喫煙する女性

スモーク・ハラスメントってなに?具体例・裁判例について弁護士に聞いてみた

  • 更新日:2020/01/28

最近、分煙や禁煙がかなり進んだと思いませんか?スモーカーの方は肩身が狭い思いをされているかと思いますが、非喫煙者の方にとっては喜ばしいことだと思います。大企業でも、原則として建物内禁煙が進んでおり、当初は喫煙スペースを設けて分煙していた場合でも、全面禁煙となったことも多いと思います。

これは、2018年7月に健康増進法の一部が改正された影響が大きいのだと思います(2020年4月1日全面施行) 。企業としては、これまではマナーとして受動喫煙防止に取り組めば良かったのですが、今後は悪質なケースでは罰則(過料) となる場合もありますので、注意が必要ですね。

このような環境の変化の中で、2016年頃から、スモーク・ハラスメントという問題が大きく取りざたされるようになっています。

では、スモーク・ハラスメント(スモハラ) とは、具体的にどのようなことを指し、どのような問題があるのでしょうか?

今回は、「スモハラ」 の意味や、「スモハラ」 に当たる可能性のある具体例、裁判事例などについて、解説していこうと思います。


「スモーク・ハラスメント」(スモハラ)っていったい何?

スモーク・ハラスメント

「スモーク・ハラスメント」(スモハラ)とは、一般的に、主に職場などにおいて、自己の意思に反して喫煙者が非喫煙者に対して喫煙することを強要したり、非喫煙者がタバコの煙にさらされたりするなど、「喫煙に関する嫌がらせ行為」 (受動喫煙) をいいます。

この受動喫煙については、健康増進法25条、労働安全衛生法68条の2において、施設管理者に受動喫煙防止の努力義務が課されており、受動喫煙防止対策の徹底が厚生労働省より求められています。


①喫煙の強要

例えば、職場において、立場の強い上司が立場の弱い部下に対し喫煙を強要したり、部下の意思を尊重することなく喫煙するような場合です。

このような場合、たとえ上司に悪意や悪気がなかったとしても、部下に不快な思いをさせることになりますので、スモハラに当たる可能性があります。


②飲み会の席での喫煙

会社の飲み会の席では、お店が全面喫煙可だったり分煙措置をとっていなかったりする場合、非喫煙者は喫煙者と同じスペースに身を置くことになります。そうすると、非喫煙者の逃げ場がなくなってしまいます。このような場合に喫煙することも、スモハラに当たる可能性があります。

ただ、喫煙者が喫煙可の席でタバコを吸う自由もありますので、ただちにスモハラに当たるかどうかは微妙な問題かと思います。


③歩きタバコ・路上での喫煙

最近は減ってきましたが、まだ歩きタバコをしている人や、路上で立ち止まって喫煙している人を見かけますよね。非喫煙者にとっては、歩きタバコや路上での喫煙をしている人の周囲にいることは、自分の意思に関係なくタバコの煙にさらされるため、スモハラに当たるようにも思われます。

しかし、条例等で罰則や喫煙禁止区域が定められていない限り、マナー違反の問題はあるとしても、このような喫煙行為は喫煙者の自由でもあります。

そのため、歩きタバコも路上での喫煙も、ただちにスモハラに当たるかどうかは難しい問題です。


スモハラって法律違反なの?

スモハラは法律違反?

スモハラは、非喫煙者にとっては非常に迷惑極まりない行為ではありますが、何らかの法律に直ちに違反するというわけではありません。

ただ、先のお話したとおり、健康増進法25条、労働安全衛生法68条の2において、施設管理者に受動喫煙防止の努力義務が課されており、健康増進法に改正により、悪質なケースは罰則の対象となりましたので、喫煙者には、非喫煙者に対して配慮する義務があると考えられます。


スモハラの裁判事例

スモハラの裁判事例

スモハラは、直ちに法律に違反するわけではありませんが、喫煙が原因で裁判となった事例がいくつかあります。

以下では、比較的最近の事例についてご説明します。


①東京地裁平成24年8月23日判決

この事件は、原告が保険会社に入社後に(試用期間中) 、社長の喫煙により動悸や吐き気、めまい等が生じたことから、社長に事務室内ではなくベランダでの喫煙を求めたところ、社長はこの申出を断り、原告に退職勧奨を行って休職を命じ、就労を拒絶して本採用を不可としたというものです。

そのため、原告は、保険会社に対し、雇用契約上の地位の確認と、就労期間分の給料の支払を求める裁判を起こしました。

裁判所は、結論として社長の行為が権利濫用に当たるとして、保険会社に対し、原告に約375万円を支払えとの判決を下しました。


②自動車教習所事件

平成27年11月、自動車教習所に勤務していた男性が、職場内での喫煙所からの受動喫煙により持病が悪化したとして、自動車教習所の運営会社に対し、1000万円の損害賠償を求める裁判を起こしました。

男性は、喫煙所は執務室内に煙が漏れる原因となる通風口に不備があり、国が定めるガイドラインに違反するなどと主張しましたが、裁判所は、受動喫煙と持病の再発との因果関係を認めるだけの証拠がないとして、第1審では原告の主張を退ける判決を下しました。もっとも、その後の控訴審において、運営会社が男性に対し100万円を支払うとの和解が成立しました。


③日本青年会議所事件

この事件は、日本青年会議所に正社員として勤務していた女性が、受動喫煙により気管支喘息になるなど体調が悪化したことから、受動喫煙対策を求めていましたが、会議所が有効な対策を講じることなく、女性が平成28年体調不良で休職し、平成29年4月に解雇されたというものです。

そのため、原告の女性は、解雇の無効と未払給料の支払などを求める労働審判を申し立てました。

この事件では、職場の共用部分や執務室で、十分な分煙措置がなされないまま役員らが日常的に喫煙していたとのことで、会議所の行った分煙というのも、単にパーテーションを立てて隔てただけで、パーテーションの上は開いているというものだったようです。

結果として、会議所は解雇を撤回し、女性に解決金として440万円を支払うとの内容の和解が成立しました。

それぞれの配慮

スモハラは、喫煙者に喫煙の事由がある一方で、非喫煙者にもタバコの煙にさらされない自由があるという、双方の自由が対立する問題です。もっとも、最近の法改正などを見ますと、会社などの施設管理者には、非喫煙者に配慮すべき義務が認められるようになってきていますし、喫煙者としても、非喫煙者に配慮して喫煙することが、以前にも増して求められているといえるでしょう。

これからさらに、禁煙措置や分煙措置が広がっていくかと思いますが、喫煙者は、タバコをたしなむ際には、非喫煙者に配慮してマナーを守ることで、「それってスモハラ!」 と言われないように注意しましょうね。さもないと、裁判沙汰になってもおかしくありませんよ。



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弁護士に聞いてみた
  • 田中雅大 (弁護士/第二東京弁護士会所属)

    1975年生まれ。埼玉県出身。証券会社に勤務した後、2010年に弁護士登録。中小企業の法務や不動産案件を中心に扱いつつ離婚や不倫などに関する数々の男女トラブルを解決。趣味はサーフィン、草野球。

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