NOを訴える女性

セクハラなどの性暴力被害をなくすために、女性ができることは?

  • 更新日:2019/09/20

先日、居酒屋で行われた飲み会に出席していたとき、強制性交容疑で起訴された芸能人のニュースがテレビで流れました。


「いい俳優だったのに、残念だね」という雑談がなされたあと、ひとりの女性がこう言いました。「ハニートラップだっていう噂ありますよね」と。「だとしても、してしまったんだから犯罪は犯罪でしょ」と別の女性が発言し、別の話題に移りました。


私は、性被害にあった女性に対して「ハニートラップだったかもしれない」と無邪気に言い放つ女性がいることに、脱力感を覚えました。その女性が、とてもいい子だったから、余計に残念な気持ちになりました。


なぜなら、その女性は無意識に、「女性が性暴力・性犯罪被害を訴えにくい状況作りに加担してしまっている」と感じたからです。


性暴力の被害にあっても、訴えにくい理由

隠れる女性

性暴力の被害にあったとき、被害を届け出る割合は2割程度だと言われています。統計データを見つけることができなかったので、正確な数字は不明なのですが、性被害にあっても、届け出ない女性が多いことは想像に難くないでしょう。


もし訴え出たとしても、職場や警察、法廷などで被害の状況を詳細に語る必要があることに加えて、「隙があったんじゃないか」「そんな服を着ていたら当然」だと責められる懸念や、果ては「ハニトラだったんじゃない?」と疑われる可能性がある状況では、声を上げることを躊躇する女性が多いことは、ある意味自然です。


ジャーナリストの伊藤詩織さんが、顔出し、実名で被害を訴えると決めたときも、周囲から止められることが多かったというのは、二次被害の大きさを考えてのことだったのでしょう。実際、被害者であるはずの伊藤詩織さんは、被害を訴えた後、様々な嫌がらせにあい、遂には日本から出て行かざるをえない状況になってしまったといいます。(伊藤詩織さんの事件の詳細については、著書『Black Box』をご参考ください)


こういった状況はおとなり韓国でも同様です。女性へのヘイトクライムである江南通り魔事件(注1)をきっかけに執筆された『私たちにはことばが必要だ』(イ・ミンギョン著)では、「職場内でおこる性暴力の割合は非常に高いのに、被害者は警察に届け出ることができません。届け出たことが知られると不利益をこうむってしまう。それに二次被害も深刻だ」と指摘しています。また、周囲の声が「性被害を訴えることを妨害するケースが多い」点についても言及しています。


「気持ちはわかるけど、結局損するのはキミだから無視して」

「まあ、がまんしなよ」

「水に流そう」


どんなつもりで言ったかわかりませんが、これらはすべて、被害者の声をさえぎることばです。


「ことを大きくしないほうがいいよ」

「信じられない。そんなことがほんとにあった?」

「知られたらなにもいいことないのに、どうして自分からその話を切り出そうとするんだよ」

「そんなことしたってなにも変わらないよ」

「そこまでしないと気がすまないわけ?」


また、被害者の声を封じ込める脅迫になる例もあります。


「それを言ったらどうなるかわかるよな」

「おまえの話なんて誰も聞きやしないよ」


あなたのためによかれと思って言ってくるケースもあれば、悪意をもって脅かしているケースもありますが、その内容はどれも似たり寄ったりです。(略)彼らは「被害を訴えたところでなにも得しない」というメッセージで、被害者を黙らせるのです。(第1章―4)


日本だけではなく、世界的にも、「辛い事件の詳細を語らなければならないという心理的負荷」「セカンドレイプなどの二次被害の恐れ」「周囲からの、訴えるべきではないというメッセージ」などの要因によって、性暴力被害にあっても声をあげにくい、という現状が依然として存在しているのです。


セクハラなどの性暴力被害をなくすために一人ひとりができること

笑顔の女性

こういった現状に対して、私たちにできることはあるでしょうか?


個人の力で、性暴力の加害者全員を止めることが残念ながらできそうにありません。ですが、「性暴力被害にあったとき、訴えやすい土壌を作っていく」ことはできます。「性暴力・性犯罪を犯したら訴えられる可能性が高い」と加害者に認識させることができれば、性暴力は減らせるはずです。


ではどうすればいいのか。まずひとつは、当然ですが、セカンドレイプに加担しないことです。性犯罪が行われたという情報が耳に入ったとき、根拠なく「女性の方も油断していたんでしょ」「ハニートラップだったんじゃない?」「お金目当てだった可能性もある」と推測したり、ネットに書き込んだりすることはやめましょう。


次に、性暴力被害にあったと相談されたときに、「声を上げるべきではない」というメッセージを送らないことです。もちろん「絶対に訴えるべき」と強制するのはNGですが、本人が迷っているときに、「被害を訴えてはだめ」というメッセージを送ることは、「性暴力被害を受けても、訴えてはいけないという土壌づくり」に加担してしまうことになります。


また、自分自身がちょっとした性暴力にも声を挙げていく、という姿勢も大切です。セクハラされた、など不快感を感じたときに、「そういう社風だから」「これくらい我慢していれば丸く収まる」とあきらめるのではなく、断固たる態度をとるのです。そうすることで、より大きな被害を遠ざけることができると同時に、加害者に同様の加害を犯させることの抑止にもなります。


性暴力被害をなくすためには、一人ひとりが、「性暴力・性犯罪被害を訴えやすい社会」を作っていく必要があるでしょう。


※注1 江南通り魔事件

2016年5月、江南駅10番出口付近のビルのトイレで女性が殺害された事件。加害者の30代男性は、警察の取り調べに対し、「女たちが自分を無視してきた」から殺害したと供述。事件後、ひとりの女性がフェイスブック上に「事件の根本的原因は、韓国社会に蔓延する女性嫌悪にあると思う」と語ったことで、江南通り魔事件が、女性嫌悪によるヘイトクライムではないか、という声が高まった。



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・「母親なんだから」「女は加齢で価値が下がる」呪いの言葉から自由に!
・「主人」「女社長」…は、性差別を助長する言葉?
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  • 今来 今 (フリーライター)

    神戸出身。編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。

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