
「子供を産む、育てることは思いのほか大変だ」
とよく耳にします。
私は実際に子供を育てたことはありませんので、詳細はわかりませんが、子育てに膨大な時間と精神力が必要なことは確かでしょう。では、そこまでして子供を育てるメリットとはなんなのでしょうか。
「子育ては自然の摂理であり、メリット・デメリットで考えること自体がナンセンスだ」という見方もあるかとは思いますが、自分になんらかのメリットがないとあんな大変なことはしないだろう、というのが私の考えです。
今回は、子育てをするメリットを探るべく、中学校時代の友人で、現在2人の子供を育てている今日子に話を聞いてきました。
今日子プロフィール
27才で結婚。現在2才と4才の子供を育てながら、医療系企業の国際事業部、事務職として時短勤務中。
子供が苦手だった今日子が2人の子供を産んだ理由

今日子は学生時代から頭が良く、努力家で、在学中にアメリカ留学を果たすなど、国際派の女性でした。
大学卒業後は大手企業の国際事業部に所属し、得意の語学を活かして輸出入業務などを行っています。
彼女は少し体が弱かったために、激しい運動をすることができず、小さいころから母親に「身体が弱いあなたでも続けられる事務職についたら」と言われていました。当時は「そんな人生嫌や」と反発していましたが、今現在は母親の予言した通りの仕事についています。
「昔嫌やと思ってた仕事についてるのは、正直悔しい気持ちはあるねん。でも自分の能力を活かせる仕事やし周りから感謝もされるし、これで良かったんかなって」
そんな今日子はかなり奥手で、25才まで彼氏がいませんでした。
25才で初めて交際をはじめ、付き合って1年で結婚を決め、現在にいたります。
付き合っていたときから子供の話はしていたのかと聞くと「まったくしていなかった」とのこと。
では、なぜ子供を2人もつことになったのでしょうか。
「私は子どもが好きじゃないというか苦手やってん。でも妹に先に子供ができて、その子を夫と二人で見に行ったとき、夫が子供がほしいと思ったらしくって」
今日子自身も、自分に姪ができたことで子供への苦手意識が薄らいでいくのを感じたようです。
今日子夫妻の場合は、一度も子供を持つか否か、について話し合うことがなかったといいます。
「結婚すること=いつか子供を持つこと」という共通認識が二人の間にあったからこそ、そういった話し合いをもたずに子供を持つにいたったのでしょう。
私は、明確に子供が欲しいという気持ち、覚悟がない限り、子育ては難しいのではないかと考えていたのですが、今日子の場合はそうではなかったようです。
子供をもつことを積極的には考えていなかった今日子ですが、「不思議と妊娠が分かったときはうれしかった」と言います。
ワーキングマザーの日常。自分の時間は無い?

ところで、仕事をしながら働く女性は、どのように一日を過ごしているのでしょうか。
ここで、今日子の一日のスケジュールを紹介します。
5時30分
起床
洗濯機をまわす
朝食を作る
6時30分
子供たちを起こし、ごはんを食べさせる
7時
洗濯物を干す
朝食の後片付け
お風呂・トイレ掃除
簡単に部屋の掃除
ここまでを8時までにすると決めている
8時
身支度
8時20分
家を出る
子供たちを保育園に送りとどける
8時50分
電車に乗る
9時30分~15時45分(休憩は45分)
勤務
16時40分
保育園に子供たちを迎えに行く
17時
帰宅
洗濯物取り込む
晩御飯をつくる
17時30分
晩御飯を食べさせる
18時30分
夕食の後片付け
洗濯物をたたむ
17時30分
子供たちをお風呂に入れる
18時10分
ふきんを洗ったりコンロをふいたり、水回りの掃除
明日の保育園の準備
19時30分
子供を寝かしつける
「子供を寝かしつけた後は、昇進試験の勉強とか、英語の勉強とかしようと思ってるけど、疲れて寝てしまうことが多いねん。子供もまだまだ夜泣きしたりして熟睡できないことが多いし」
子供を産み、育てるメリット・デメリットとは?

上記のように今日子は日々、子育てにまつわる雑務に追われながら生活しており、自分の時間がほぼないということです。
子供がいない私からすると、上記のルーティンを繰り返すのは、正直とても辛いことのように思います。
現在、週一で掃除をすることすら精一杯なのに、なぜそこまで彼女が頑張れるのか、どのあたりにメリットを感じているのか、また、デメリットはどのあたりにあるのかを聞いてみました。
「デメリットっていうと、やっぱり自分の時間がなくなることかなあ。やりたいことができなくてイラッとすることはよくある。メリットはやっぱり、育児の喜びってあるというか、子供と会話したり遊んだり、その子といる時間が楽しいねん」
子供は日々できなかったことがどんどんできていくようになっていくので、その成長過程を見るのが喜びだと今日子は言います。
「それに、人間として、たぶん成長している気もするし」
子供がいない時代は、自分の技能を磨いたり、自分を楽しませる、磨くことにお金、時間をついやしていた今日子でしたが、今はベクトルが自分ではなく、他人に向くようになったと言います。
「自分が自分が」という思考から解放され、子供のために、夫のために、会社のために…など他者に目配りできるようになり、もっと大きく、「良い社会にしたい」とまで思えるようになったとのことです。
「でもそれがいいことかは分からへん。世の中には、自分が自分が!って自分の利益だけを追求していって、結果、それが世の中、社会のためになっている場合も多いやん?だから子育てしてる人はより社会に貢献してるとかは思わへん。なんてゆうか、私は積極的に今の生活を選んだわけじゃなくて、気が付いたらこんなことになっててんよ。でも子供を産んだら、もうあとはもう責任をまっとうするしかないやん。だってこの子らが存在してるのは私と夫の責任やもん。だから子育て大変やけど、トータルで考えたら楽しいと思ってやらなしょうがない、かな」
今日子の話を聞いて、私には週5日働いて、子育てして家事もして…という生活は到底できないと感じました。
ですが、「子供を育てることで、自分ではなく他者のことをより思いやれるようになった」という今日子の姿は、エゴから解放されているようでとても清々しいものでした。
彼女は「子供を持たないのはダメだ」など、自分とは違う生き方をしている人を否定するようなことは言わない人です。今日子の他者への視線が「そういうのもありかも」といつも優しいのは、自分の責任を全うしようとしており、かつそこに幸せを感じられているからでしょう。
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今来 今(フリーライター)
神戸出身。編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。
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