性差別を助長する言葉

「主人」「女社長」…は、性差別を助長する言葉?

  • 更新日:2019/09/06

私たちは、さまざまな言葉で、特定の人や集団、関係性を表現していますが、日常的に使わっている言葉が、意図せずに、偏見や差別を作り出したり助長したりしているケースもあります。

今回は、『ジェンダーで学ぶ社会学』(世界思想社)を参考に、言葉と性差別の関係について考えていきたいと思います。


性差別を助長する5つの言葉とは?

関東学院大学経済学部教授で言語学を専門にしている中村桃子先生は、本書のなかで、「性差別を助長する可能性のある言葉」には、主に5つの種類がある、と述べています。(参考P.59-65)


性差別を助長する言葉1 女性だけに既婚か未婚かの情報開示を求める言葉・夫婦間の力関係を規定する言葉

性差別を助長する言葉として、まずは「女性だけに既婚か未婚かの情報開示を求める言葉」が挙げられます。


たとえば、英語では、男性はMr.という敬称だけなのに、女性は結婚しているか否かで、Mrs.かMissに呼び分けられていた歴史がありました。しかし、のちに「結婚しているか否かという私的な情報を女性だけが公開させられている」という指摘があったことから、女性でも未既婚関わらず使えるMsという新しい敬称が提案されることになりました。ただし、日本では「ミスコン」というかたちでMissという敬称が依然として残っています。


また、「未亡人」「主人」のような、夫婦間の力関係を規定する言葉も、同様に使われ続けています。


「未亡人」とは、妻を、「夫が死んでも、まだ、死んでいない人」と表現することばだ。また、夫を、自分が仕える人を意味する「主人」と呼ぶことは、夫婦の支配関係をつくりだすと問題視された。(P.60)「未亡人」とは、妻を、「夫が死んでも、まだ、死んでいない人」と表現することばだ。また、夫を、自分が仕える人を意味する「主人」と呼ぶことは、夫婦の支配関係をつくりだすと問題視された。(P.60)


性差別を助長する言葉2 「女であること」を必要以上に強調した言葉

性差別を助長する言葉

次に挙げられるのは、女であることを必要以上に強調した言葉です。


「女社長、女性社員、女子選手、女流作家」などだ。このような表現は、これらの職業の基準が男性であることを前提にしているだけでなく、「女である」ことを必要以上に強調している。その結果、「社長」が失敗すれば本人のせいだといわれるが、「女社長」の場合は、失敗も成功も「女だから」とみなされる可能性が高くなる。(P.60)


性差別を助長する言葉3 人称詞の使い方

また、人称詞の使い方も、性差別を助長する一因となっている、と中村先生は主張しています。


男性の自称詞である「ぼく」は虫から恐竜までほとんどの生き物に使われ、生き物の基準は男であることを示している。とくに「ぼくら」は女性も含む人間全体の意味で使われる。筆者の大好きな『手のひらを太陽に』という歌も、「ぼくらは みんな 生きている」で始まる。(P.60)


少しわかりにくいかもしれませんが、「男性の自称詞を、人間全体を表す言葉として使う」ことで、男性が生き物の基準であり、女性は主流ではない、ということを印象づける言葉である、と筆者は主張しているのだと思います。


これと同様のことは、外国の友人からも聞いたことがあります。友人いわく、「Guys(ガイズ)という言葉は、複数の男性を表す言葉だけれど、男女が混ざっているグループにも使える。でもGirls(ガールズ)という言葉は、複数の女性にしか使えない。複数人で、ひとりでも男性が混じっていたらGuys(ガイズ)になる」そうで、「男性の人称詞をスダンダードなものとして使う」という傾向は、日本だけに見られる現象ではないようです。


性差別を助長する言葉4 夫婦は同性でなければならないとする法律

性差別を助長する言葉

筆者は、「夫婦は同性でなければならないとする法律も性差別を助長する」と述べています。


法的には夫婦のどちらが改姓してもよいことになっているが、96.3%(2005年)は、妻が夫の姓に変更している。女性の改姓には「家」意識や「嫁」役割を保存しているだけでなく、研究開発や著作物などの女性の業績の連続性が、結婚前後で失われてしまうという問題も引き起こしている。(P.60-61)


夫婦別姓が選べないことで女性が被る不利益については、以前にコラムを書いていますので、よろしければそちらもご参照ください↓

「結婚したら同じ性にしないとダメ」は女性差別?


性差別を助長する言葉5 差別語を含まない差別表現

なかには、直接的な差別語を含んでいないために、いっけん差別だとはわかりにくい差別表現もあります。


会社にかかってきた電話に女性が出ると、「誰か男の人いない?」と言うことは、「女のあなたでは役に立たない」ということだ。女性社員を「女の子」と呼ぶことも女性を蔑視しているあらわれだろう。(P.61)


「たかが言葉」ではない。言葉は行為。言葉という行為が社会を変える

「たかが言葉」ではない

今回は、性差別を助長する恐れのある言葉をご紹介しましたが、「言葉だけ変えても、構造的な差別は変わらない。女性の賃金が男性より低いのも変わらないし…」と思われるかもしれません。

ですが、たとえば、「女のくせに」という言葉が日常的に使われていたら、それこそ、「女性が男性より低い賃金に甘んじることは当たり前」だと感じてしまうでしょう。


著者は、「言語が差別的な考え方を普及させることで、現実の差別を正当化してしまう」と述べています。言語はたかが言葉ではなく、現実を変える行為でもあるのです。

性差別のない社会を望むなら、言葉の使い方には十分注意すべきでしょう。



▼バックナンバーはこちら

・「軽い男じゃないのよ」。男女の力関係が逆転したらどうなる?
・「あの人って女かな?男かな?どっち?」と思ったことがあるすべての人へ
・「結婚したら同じ姓にしないとダメ」は女性差別?
・「ピンク大好き!」な女の子を育てるときに注意したいこと

▼著者:今来さんの他連載はこちら

・妊活・お金・介護・美容…40歳までに知っておきたいことリスト
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  • 今来 今 (フリーライター)

    神戸出身。編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。

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