ジェンダー

「軽い男じゃないのよ」。男女の力関係が逆転したらどうなる?

  • 更新日:2019/08/27

まだまだ暑い日が続いていますね。外に出たくなさすぎて、家でNetflixばかり観ています。


今話題の『全裸監督』、面白すぎて、1日で全話観てしまいました。早くシーズン2が観たい! Netflixのオリジナルドラマは面白いものが多いですよね。


私が特に好きなのは『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』です。『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』は、恵まれた環境で育ってきた主人公パイパー・チャップマンが、過去に恋人に誘われて麻薬の密輸に関わっていたことから刑務所に入り、これまで関わったことのないタイプの女囚たちと関わるなかで、自分と向き合うことを余儀なくされ…というストーリーです。


皮肉とウィットに富んだセリフだらけで、何度でも観たくなるドラマです。印象に残っているセリフはたくさんあるのですが、そのなかでも女囚たちを管理する立場にあった刑務所所長代理(シーズン1・2時点)のキャリアウーマン、フィゲロアが、かつて男性だったトランスジェンダーの女性ソフィアについて言い放ったセリフが印象的でした。


「男性に生まれたのにわざわざ女性になるなんて、当たった宝くじを捨てるようなもんじゃない?」というような意味のことをフィゲロアは言い放ちます。男社会である刑務所でのし上がってきた女性だからこそ、男性の利権について人一倍敏感に感じていたのでしょう。


アメリカは日本よりも男女平等という面からみたら進んでいますが、まだまだ完全に男女平等だとは言えないことがこの場面からもわかります。世界的に見ても、先進国と言われる国々でも未だに様々な面で男女の力関係には差があります。

こういった現状にフラストレーションを感じる人も多いことから、近年、男女の力関係の構造を皮肉に描いたコンテンツが増えてきているように感じます。


今回は、そのなかから、「男女の力関係が反転したディストピア」を描いた、良質なコンテンツを2つご紹介していきます。


小説『パワー』ナオミ・オルダーマン著

ひとつめは、アメリカの作家ナオミ・オルダーマンの小説『パワー』です。

本書で舞台となっている時代は、5千年以上先の未来。ある日、電流を放つ力を持つ少女がひとり現れ、次第に力を持つ女性が増えていったことをきっかけに、女性が力を持つ世界になっていきます。男性は女性よりも知力、体力、あらゆる面で劣った存在だと考えられており、女性が世界を支配しています。この世界では、女性はその不思議な力によって男性を勃起させることもできるため、男性はレイプされる恐怖に怯えたりもします。


本書では、「力のある側の性を生きている人の、力のない側に対する無自覚な見下しと軽視」が、容赦なく描写されています。


そのなかのひとつとして、女性の作家が、男流作家(小説家は女性ばかりなので、男性作家はこう呼ばれている)が「男性が支配する世界」の小説を書いた、と聞いて、言い放つ言葉が挙げられます。


「おっしゃっていた『男性の支配する世界』の物語はきっと面白いだろうと期待しています。きっと今の世界よりずっと穏やかで、思いやりがあって、こんなことを書くのはどうかとおもいますが、ずっとセクシーな世界だろうな」。


この世界では、「男性や穏やかで思いやりがあり、セクシー」だと思われているのです。「女らしさ・男らしさ」は役割と権力構造によって変化していく、という、「性別にまつわる『らしさ』」の本質を皮肉に表現している一節、と言えるでしょう。


フランス映画『軽い男じゃないのよ』

フランス映画

ふたつ目にご紹介するのはフランスのコメディ映画『軽い男じゃないのよ』(Netflixで閲覧可)です。


本作は、プレイボーイの男性が、頭を打ったことをきっかけに、男女の力関係が反転したパラレルワールドに飛ばされてしまうことから始まります。


男性だから、と職場で軽く扱われたり、セクハラを受けたり、美しさを要求されたりする状況に、主人公は戸惑います。セックスをする際に、女性から、「胸毛がある男とはできない」と言われたことから、痛さに耐えて脱毛したり、ネイルをしたり、美容に奔走するようになります。親友の男性は、妻が妊娠したことで、当然のように育休を申請。職場に謝り、家事・育児に奔走するそばで、妻は寝転んで偉そうにビールを飲んでいます。その妻はさらに浮気もしているようですが、彼は、「女の浮気だからしかたない」と耐えるばかりです。


本作で描かれるのは異様な世界ですが、その異様さが、現実の異様さを教えてくれるようにもみえます。街中に頻繁に見かける半裸の男性のポスター。不思議な光景ですが、日本のコンビニは半裸の女性だらけです。「普通だと思っていたこと、受け入れるしかないと思っていたこと」が、実は、力関係によってもたらされた差別であることを、ひしひしと気がつかせてくれる一作です。


「男女の力関係の不均衡」「男らしさ女らしさ」について深く考えさせられる作品

男らしさ女らしさ

今回ご紹介した2点の作品において、男女の力関係が逆転した世界は、「穏やかで争いがなくてセクシーな世界」としては描かれていません。力関係が反転した結果、女性が権力を振りかざし、男性を怯えさせ従属させる世界になる、というのが両作品の落とし所になっています。


個人的に、これらの作品を見たあと、「美しくあろうとして、脱毛したりメイクやネイルをしたりすること」がすごく不自由な事のようにも感じられたのが、不思議な体験でした。ノーメイクで堂々と発言する女性たちを見ていると、美容に奔走していたのは、「本当に自分がしたくてしていたのか」という気分にさせられたんです。


どちらの作品も、男女の役割や力関係について深く考えるきっかけになる名作です。テーマは深いですが、単純にエンタメ作品としてハイクオリティなので、気楽に楽しめる作品でもあります。


気になった方はぜひチェックしてみてください。



▼バックナンバーはこちら

・「あの人って女かな?男かな?どっち?」と思ったことがあるすべての人へ
・「結婚したら同じ姓にしないとダメ」は女性差別?
・「ピンク大好き!」な女の子を育てるときに注意したいこと
・「女らしさ」から自由に!「女らしさ」は女から自信を奪う秀逸なシステム
・結局、「女と男」どっちが得? を考える

▼著者:今来さんの他連載はこちら

・妊活・お金・介護・美容…40歳までに知っておきたいことリスト
・【連載】なんで子供が欲しいの?
  • 今来 今 (フリーライター)

    神戸出身。編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。

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