アカデミック・ハラスメント

アカデミック・ハラスメントってなに?〜その意味と言動について

  • 更新日:2019/08/28

最近は、「パワハラ」「セクハラ」のように、「○○ハラ」という言葉をよく耳にするかと思いますが、「アカハラ」という言葉を聞いたことがありませんか?

「アカハラ」とは、「アカデミック・ハラスメント」の略語ですが、最近では、この「アカハラ」という言葉が広まってきていて、特に大学内でコンプライアンスが強く意識されるようになっています。

では、そもそも「アカデミック・ハラスメント」(アカハラ)って具体的にどのような言動を指し、どのような問題があるのでしょうか?

今回は、「アカデミック・ハラスメント」(アカハラ)の意味や、「アカハラ」に当たる言動の具体例、その解決方法などについて、解説していこうと思います。


「アカデミック・ハラスメント」(アカハラ)っていったい何?

アカハラって何?

「アカデミック・ハラスメント」(アカハラ)については、実は、公的機関でも法律でも裁判例でも、これといった定義が決まっているわけではありません。

しかし、例えば東京大学アカデミック・ハラスメント防止宣言では、「大学の構成員が、教育・研究上の権力を濫用し、他の構成員に対して不適切で不当な言動を行うことにより、その者に、修学・教育・研究ないし職務遂行上の不利益を与え、あるいはその修学・教育・研究ないし職務遂行に差し支えるような精神的・身体的損害を与えることを内容とする人格権侵害」を指すとされています。

また、早稲田大学では、「教員等の権威的または優越的地位にある者が、意識的であるか無意識的であるかを問わず、その優位な立場や権限を利用し、または逸脱して、その指導等を受ける者の研究意欲および研究環境を著しく阻害する結果となる、教育上不適切な言動、指導または待遇」を指すとされています。

つまり「アカハラ」とは、学校や大学等の教育機関内で権力を持っている人間が、その権力を利用して、教職員等に対してその研究活動等を妨害したり、学生等に対して単位認定や論文等で不利益を与えたりするような行為ということになります。


どういう言動が「アカハラ」に当たるの?

アカハラは、教育機関内で権力を持っている人間による権力濫用ですから、次のような具体例が考えられます。

・言うことを聞かないと単位をやらない、留年させる、就職できなくするといって学生を脅す

・単位をやらない、留年させるなどして卒業や進学等を妨害する

・就職等に必要な推薦状を書かない

・研究中の些細なミスを過度に叱責する

・長期間にわたって朝から深夜まで実験をさせる

・学生の希望に反する研究テーマを押し付ける

・学生が論文を書くにあたって指導しないで放置する

・学生が書いた論文を発表させない

・学生の業績を自分の研究結果として発表したり、学生の論文を盗用したりする

・正当な理由もなく、実験器具を使用禁止にするなどして研究を妨害する

・研究成果や業績を不当に低く評価する

・多くの学生の前で特定の学生の人格を否定するような言動をする


アカハラに関する裁判例

最近の裁判例の中には、以下のような事例でアカハラを認めたものがあります。


国立B大学の准教授が、学生に対して、「馬鹿」、「今年は単位をあげないので、大学を辞めるかもう1年やるか親と相談しなさい」、「論文を書いても見ない」などと発言した、ゼミ生全員が参加する学会準備に一人だけ参加させなかった、インターンシップ参加を希望する学生に対して中止を説得するなどの行為をしたことについて、裁判所は、大学による懲戒処分の対象になると判断しました(東京高裁平成25年11月13日判決)。


某私立大学の指導担当教授が、大学院生に対して、大学院生が労働組合活動を行っていたことを何度も叱責して、大学院生への指導を辞めると脅して労働組合から脱退させたこと、大学院生が修士論文の研究のために行っていた遠隔地滞在型フィールドワークを一方的に中止させたことなどについて、裁判所は、指導担当教授の違法なアカハラがあったと認定して、指導担当教授と私立大学の損害賠償責任を認める判断をしました(大阪地裁平成30年4月25日判決)。


アカハラの解決方法

アカハラの解決方法

では、アカハラ問題については、どのように解決すれば良いのでしょうか?以下では、相談窓口や解決に向けた注意点をお話します。


大学の組織や相談センターに相談する

最近では、コンプライアンスの意識が浸透してきていて、多くの大学でハラスメントを防止するための組織や相談センターが設けられています。

アカハラは教育機関内の問題ですから、まずは、そのような組織や相談センターアカハラの事実を訴えて解決を図るという方法があります。

学校側としては、アカハラを放置すると、結局のところ学校の信用が失われることに繋がりますので、学校側も真摯に対応することが期待できます。

ただ、そのような組織もあくまで学校内部のものですから、十分な対処をしてくれないこともあり得ます。


NPOや公益通報窓口に相談する

「NPOアカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク」といった相談機関に相談したり、文部科学省の「公益通報窓口」に通報したりして、外部の組織を通じて学校側に訴えて、解決を図るという方法もあります。


弁護士に相談して法的手段に訴える

先に紹介した裁判例のように、弁護士に相談して、法的手段により戦うという方法もあります。その場合には、アカハラの事実を立証するに足りる十分な証拠が必要となりますので、会話を録音したり、日々のアカハラの事実を手帳などに詳細にメモしたり、同じゼミ生など第三者の協力を得られるようにしたりする必要があります。

ただ、弁護士に依頼する以上、相応の弁護士費用を支払わなければなりません。


アカハラは、ゼミ室や研究室など、外部からはなかなか見えない「密室」で行われることが多く、証拠が残りにくいという問題があります。また、学校側の組織が旧態依然のままのような場合には、被害者がアカハラを訴えても組織の権力の圧力がかかったり、隠蔽されてしまったりするケースもあり、明るみに出ないという側面もあります。

しかし、アカハラは、教員と学生という立場や年齢の違いを悪用したり、権力を濫用したりするもので、決して許されるものではありません。最近では、先に挙げたように、アカハラ防止のための相談窓口などいろいろな救済手段も用意されるようになっています。

アカハラ被害にあったら、一人で思い悩まずに、また、泣き寝入りして被害が拡大しないように、まずはこのような窓口や弁護士に相談することをお勧めします。



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弁護士に聞いてみた
  • 田中雅大 (弁護士/第二東京弁護士会所属)

    1975年生まれ。埼玉県出身。証券会社に勤務した後、2010年に弁護士登録。中小企業の法務や不動産案件を中心に扱いつつ離婚や不倫などに関する数々の男女トラブルを解決。趣味はサーフィン、草野球。

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