の観察が終わると別の部屋へ。テーブルの上、ピアノの上の小物、カーテンの模様と、見て回ります。「りゅうちゃん?勝手によそのおうちをじろじろ見ないで」おばあちゃんは心配して声をかけます。そんな言葉なんてまるで耳に入っていないようなりゅうちゃん。

ADHD、自閉症スペクトラム、学習障害等々、専門的な機関の助言を聞くことに抵抗が生まれてしまってついついそのままに……といった保護者の相談を受けることがあります。りゅうちゃんは、そんな中では早めに相談をいただいたケース。「発達症ではなく、単なるやんちゃで好奇心旺盛な子です」と、おばあちゃんには伝え、「少しのんびりと彼の成長を見守っていきましょう」とお話しました。

初対面の彼は、眉間の間に知性を宿す、利発そうなまなざしが印象的な少年でした。


Case5 「忘れ物」というワーク

りゅうちゃんのマンガ

「すみませんでした……」と謝りながら、おばあちゃんは帰っていきました。

おばあちゃんが帰るのを見届けてりゅうちゃんは言いました。

「ぼくね、おなかすいちゃった。手も足も動かない」


……


ドリルの顛末はさておき、カツサンドがあったので、とりあえずそれで腹ごしらえ。

「ぼく、肉すき!」と言ってカツサンドをほおばりながら、ノートに妖怪ウォッチの絵を描くりゅうちゃん。

「ねえ?ぼく、のじゃきの家で焼肉パーティーしたい」

「いいよ、じゃあ、肉の日にやろう。肉の日は、29日のことだよ」と答えました。

もぐもぐごっくん、として、りゅうちゃんは突然顔を上げ、真っすぐに私の目を見て、叫びました。

「にく、じゅうはちっ!」


そしてまた、カツサンドをもぐもぐほおばりながら、妖怪ウォッチの絵を完成させました。


疑いを抱いてしまうのは、相手の行動が原因ではない

よくよく話を聴いてみると、りゅうちゃんは、「こっちのリュックでいいのかな?ドリル入っていないけど」と、ちょっとだけ思ったそうです。けれど、おばあちゃんが持たせてくれるからきっとこっちでいいのだろうと判断したとのこと。


りゅうちゃんはかなり目端の利く子なので、大人の側はついつい「宿題をやりたくなくて、言わなかったのでは?」と、疑いたくなるところです。けれど、元来の育ちの良さとおっとりさ加減が相まって、物事をそのままに受け取る素直さ、純粋さが彼の中にしっかりと根付いていることも事実。


子ども=未熟

大人=成熟している


という観念にとらわれたままでいると、間違っているのは子どもたちの方で、その行動を改めさせなくては、と思ってしまう。けれど、子どもたちの表現していることをすべて信じてみたら、実はまったく違うものが見えてきたりします。

自分の心の中に「ずるい」発想があるから、相手の中に「ずるさ」が見えるということ。

それが「疑い」のしくみなのです。

疑いを抱いた時には、そんな自分の「ずるさを許すチャンス」なのだという気づきをもたらしてくれたきっかけとして受け止めてみる。自分自身も、子どもたちも、楽になっていくことと思います。


どうしていたら、忘れずに済んだのか

さて、疑いを手放すことができたら、次は今回のようなケースを防ぐ方法を考えてみましょう。


「あれだけ、宿題をやるって言って聞かせたのに」

確認を怠った自分への腹立たしさと、私へのすまない気持ちと、帰ってから宿題をやらせる気力が湧いてこないやるせなさとでいっぱいなおばあちゃん。りゅうちゃんへの注意にその分が乗っかってしまい、必要以上に怒りが湧いてきてしまいました。けれどりゅうちゃんをこれ以上問い詰めても叱っても仕方ないことを、おばあちゃんはよくわかっていらっしゃいました。


ここでひとつ、大切なことに私たちは気がつきました。


それまで、りゅうちゃんの授業は、私とおばあちゃんとママとがLINEで連絡を取り合い、日程も内容も決めていました。りゅうちゃんの授業なのに、そこにりゅうちゃんの意思は介在していなかったのです。曜日も固定ではなかったので、授業があることを前日や当日に知らされることも多かったようです。

普段からりゅうちゃんを数に入れずに、彼に関わることを決めてきていたのです。


その時から現在に至るまで、授業でやる内容はりゅうちゃんが決めています。学校の宿題をやるにも、何をやるかはりゅうちゃんが決めます。だから、必要なものを自分でリュックに用意して、塾に持ってきます。


うっかり持ち物を忘れちゃった時、りゅうちゃんは今ではこう言います。

「ぼく、忘れちゃった。ごめんなさい。宿題は家で自分でやるから大丈夫」

ずいぶんと、成長しました。ほんとうに、賢く素直な子です。



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♯3:あまりにもマイペースな我が子。一体いつまで待つのが正解ですか?


♯2:子どもに「なんでわかってくれないの? 」って思ってませんか?


♯1:大人の言うことを聞かない子ども、本当は何を考えているの?



のじゃ塾とは?

幼児から大人まで通える療育塾。

発達症、発達症のボーダー、学校や家庭での問題行動全般、不登校、拒食症、統合失調、ダウン症など、子どもたちに同じケースはひとつとしてありません。 自宅の一室で、「語らい」や「遊び」「学び」の中から発見される子どもたちの心の声を聴きながら、ひとりひとりに、オーダーメイドな授業、教育カウンセリングを実践しています。また、のじゃ塾の療育メソッドをもとに、感覚統合を促進させる運動療育チーム「まなまりんManaMarine」を発足。



  • のざきみほ(学習・療育のじゃ塾塾長/日本子ども虐待防止学会会員/イラストレーター)

    「子どもたちが本来持っている才能を存分に発揮できるよう双方向で作る授業」と「彼らのありのままを理解する教育カウンセリング」を軸とした療育を実践しています。

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