特別養子縁組

7回の体外受精を経て、特別養子縁組を決意した元タカラジェンヌの話

  • 更新日:2020/02/12

日本では、さまざまな理由で産みの親と生活することができない「社会的養護」の子どもたちが、4万5千人います。こうした子どもたちは、愛着の形成のためにも暖かい家庭で育つことが望ましいですが、実際には、約8割の子どもたちは、乳児院や児童養護施設などの施設養育を受けるに留まり、家庭養育は2割以下となっています。


こうした現状を知らない方は多いでしょう。元宝塚月組トップスター瀬奈じゅんさんも、こういった事実を知ったのは、不妊治療を始めてからだったと言います。


今回は、瀬奈じゅんさんと夫でダンサーの千田真司さんの共著『ちいさな大きなたからものー特別養子縁組からはじまる家族のカタチ』を参照し、あまり知られていない特別養子縁組の実態についてご紹介していきたいと思います。


不妊治療以外の選択肢に気がつくまで

瀬奈じゅんさんは宝塚退団後、38歳で結婚し、子どもを持つことを意識し始めます。初めは総合病院の産婦人科を訪ね、年齢的に「自然に任せるより、体外受精をした方がよい」と提案されたことから、体外受精をすることを決意します。


頻繁に通院し、注射を打ちながら舞台の稽古をするのは、時間の調整も困難で、薬の副作用で顔がむくんだままコンサートに出演することもあったとか。忙しいスケジュールをやりくりしながら不妊治療を頑張っていた瀬奈じゅんさんが特別養子縁組(※1)に目を向けるようになったのは、夫・千田真司さんからの提案がきっかけでした。


「特別養子縁組という方法もあるんじゃないかな」という夫の言葉を、最初は聞き入れることができなかったと言います。「あなたの子どもが欲しいから、私はがんばっているのに!」と瞬間的に思った瀬奈じゅんさんでしたが、夫の問いかけをきっかけに、「血のつながりがなくても家族になれるのではないか」と考えるようになったと言います。


特別養子縁組について学び、特別養子縁組を受け入れた家族と関わるなかで芽生えた思い

夫婦学び

特別養子縁組に対して、最初は積極的になれなかった瀬奈じゅんさんでしたが、終わりの見えない不妊治療に疲れ、新しい一歩を踏み出したいという気持ちから、思い切って養親希望者向けのセミナーに参加する決意をします。


そこで、「親が育てられないお子さんが日本に約4万5千人いること」「日本は他の先進国と違って、施設で育つ子どもの割合がとても多いこと」「愛着の形成のためにも、ちいさい子ほど、家庭のなかで特定の保護者からの愛情を受けて育つことが大切だということ」を知ると同時に、実際に特別養子縁組をしているご家族と出会い、普通の家族となんら変わりなく幸せそうな姿を見ることで、特別養子縁組に対して、前向きな気持ちが醸成されていったのです。


特別養子縁組について勉強しながらも、不妊治療は継続していましたが、心も体も経済的にもすり減っていく治療をこれ以上は続けられないと考え、「この治療が最後」と決意し7回目の体外受精に挑みましたが、妊娠は叶いませんでした。


ふたりで思い切り泣いた後、特別養子縁組を受け入れる決意をしたと言います。瀬奈じゅんさんご夫婦が望んでいたのは、「子育てをして、新しい家族の絆を結んでいくこと」だったのです。


実際の養子を受け入れるまでの道のり

面談

特別養子縁組を受け入れよう、と決意した瀬奈じゅんさんご夫婦は、「どこの特別養子縁組の民間あっせん団体を利用するか」を吟味し、運営の方針に共感できた和歌山にあるストークサポートという団体を選びます。


その後、大阪で開催された説明会に参加するために書類審査を受けることになります。(他の団体は説明会に参加してから書類審査や面談、となっているところが多いそうです)。書類審査のための調査票には、今どんな生活をしているか、なぜ育ての親になりたいのか、などを記入する必要があり、なぜ自分たちが特別養子縁組をしたいのか、しっかり向き合う時間にもなったそうです。


書類審査をパスし、説明会に参加した後、家庭調査官が「子どもを育てる環境が整っているか」の調査を行います。その調査にパスして初めて、「待機」(いつ子どもを託されても大丈夫なように、待っている期間のこと)となります。


瀬奈じゅんさんの場合、待機になってから、3〜4ヶ月で、「もうすぐ生まれる赤ちゃんがいます」という連絡があり、無事、受け入れることができたといいます。


さいごに。さまざまな家族の形が受け入れられる社会を目指して

家族

夫の千田真司さんは現在、ご自身の経験から、特別養子縁組の理解を深めるための活動も行なっています。

こんな幸せな日々がくるなんて、あのとき、僕たち夫婦は想像もできませんでした。ちいさな息子が、大きな幸せを運んできてくれたのです。この喜びが、息子に伝わるような毎日を送っていきたいです。(略)特別養子縁組は、子どものための制度であると同時に、親も子どもも、お互いが幸せになれる制度なのだと感じています。(P.165)

日本はまだまだ血縁主義を重視する人も少なくありません。瀬奈じゅんさん・千田真司さんご夫婦の親や兄弟のなかにも、最初は特別養子縁組に対して疑問を感じていた人もいたそうです。ですが、実際に受け入れてからは、赤ちゃんのかわいさにメロメロだとか。


多様な家族の形について知りたい方や、特別養子縁組受け入れについて興味がある方は、『ちいさな大きなたからもの』をチェックしてみることをおすすめします。本書を読めば、受け入れまでの葛藤や実際に受け入れを決めた後の流れを詳細に知ることができますよ。



※1 特別養子縁組とは?

子どもの福祉のために、子どもとその実親側との法律上の親族関係を終了させ、実親関係に準じる安定した養親子関係を家庭裁判所が成立させる縁組制度のこと。特別養子縁組が成立すれば、戸籍も実子同様に記載される。子どもに永続的な家庭を提供できることが大きなメリットと考えられており、2019年の法改正により、子どもの対象年齢は原則6歳未満から、原則15歳未満まで引き上げられた。


今回ご紹介した本

『ちいさな大きなたからものー特別養子縁組からはじまる家族のカタチ』

著者:瀬奈じゅん・千田真司

出版社:方丈社



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  • 今来 今 (フリーライター)

    神戸出身。編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。

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